2006年02月03日

強化子ベースの切り替え指導(1)

引き続き、PECS(絵カードコミュニケーション)の本、「A Picture's Worth」を読んでいます。
ひととおり最後まで目を通したので、改めてじっくり読んでいるところです。内容についてのご紹介記事も、徐々にこのブログに書いていきたいと思います。

全体的には、とても読みやすい本です。ページ数も150ページ程度ですので、自閉症、特にABAに親しんでいる人にとっては、比較的容易に読みこなすことができると思います。
せっかくなので、本書によく出てくる重要単語などを備忘録も兼ねて整理しておこうと思います。

aggressive early intervation 早期集中介入
applied behavior analysis 応用行動分析(ABA)
autism 自閉症
Braille 点字
cue 手がかり
entice 誘導する
imitate 模倣する
initiate (行動を)起こす
reinforce (reinforcer) 強化する(強化子)
rewords 報酬、ごほうび
sibling 兄弟姉妹
Speech-language pathologist 言語療法士
spontaneous 自発的な
tantrum かんしゃく
transition 場面の切り替え


さて、この単語一覧の最後にある「transition」、場面の切り替えについて、すぐにでも役に立ちそうなアイデアが本書に掲載されていたので、ご紹介したいと思います。

このアイデアは、単なる特定の状況への対応に留まらず、PECSの背後にある「コミュニケーション観」と「理論的バックグラウンド」が明確に現れたものでもあると感じています。
さらには、ABAとTEACCH、あるいは理論と実践の両方のいいところを融合させるとはどういうことなのかを具体的に示したものにもなっており、私が療育で目指していきたい方向性と完全に合致しています。

さて、「場面切り替えのアイデア」の話に戻ります。

一般に、自閉症児は場面の切り替えが苦手です。本書には、次のようなケースが例示されています。

ある自閉症児が学校に通ってくるときに、

スクールバスから降りるときに泣き、教室に入っても20分くらい泣いている。
ようやく落ち着いたと思ったら、すぐに外で遊ぶ時刻になり、また泣く。
ようやく落ち着いたと思ったら、また教室に戻る時刻になり、また泣いてしまう。


このようなケースに対し、教師は絵カードによるスケジュールを作り、それを見せて見通しを立てさせるようにしました。しかし、状況は多少改善されたものの、やはり場面の切り替えでは混乱し泣いていました

場面の切り替えが苦手な自閉症児に対して、TEACCHの「構造化」の方法論の1つである視覚化のテクニックを使い、見てわかるスケジュールを作って提示することが効果があるというのは、よく紹介されていることです。
しかし、それでも効果がない(不十分な)場合にどうすればいいのか?

ここで、本書の理論的バックグラウンドとなっている行動療法(ABA)の枠組みが活用され、説得力のある「もう1つのアプローチ」が提示されています。

本書においては、コミュニケーションの「機能分析」ということが非常に重視されています。つまり、「どう」コミュニケーションするか、ではなく「何を」コミュニケーションするか、を常に考えるのです。

この「機能分析」という考え方は、ABAにおける基本的な概念の1つです。
例えば、以前もご紹介したパニックへの対処法を考える際にも、パニックに対し「怒っている、暴れている、しずめなければいけない」と考えただけでは、誤った対応をしてますますパニックを増長させてしまいます。
パニックを「暴れている」という現象面からとらえるのではなく、結果としてどういう機能を果たしているかという機能面からとらえることが、ABAにおける問題対処への第一歩になります。それが例えば「欲しいものを手に入れる」という機能を(結果的に)持っているとすれば、「パニックしても要求を通さない、パニックしないで要求したらかなえてあげる」という、適切な対処法に行き着くわけです。
そもそも、絵カードによるコミュニケーション=PECSを推進しているのも、「ことば」という具体的手法=How to communicate にこだわるのではなく、何を伝えあうのか=What to communicate に着目して、それがもっとも効果的に習得できる方法として、絵カードを活用しているわけです。

さて、「TEACCH的に」スケジュールを視覚化して見せた後でも、場面切り替えの指示に抵抗するケースの場合、「ABA的に」機能分析をして、さらに効果的な場面切り替えへの誘導を検討していくことになります。

つまり、場面切り替えの指示が自閉症児に対してどういう機能を持っているか(自閉症児にとって、どういうメッセージとして受け止められているか)、を考えるのです。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近こちらのブログを見つけ
ちょっとずつ見させてもらってます(^^ゞ
明日5歳になる自閉症の男の子がおり、かなり勉強?はしましたが、まだまだ理解不足な情けない母親です。

「ABAとTEACCH、あるいは理論と実践の両方のいいところを融合させる」

キレーション、CFGFダイエット、~メゾットなどなどいろいろな言葉を聞きネットで調べました。
講演会にも積極的に参加して出た結論と同じです。
というと偉そうなんですが、私達親子が進みたいと思っている理想の道だと思ってます。
これからも参考にさせていただきますので、楽しみにしてます。
私も最近ブログを始めました。
http://maakunmamanoblog.seesaa.net/
こちらのサイトを紹介してもいいですか?
Posted by まあくんママ at 2006年02月04日 11:17
まあくんママさん、はじめまして。

最初は私も、キレートまで含めていろいろな「治療法」を調べました。
早期集中介入をやろうか、と本気で考えたこともありました。
でも、ここへきてようやく、もっと「身の丈に合った」、だからこそしっかり実行できる療育があるのかな、と思い始めています。

もちろん紹介していただけるのは大歓迎です。
これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2006年02月04日 22:22
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