私の駅までの通勤ルートで、いつも歩く幹線道路沿いを、いつもと少しだけ違うコースで歩いていたら、とある喫茶店の店先にソフトクリーム看板(ソフトクリームの形をした大きな立体の模型のことです。どう呼ぶのか分からずネットで調べてしまいました(笑))が出ているのを見て、ちょっと笑ってしまいました。
観光地でもなく、子どもをターゲットにした店でもない、ごく普通の喫茶店に、ちょっと場違いなソフトクリーム看板が出ていたからです。
↑これは公園で見た、ソフトクリーム看板。
でも、そうやってソフトクリーム看板にちょっと注目してみて、実はこの「ソフトクリーム看板」って侮れないな、と思ったのです。
うちの娘は外出先で食べるソフトクリームが好きで、どんな観光地に行っても、行った先でこのソフトクリーム看板を見つけてしまうと、必ずソフトクリームを欲しがります(念のため、というか療育を兼ねて、店に私たちを引っ張っていくときに「なに?」と聞くと(我が家では、「なに?」が娘の発話を引き出すマジックワードになっています)「そふとくりーむ」と答えるので、間違いないでしょう)。つまり、ソフトクリーム看板と自らの欲求行動がつながっている、ということです。
しかも、このソフトクリーム看板、特定のブランドのソフトクリームだけで使われているわけではなくて、およそソフトクリームを売っているありとあらゆる店で、ほぼ共通して使われています。さまざまなメーカー製のソフトクリーム、さらには自家製のソフトクリームを売っている店でも、だいたい同じようなソフトクリーム看板が置かれ、「ここで(何らかの)ソフトクリームが売られている」ということをアピールしています。
そして実際に、娘はそのアイコンを認識して、私たちにソフトクリームを欲しがり、ソフトクリームを入手できます。
つまり、娘にとっては、ソフトクリーム看板というのは非常に有効な社会的リソースになっているわけです。
それを目認さえできれば、あとはそれが置かれている店に大人(私たち)を連れて行けば、大好きなソフトクリームが食べられるわけですから。
今後、買い物のスキルを娘が身につけることができれば、この「ソフトクリーム看板」は娘にとってさらに有意義な社会的リソースになっていくことでしょう。この看板がある店に入ってお金を出して「ソフトクリーム」と言うだけですから、そんなに難易度が高いとも思えませんし、初めての場所でも活用できる可能性が高いです。
あのソフトクリーム看板はけっこう大きな場所を占めるわけですし、お店としては無駄なものを置く余裕はないわけですから、あの看板は設置コストを上回るリターンを生んでくれる、優秀な広告なのでしょう(ソフトクリーム自体、粗利は相当大きそうですしね)。だからこそ、お店の種類やメーカーの違いを越えて、広く採用されているために、結果的にある種の「社会的なリソース」の地位を確立するに至っているわけでしょう。
そしてそれは、ある種の「ユニバーサルデザイン」にすらなっている。
意外と、こういう存在って珍しいし、貴重ですよね。
明日から連休ですが、もしかするとまた、娘はこの連休中、1回くらいはこのソフトクリーム看板を頼りに、1回くらいソフトクリームを手に入れることができるかもしれませんね。(^^)
皆さんもよい連休を。
話はそれますが、アメリカと比べて日本はレストランのメニューのリアルなサンプルが充実してますよね。
アジア、東南アジア、メキシコ、アメリカくらいしか言った事がありませんが、サンプルがリアル(親切)なのは日本がダントツですね。
アスペの息子は、アメリカでレストランに入るのを嫌いますが、日本では積極的に入ります。
これは多分、ショーウィンドウにサンプルが出ているお陰で、店に入る前にどんな「見た目」のものが出るのかが明白なことが多かったからだったと思います。
今回のお話は「なるほどな~」と思いました。理髪店の赤白青の回転体は、起源を知らないと何のこっちゃ? ですし、カニ料理のお店はリアルなカニの看板は出ていますが、カニ好きな自閉症児の数もそうそう多くなさそうですし、何よりも看板のまま一匹丸ごと出てくるわけでもなく、店に入って「カニ」と言っても「?」なリアクションしか返ってきませんしねえ。
個別のお店の工夫で表示されているものはありますが、普遍的にある看板は確かにソフトクリームだけなのかも知れません。
世の中の見方が少し変わりました。
コメントありがとうございます。
観光地でリラックスした気分になっているときなら、あのソフトクリーム看板は、大人にとってもちょっとしたワクワク感を与えてくれる、優れた広告ですよね。
しかも、実物のコピーなので抽象性がなく、視覚的にも「構造化」されていて、自閉症のお子さんにもとても分かりやすいと思います。
こういうアイコンが他にあるかどうか、私もちょっと思い当たりませんが、このソフトクリーム看板も、実際に見て初めて今回の記事のようなことに気づいたので、きっと他にもある(気づいていないだけ)なのかもしれません(^^)。
「アイス、買おっか!買おっか!ゆーと、アイス、食べる??」(息子→私への言葉です)
っていう感じになりますね~。息子の目は、ズームもワイドも両極端で、そんなところまで見てるのか、こんなものも見てないのかと、いつもびっくりします。
けど、確かに、店頭で「アイス売ってます~」て音声で鳴ってたら、私だって、雑音に混じって聞き逃すでしょうね!
視覚視覚って、大事なんですね~
コメントありがとうございます。
ソフトクリーム看板は、実物そのもののコピーですので誰にでも分かりやすいですよね。
それは、よく考えるとなかなかすごいことだと思います。(そして、おっしゃるとおり、「視覚支援」にもなっているわけですね。)
これからもよろしくお願いします。
昨年、奈良の勉強会にも参加させて頂き、夫婦で実物のそらパパさんを拝見できた時には、まるで芸能人の方に会ったかのように、「あっそらパパさんだ!」とはしゃいでしまいました・・・
私の息子(5歳)も、ソフトクリームのこの造形物?看板?を見つけるのが非常に素早く、親が見つけていなくても、「アイスク、アイスク」と言って、手を引っ張って行きます。
「どこ?」と、聞くと指さしをして教えてくれる唯一の物です。ほんとに、この連休中は、一度ならず二度までも、息子に先を越され見つけられました。
でも、この看板のおかげで親子で笑顔になれる瞬間ができることも確かです。
そらパパ様、これからも色々な知識と書籍のご紹介楽しみにしております。
コメントありがとうございます。
また、奈良での勉強会にもお越しいただいたということで、その節はお世話になりました。
私も、今回の記事で書いたことに気づいて以降、ソフトクリームの看板を見るたび、「自分たちが作る絵カードとかのコミュニケーションツールも、これくらい子どものニーズに直結していて分かりやすいものにしていかないといけないな」と考えるようになりました。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。