(2)ステップ1:1つの場所に、1枚の絵カード(続き)
絵カードを使ったコミュニケーション療育の「ステップ1」の続きです。
ステップ1では、絵カードを1枚だけ作るところから始めます。(たくさん作るのはステップ2以降です。)
その、たった1枚作るカードは、子どもが大好きでよく欲しがるものの絵カードにします。
ほとんどの場合は、食べ物か飲み物になるでしょう。可能なら、以下の条件を満たしたものがいいでしょう。
・子どもが何よりも1番好きなもの
・1日のなかで子どもに与えるチャンス(回数)が多いもの
・小分けできて、子どもが何度欲しがっても与えることができるもの
そのアイテムを子どもが欲しがったときに、常に与えることができるよう、十分な量を買い置きしておくことも大切です。せっかく子どもが欲しがっているのに与えられないという場面を作ることは、ステップ1~2あたりの最初の導入の段階では特に致命的になりますから、絶対に避けるべきです。
加えて、子どもがこのステップ1をこちらの期待以上に急速にマスターして、すぐに(例えば1日で!)絵カードで何度も要求するようになる可能性もあります。そんなケースに備えて、与えるものは、細かく分けて与えられるものが向いていますし、そうなるように工夫すべきです。
例えば「クッキー」なら、小さくくだいてあげるようにしたり、最初から小さな一口サイズのクッキーを用意することが考えられます。あるいは「バナナ」なら、絵カード交換1回で丸ごと1本与えるのではなくて、輪切りして一口サイズにして、絵カード交換1回につき1カットだけあげるようにすることを検討します。
このように工夫することで、おやつの時間1回で、何回も絵カード交換のトレーニングができるようになりますし、幸運にも子どもが絵カードをがんがんと使いまくるようになったら、サイズをさらに小さくして1回に与える量を減らすことで対応できます。
繰り返しますが、ステップ1では、「子どもが絵カードで要求している」のに、要求しているアイテムを与えない、というケースは絶対に起こさないようにしましょう。そんなことが起こるくらいなら、絵カードを隠してしまうほうがまだマシです(でも、本来はこれも避けるべきです)。
さて、そのような配慮をしたうえで、子どもの好物の絵カードと、その好物のストックが用意できたら、絵カードを、「その絵カードが表現しているアイテムがある場所」にできるだけ近い場所に貼り付けます。
例えば、冷蔵庫に入っているジュースや果物なら、絵カードの裏にマグネットシートを貼付して、その冷蔵庫に貼り付けます。
ダイニングテーブルのバスケットに入っているお菓子なら、そのバスケットの縁にマジックテープで貼り付けます。
戸棚に入っているお菓子なら、その戸棚のお菓子の入っている扉に、マジックテープで貼り付けます。
「アイテムのある場所」と絵カードとの距離が近いほど、ステップ1を習得させるという最初の難関をクリアさせやすくなると思います。(教える側の動きにもムダがなくなります)
ちなみに、マジックテープで貼り付ける場合、絵カードと貼り付ける面、両者の張り合わせ面が大きすぎると、意外と力が必要になるので微細運動の苦手なお子さんにははがすのが難しくなる場合があります。絵カード側のマジックテープの大きさを調節して、子どもにとって軽い力ではがしやすく、かつ不用意に落ちてしまったりしないような、張り合わせ力のバランスを見つけてください。(張り合わせ力が強すぎる場合は、絵カード側のマジックテープの大きさを小さくします。)
絵カードの用意ができたら、子どもがそのアイテムを欲しがる状況を作ります。
一番理想的なのは、子どものほうからそのアイテムを欲しがるまで待つことです。絵カードを導入する前から、パニックやクレーンなどでそのアイテムを欲しがるという「目に見える要求行動」があるのであれば、この方法をとることができます。
それができない場合は、適切なタイミングで(たとえばおやつの時間などのタイミングで)子どもの前にそのアイテムをさりげなく提示して、子どもにそれを欲しがらせるという方法をとることになるでしょう。
この場合、教える側は、(1)そのアイテムを提示しつつ、(2)子どもに「絵カードを交換させること」を手助け(プロンプト)して、かつ(3)絵カードを受け取ってアイテムを渡す、ということをしなければならないことになり、一人だと手が物理的に足りなくなる場合があります。
このような場合は、周囲に誰かがいれば、その人に助けてもらってもいいのですが、それも難しい場面では、例えば以下のようなアイデアで乗り切りましょう。
a.そのアイテムをダイニングテーブルに置き、そこで絵カード交換のセッションを行なう。
この場合、絵カードを設置する場所はダイニングテーブルの近辺にするのが適切でしょう。
b.透明なプラスチックケースにひもをつけたもの(この程度なら100円ショップの商品で簡単に作れるでしょう)を用意する。駅弁の売り子さんのイメージ。
これを首から下げておき、そのケースにアイテムを入れて両手を自由にしたうえでセッションを始めるわけです。
ポイントは、「アイテムを提示する手」を、何とか工夫して必要なくすることです。(子どもの腕をプロンプトする手と、カードを受け取る手は絶対必要ですので、残った「アイテムを提示する手」を何とかするしかないということになります。)
ステップ1の具体的なセッションの進めかたについては、次回ご紹介します。
(次回に続きます。)
最初に、どんな絵カードが利用されているかの実態を調査をしたいのでご協力いただけませんでしょうか?
はじめまして。
絵カード利用の実態ということですので、我が家で使っている絵カードをまとめてみました。
https://soramame-shiki.up.seesaa.net/image/ekard_s1.jpg
https://soramame-shiki.up.seesaa.net/image/ekard_s2.jpg
1枚目に写っているものが、出かける直前にこれからの行き先を教えるための絵カード等で、2枚目に写っているものが、夕食後のデザート等、冷蔵庫に貼って使うものです。
これ以外に、スケジュール表示用の絵カードもありますが、そちらは固有名詞だらけなので省略しました。(だいたいは、学校、学童保育、自宅、お出かけ等です)
ご参考にどうぞ。
早速の情報提供に感謝します。
絵カードを自作している人は、ほとんどデジカメ持っているだろうから、絵カードをブックから外して並べてデジカメで撮ってもらった画像を送ってもらうほうが、手間がかからないかもしれませんね。情報収集方法も参考になりました。
ありがとう。
手抜きのご報告ですみません。(^^;)
面倒くさがりなもので、一番手軽にご報告できる方法はと考えて、写真で撮ることにしました。
よろしくお願いします。