そのために、かつて読んだ本を改めて確認しているのですが、そういった本の中から、TEACCH本を1冊ご紹介しようと思います。
自閉症の治療教育プログラム
著:エリック・ショプラー
ぶどう社
第1章 TEACCHプログラム入門
第2章 自閉症の診断
第3章 治療教育のための診断評価
第4章 個別教育プログラム
第5章 クラスルーム・プログラム
第6章 コミュニケーション・プログラム
第7章 教師の研修プログラム
第8章 家庭にかかわる多様な問題
第9章 青年期の問題と新しいサービスの開発
この本は、1983年に開催された、第1回TEACCH東京セミナーの講義の全文を訳したものです。
この前年、1982年に渡米した佐々木正美先生がノースカロライナ州でTEACCHの存在を知り、その理念に共感して日本でのTEACCHプログラムの普及に取り組み始めました。
そして、翌年の83年にショプラー教授をはじめとするノースカロライナ大学のTEACCHチームを招き、日本で始めて開催されたTEACCHのセミナーが、この第1回TEACCH東京セミナーだということのようです。
日本のTEACCHプログラムの本格的な幕開けを告げる本だとも言うことができ、ある意味、歴史的な重要性を持つ本だと言えます。
その一方、1983年の時点での紹介セミナーということで、内容はおよそ25年ほど前のものになっていることも事実で、部分的には古さを感じる記載もあります。
とはいえ、この本は、TEACCHを自ら実践しようと考えたとき、非常に価値のある内容が含まれています。
それは、TEACCHにおける発達診断、個別プログラムの開発のために必要な、CARSとPEPの実施方法がかなり詳細に記載されているということです。
特に、CARS(小児自閉症評定尺度)については、一般の親御さんでも十分に点数をつけられるくらい詳しく、25ページ以上にわたってすべての項目と採点基準が解説されています。また、PEP(心理教育診断検査)についても、課題1つ1つの詳細は載っていませんが、約15ページにわたって解説と検査用紙のサンプルが掲載されており、TEACCHにおける発達検査がどのように行われるのか、「めばえ反応」というのはどんなものなのかといった基礎的な知識を得ることができます。
さらに、続く15ページには、このCARSやPEPの診断結果に基づき、どのように個別療育プログラムを作っていくのかといった方法論が説明されています。
セミナーの対象が教育関係者であることから、療育カリキュラムの作り方に対して、他の一般むけTEACCH本ではほとんど見られないような具体的な記述が含まれており、とても参考になります。
※なお、PEPについては、現在、改訂版の「PEP-R」が入手可能です。(完全にプロ向きです)
新訂 自閉児発達障害児教育診断検査―心理教育プロフィール(PER‐R)の実際
TEACCHの入門書としては、以前にご紹介した、「自閉症児のための絵で見る構造化」や「講座 自閉症療育ハンドブック」があり、これらはTEACCHの理念を理解したり、構造化の実際をイメージしたりするのに参考になります。
が、さらに進んで、自分の子どもの診断や検査、さらには家庭の療育のための個別プログラム作りなどを、あくまでも「TEACCHのスタイル」にこだわってやっていきたい、といった場合には、本書がかなり役に立つのではないでしょうか。
特筆すべきは、2000円以下で買えるという手軽さです。この内容であれば、この値段はとてもお買い得だと思います。「TEACCHを知る」のではなく、「TEACCHで教えたい」人むけの入門書です。
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