発達障害 境界に立つ若者たち
著:山下 成司
平凡社新書
第1部
「はざまの子」のためのもうひとつの学校―A学院という学校があった
第2部
見かけはごく普通なんだけど―「LD傾向」を持つタケシ君の場合
わたし、KYなのかも―「アスペルガー症候群」を抱えるアイコさんの場合
「普通」と「障害」のはざまで―「軽度知的発達障害」を抱えるナオコさんの場合
どうしても普通免許が取れない―「学習遅進」を抱えるフクちゃんの場合
読解力がないんだよね、わたし…―「ディスレクシア(難読症)」を抱えるユキエさんの場合
障害をまるまる「個性」と受け止めて―「軽度知的発達障害」を抱えるテツヤ君の場合
こちらの本は、買って読みました。
シンガーソングライターやイラストレーターとして活動していた著者が、ちょっとしたきっかけから、発達障害の青年たちと、オルタナティブ・スクールの講師としてかかわるようになってから、そのスクールが閉校するまでの18年間を、実際にかかわった生徒たちにスポットライトを当てて振り返った回想録です。
著者はブログも開設していて、本書についてのエントリもありますので、興味のある方はそちらもご覧にあるといいと思います。
http://jinruinekokakeikaku2.blogspot.com/2009/06/blog-post_17.html
山下成司著『発達障害 境界に立つ若者たち』刊行のお知らせ
ぎりぎりで社会に適応できないくらいの障害をもつ子どもたちが、その社会に「居場所」を作るために大変な苦労をしていて、繰り返し挫折を味わっている(でも、「結婚したい」「仕事を続けたい」などのささやかな夢を持って生きている)ことが、本人へのインタビューや著者の経験したエピソードから具体的に伝わってきて、なかなか読み応えのある内容になっています。
ここ数年は、発達障害支援法も施行され、本書に登場するようなお子さんへの支援も「真空地帯」ではなくなってきているはずですから、こういったお子さんをとりまく環境も徐々に改善していくはずだ、と信じています。(同時に、本書は現時点で既に、少しずつ「昔の本」になりつつあるということでもあるでしょう)
なお、本書の守備範囲は著者自身の経験と、数人の「生徒」のエピソード・インタビューまでに限られていて、そこから一般論を引き出すような議論にはなっていませんので、あくまで「発達障害関連の読み物」であって、発達障害の入門書的に読むことはできないと思います。
ちなみん、発達障害の「入門書」といった目的で読むのであれば、既に「定番書」と化した感のあるロングセラーである以下の新書をおすすめしたいと思います。
発達障害の子どもたち
著:杉山 登志郎
講談社現代新書 (当ブログレビュー記事)
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