なぜなら、これらの症状は、どう見ても別の障害の「結果」でしかなく、真の「原因」は別にあるからです。
例えば、風邪をひいたときのことを考えてみます。
鼻水が出て、のどが枯れて声が出なくなります。くしゃみも出るでしょう。これらは、風邪の典型的症状です。
でも、これらの症状は、粘膜が炎症を起こしたことが原因となっており、それぞれの個別の症状は、その結果として、たまたま外から見える形で出てきたものに過ぎません。
さらにさかのぼると、風邪の真の原因はウィルスであり、ウィルスが外から取り込まれ、粘膜に付着して増殖したために炎症が起き、それが鼻水やくしゃみという形で表面化したものだと言うことができます。
この段階まで説明できて、初めて、本当の意味で「風邪」という病気が説明できたと言えるのであって、ただ症状を並べているだけの段階では、例えどんなにたくさん症状を集めたとしても、その病気が説明できているとは言えず、効果的な治療法も開発できるはずがありません。
鼻水が出るからといって鼻をかみ、のどが痛いからといって痛み止めを飲み、くしゃみがでるからといって口をふさいでも、風邪の治療にはならないのです。
これをイメージ化すると、こんな感じになります。
ウィルス(根本原因)→粘膜の炎症(一次的結果)→鼻水など(二次的結果)
自閉症も同じです。
自閉症の「症状」を集めるだけでは、それらの症状が「なぜ」起こっているのか、どうすれば治療できるのかは分からず、結局その病気(障害)を説明していることにはなりません。
ところが、自閉症については、国際的な診断基準ですら、いくつか核となる症状を並べて「これらの症状があったら自閉症」という定義をするに留まっています。
これはなぜでしょうか。
答えは簡単です。自閉症については、まだ原因も、発症の機制も、よく分かっていないからです。
※ただし、自閉症の原因は親のしつけやテレビの見すぎではなく、脳神経系に何らかの損傷があることによって生じるものだということは確実です。自閉症の原因が親の愛情だとかテレビだとかゲームだとか書いてある本や資料はすべて間違いと断言できますから、こういったことを主張している人の書くものはすべて無視すべきでしょう。
自閉症が、社会性とか遊びとかコミュニケーションといった人間の行なう最も高度な営みに関する障害であり、発達の過程でゆるやかに発現してくる障害であることから、そもそも解明が難しい障害であるということももちろんあるでしょう。
しかし、もっと単純で、もっと本質的な理由もあります。
(次回に続きます。)