この問いは、突き詰めて考えていくと非常に根深い問題を抱えていて、それが自閉症児の子育ての難しさ、療育の難しさに直結していると感じています。
このブログではまだ「自閉症って何?」といった話題を書いたことがなかったので、そのあたりも含めて、自閉症とは何か、そしてそれを療育へどうつなげていけばいいのかについて考えてみたいと思います。
自閉症についての全体を見渡す本としては、これが定番だと言われています。
自閉症スペクトル―親と専門家のためのガイドブック
著:ローナ・ウィング
東京書籍
著者は、「アスペルガー症候群」という概念を初めて使い、定着させた心理学者であり、自身も自閉症児の母親だということです。本書は、自閉症を、正常からアスペルガー症候群、重度の自閉症までの連続体(スペクトル)としてとらえ、どのような障害があり、どのように支援・療育を進めていけばいいのかを提言する入門書です。
上記の本は非常に広い範囲をカバーしていて、内容も手堅く、専門書でもないので誰にでもすすめられるものですが、かなりボリュームがあるのと、訳書だということもあって少し文章が散文的で読みにくいきらいがあります。
もう少し違う本を、という方には、以前にもご紹介しましたが、こちらもおすすめです。
自閉症児の保育・子育て入門
著:中根 晃
大月書店 子育てと健康シリーズ
(本ブログの過去の参考記事はこちら)
自閉症とはどんな障害であるかの解説に加え、自閉症の早期発見のための指標や、乳幼児期の対応方法など、どちらかというと幼いお子さんをお持ちの方向けの入門書。厚さも薄く、とても読みやすい本ですが、中身は充実しています。
(よりアカデミックに「自閉症とはどんな障害か」を掘り下げる本としては、こちら
自閉症は、症候群として定義されます。つまり、「こういった症状があれば自閉症だ」という決め方になっているわけです。
具体的には、3歳までに異常が発現し、次のような3つの障害がすべて存在するケースを、(狭義の)自閉症と呼ぶことになっています。
・社会性の質的障害
人に興味を示さない、人の反応に対する理解や環境に合わせた行動調整の欠如。
・コミュニケーションの質的障害
ことばの獲得の程度を問わず、その社会的使用、他人との同調性・相互性に乏しい。
・興味・活動の局限性
柔軟性のない型どおりの行動に固執する。物事の本質的でない要素にこだわる。
ただし、上記のような明確な症状が定着してくるのは多少年齢が上がってからで、乳児期の自閉症の「兆候」としては、次のような症状が典型的だと言われています。
・ことばが遅れる、一度出たことばが消える
・名前を呼んでも反応しない
・指差しをしない
・目が合わない、親に関心を示さない
・クレーン要求(親の手を欲しいものに運んで要求する)
・特定の音や感覚を異常に怖がる
・著しい偏食、睡眠障害
・ごっこ遊びをしない
・固執的な遊び(1つのものを見つめる、並べる)に熱中する
・粗大運動の異常(つま先立ち、くるくる回る、ゴリラのような姿勢で歩く等)
・多動
※自閉症の早期判断(1歳半)として有力だと考えられる「CHAT」検査法については、こちらの記事をご覧ください。
ところが、こういった症状をいくら並べても、結局のところ、「自閉症ってどんな障害なの?」という問いに対する答えには、なっているようでなっていないのです。
(次回に続きます。)