2006年01月25日

PECSを研究中です

こんな本を買って読んでいます。



A Picture's Worth : PECS and Other Visual Communication Strategies in Autism
著:Andy Bondy, Lori Frost
Woodbine House (2001)

PECSの本です。
PECSというのは、Picture exchange communication systemの略で、自閉症児のための絵カードを使ったコミュニケーションの仕組みを体系化したものです。

http://web.kyoto-inet.or.jp/org/atoz3/kado/book1/PECS(NAS).htm

こちらに解説があります。児童精神科医の門 眞一郎先生(京都市児童福祉センター)のページです。
これによると、PECSはアメリカのデラウェアで開発された療育パラダイムで、もう15年ほどの歴史があるようです。

私がPECSに着目したのは、次の3点からです。

第1に、娘に対する「みかんトレーニング」での苦い経験をふまえて私が手さぐりで始めた、「絵カード交換コミュニケーション」のアプローチと、PECSでの絵カードの導入ステップが非常に近いことを知り、今自分がやろうとしていることを体系化して今後につなげていけるのではないかと感じたこと。
ちなみに、うちの娘は、どうしてもうまくいかなかった音声模倣による「みかんトレーニング」とは対照的に、みかんが欲しいときにみかんカードを手渡す「絵カードトレーニング」は、わずか1週間程度で完璧にマスターしました。今でも毎日みかんカードを母親に渡してみかんを手に入れています。
これだけの「トレーニング効率の違い」も、絵カードにがぜん注目している理由の1つです。

第2に、TEACCHにおいてしばしば使われる「絵カードを使ったコミュニケーション」について、私の持っている限りのTEACCH本では全くといっていいほど具体的な内容が語られておらず、途方に暮れていたところ、絵カードの使い方が具体的に体系化された方法論としてPECSというものがあることを知ったこと。
(後から分かったことですが、実際、TEACCHの絵カードコミュニケーション≒PECSと考えても大きな間違いではないようです。)

第3に、早期集中介入のような、ある意味原始的なやり方以外の方法で、具体的に行動療法(ABA)のアプローチを有効活用したコミュニケーションスキル改善の療育法を探していたところ、PECSにその可能性を見出した、ということ。
(なぜ、早期集中介入が「原始的」かということについては後日書きたいと思います。)

できれば日本語で読みたかったのですが、PECSについては日本語の適当なテキストがまだ入ってきていません。
実は、上で紹介した門先生がPECSのトレーニングマニュアルを翻訳したばかり!なのですが(下記参照)、残念ながらこの日本語訳本は一般にはまだ入手できないようです。(すごく欲しいんですが・・・)

http://www.eonet.ne.jp/~skado/index.htm

ちなみに、この本の原書は、おそらくこれ↓のようですが、Amazonでは売り切れ中です。



PECS - The Picture Exchange Communication System
著:Andrew S. Bondy, Lori Frost
Pyramid Educational Consultants Inc

というわけで、上記の原書と同じ作者による、もっと易しい親のための入門書である本書をAmazonで発見したので、購入してみることにしたわけです。

現在、半分あたりまで読みました。
前半は、コミュニケーションとは何なのか、その機能面に着目して、自閉症児のために本当に伸ばさなければならないスキルがどこにあるのか、そのために活用できる方法にはどのようなものがあるのか丁寧に解説されています。

決して、自説の絵カードによるコミュニケーションだけにこだわっていないところに、誠実さが感じられ好感が持てます。
絵カードも含め、普通の「ことば」やジェスチャー、手話、電子機器など、さまざまなコミュニケーション手法のいい面、悪い面を客観的に比較し、子どもの発達の程度や既に発揮されているコミュニケーションスキルのレベルから、総合的にどの手法を選び、スキルを伸ばしていくのが最適なのかを判断することをすすめています。
そして、その帰結として、言葉に遅れのある自閉症児の場合、絵カードを使ったコミュニケーションプログラムが最も有効である場合が多いことから、自閉症児向けの絵カードによるコミュニケーションシステム=PECSが紹介されているという流れになっています。

PECSについては、私なりに噛み砕いて、このブログでも順次ご紹介できればいいな、と思っています。
それほど難解なプログラムではないようなので、まさに「家庭の療育」にぴったりなのではないか、と期待しています。

posted by そらパパ at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
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