2006年01月31日

療育の「効率」について(4)

早期集中介入を自閉症の療育「法」としてみた場合、効率の悪さは否定できません。

この「効率の悪さ」は、時間と療育者のスキルの2つの側面に及びます。

早期集中介入を積極的に推進している「つみきの会」が発行している「つみきBOOK」(初版)によると、早期集中介入の権威であるロヴァースが調査した結果、彼らが直接自閉症児を訓練した場合の成功率が40%であるのに対し、親だけで早期集中介入を試みた場合の成功率は4%未満だったそうです。
4%未満というのは、恐らく、「何もしないのと同じ」というレベルであり、早期集中介入はプロにやってもらわなければ効果がない(少なくとも、巷で言われているような「劇的な効果」は望めない)ということを示しています。

つまり、早期集中介入は、膨大な時間が必要なだけでなく、同時に、習熟したプロも必要なのです。プロを毎週40時間雇うコストを考えただけでも想像を絶しますが、それ以前の問題として日本には一般家庭で雇えるABAのプロなどほとんどいません。

結局、早期集中介入は、多くの一般的な家庭にとっては、結局「絵に描いたモチ」でしかないわけです。そして、その全ての原因は、この方法の効率が非常に悪いことにあります

これは、かつて自動車が誰にも買えない高嶺の花だったのと、ほとんど同じ構造です。
その後、自動車製造には「大量生産」というパラダイムシフトが起こり、ようやく庶民にも手の届く道具になりました。
同じように、早期集中介入を、「庶民にも手の届く道具」にするためには、どんなパラダイムシフトが必要なのでしょうか?

ただし、ここでは、「費用を政府が持てばいい」といった安易な議論はしません。福祉にはどれだけでもお金をかけるべきだという考えには私は賛成しません。

そうではなく、早期集中介入がなぜこれほどの時間、これほどの高いスキルが必要な「効率の悪い方法」になってしまっているのかを見つめなおし、残すべきは残し、削るべきは思い切って削って、「新しい方法論」を見つける作業が必要なのではないか、ということを言いたいのです。

当たり前ですが、この作業を行なうと、できあがる方法は、いわゆる「早期集中介入」ではなくなります。行動療法(ABA)の枠組みを使った、別の方法になります。
そして、その方法論は恐らく、TEACCHや、早期集中介入以外の行動療法アプローチで採用されているものとほとんど同じになります。

※早期集中介入とTEACCHは、しばしば、対立軸の両端であるかのように議論されます。しかし、方法論としてみた場合、それは必ずしも正しくないと思います。

・・・だんだん、パズルが組みあがってきました。

これまでも説明してきたとおり、TEACCHにおいては具体的な療育カリキュラムはほとんど語られず、療育者のスキルに任されている部分があります。家庭の療育を「TEACCH風に」実施しようと思うと、療育のカリキュラム作りのノウハウについては別の方法で勉強しなければなりません。

一方、早期集中介入は、具体的な療育カリキュラムは比較的明確ですが、そのままでは効率が悪くて家庭の療育としては不適切です。

でも、もし仮に、早期集中介入の「効率の悪さ」を見直し、より短い時間、簡単なスキルで実施できるようなカリキュラムに再構成できたとしたらどうでしょうか?

その再構成された方法論で療育カリキュラムを作り、それをTEACCHの理念・枠組みに基づいて実施することができれば、素晴らしい「家庭の療育」になるのではないでしょうか?

それこそが、私が、娘のためにもぜひとも取り組まなければならないチャレンジなのだと思っています。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:52| Comment(2) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
(次回に続きます。)
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続きを読みたくてもどこに続きがあるのか、
今読んでいる所はどこなのか分かりにくいのですが・・・
Posted by 安達 早苗 at 2010年07月08日 12:32
安達さん、

すみません、確かに読みにくいですよね…
続き物の記事の場合、その記事を書いた時点では次の記事のリンクがまだないので、リンクをつないでいくためには記事をさかのぼって手作業で更新しなければならず、そこまで手が回っていないというのが率直なところです。
今後、できるだけ対応していきたいと思いますが、当面はブログ左のシリーズ記事のリンク集から番号順にたどっていただければと存じます。すみません。

また、基本的にはシリーズ記事はまとめて順次掲載していますので、記事のトップにある前の記事/後の記事のところで、「後の記事」(右側)のほうを繰り返しクリックいただいても、たいていは希望する記事にたどりつけると思います。

よろしくお願いいたします。
Posted by そらパパ at 2010年07月08日 23:19
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