2009年05月28日

続々・自閉っ子、こういう風にできてます!(立ち読みレビュー)

ただただ、残念。



続々・自閉っ子、こういう風にできてます!―自立のための環境づくり
著:岩永 竜一郎、藤家 寛子、ニキ リンコ
花風社

自分のナゾを解き、工夫を重ねる―自立への近道
1 運動するときに、気をつけておくべきこと
2 「頭でっかちな脳」とともに生きる
3 身体が丈夫でもやっぱり自閉
4 特性をよく見つめて住む場所を選ぼう
5 福祉・医療の外とも連携しよう
検査結果報告

花風社の「自閉っ子」シリーズですが、今回、初めて購入を見送りました
ですので「立ち読みレビュー」になるのですが、実際には本文の読み込みは、これまでの「立ち読み」レビュー全般よりも少ないと思います。

というのも、

この本は全編、「感覚統合理論」に染まっているからです。
ですので、「読まなかった」というより、立ち読みレベルですら「読めなかった(ついていけなかった)」といったほうが正しいです。

この本の前著にあたる「続(「続」が1コ)・自閉っ子、こういう風にできてます!」のレビューで懸念していたことが、まさに危惧していたとおりの形で、完全に花開いてしまったという感じです。

この本は、ニキさんや藤家さんの自閉症者としての訴えを感覚統合理論で「解釈」したうえで、感覚統合理論で「解決」法を提示する(その「解決法」で、自閉症の人は自立しましょう)、という内容になっています。
でも、以前から書いていますし、アカデミックな世界では常識に近いと思うのですが、感覚統合療法はエビデンスベースドな療育とは言いがたく、また、そのベースにある感覚統合「理論」にいたっては、脳科学などの知見を引用してはいるものの、実際には十分な科学的検証を経ていない、疑似科学的な仮説だと言わざるをえないものです。

http://soramame-shiki.seesaa.net/article/25582009.html
http://simamune.cocolog-nifty.com/nature_human_and_science/2005/03/post_6.html
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006152012/en
http://www.tsumiki.org/Australia.htm
↑最後のリンクは「つみきの会」むけに、井上雅彦先生が監訳したレポートです。

※最後のリンクの文章にもあるとおり、「自閉症の人に感覚異常がみられる」という事実と、「だから感覚統合理論は妥当だ」という主張とはまったくの無関係だ、ということに自覚的になることが重要です。これは、「エジプトにピラミッドがある」という事実が、「だから古代エジプトには宇宙人がいた」という主張を正当化しないのと同じです。

疑似科学的な仮説に全面的に頼って書かれているわけですから、必然的に、この本全体が「疑似科学本」になってしまっています。
実際、ざっと見ただけでも、脳科学の知見をつまみ食い的に引用しつつ、何かを説明しようとするたびに次々と新しい構成概念が導入されていきますし(オッカムの剃刀を振り回したくなりますが)、トートロジー(同語反復)的な言及も多く、率直にいって、キレーションやGFCFダイエットのような代替療法本や、七田式の「超右脳」療育本とさして変わらない「トンデモ本」になってしまっているといっても、残念ながら過言ではないでしょう。

この本では、私も重視しているアフォーダンス理論にも言及されているのですが、「環境が使い方を自らアピールする」といったような、擬人化された「アフォーダンス=刺激」という説明がなされています。この「アフォーダンス=刺激」という理解は、典型的なアフォーダンス理論の読み誤りと言われていて、やはりこの辺りからも、いろいろな理論を十分に掘り下げずに「つまみ食い」しているという印象を強く感じるわけです。

うーん・・・

なんか、花風社(とその代表である浅見氏)は、あまりよろしくない方向に進み始めているんじゃないかなあ、という印象をもたざるを得ないですね。

実は、そう感じる理由はもう1つあるのです。

先日、こちらの本を立ち読みして、現在「立ち読みレビュー」の記事を準備中です。(1~2週間以内にアップできると思います)
こちらの本は、「GFCFダイエット」や「サプリメント療法」で自閉症の子どもが改善したと主張し、「キレーション」についても肯定的に紹介する、要は「代替療法」の本なのですが、この本に肯定的な「あとがき」を寄せて、こういった療法についてのある種の「おすみつき」を与えてしまっているのが、やはりこの花風社の浅見氏なのです

・・・なんか、ちょっと残念だなあ、と感じます。

ちょっとこれからは、今までとは少し違う意味で、この会社の動きに「注目」していかなければいけないのかもしれないな、と思います。

※その他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 21:31| Comment(18) | TrackBack(0) | 花風社関連 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
当事者の間では以前から危惧していたことなんです。あ~やっぱりね…としか言えません。そら豆パパも…そう思いますか?キレーションについても書いているんですね…。発達障害児の定型発達の親御さん達が色んなことを手本としなければいいのですが…。
Posted by 鈴蘭 at 2009年05月29日 10:14
 JKLpapaです。お疲れ様です。
 感覚統合についてのお話がでているので、ちょっと書き込みします。
 数年前、感覚統合療法にすんごく興味があって、本を数冊購入し、読みました。たぶん、理系の方って、感覚統合療法の「罠」にはまりやすいんじゃないかと思います。そらパパさんご指摘のとおり、多くの発達障害者が、感じ方(バンド幅や特性)がふつうの人とは違います(これを異常とよぶかどうかは別問題だと考えています)。なので、「この人たちは、いわゆる健常者とはちょっとちがった感じ方をしているかもしれないぞ」という視点は非常に重要だと思います。でも、感覚統合「療法」の実践例を読むと、圧倒的に「それって、その子の成長の結果なんじゃないの?」と思えるものがほとんどです。以前は「感覚統合的視点は大事だ」なんて言ってたことがありましたが、今は誤解のないように「作業療法士さん的視点」と言い換えています。
 でも、この感覚の違いも、足の速い子と遅い子、力の強い子とそうでもない子、絵や字の上手な子とそうでない子、といった違いとスペクトラムにつづいているように思えますので、まだまだこの世界で検証、研究しなくてはいけないものがたくさんあるなぁ、と思います。
Posted by JKLpapa at 2009年05月29日 12:41
鈴蘭さん、JKLpapaさん、

コメントありがとうございます。

今回は「立ち読みレビュー」ですので、あまり細かいところまでは批判できなかったのですが、この本からはいろいろな問題が見えてくるなあ、と感じています。

ここ最近の浅見氏の動きには、たしかに若干の「違和感」を感じます。
キレーションとかが書いてあるのはこの本ではなくて、近い将来紹介しようと思っているほうの本ですが、それでも、そんな本に「あとがき」を寄せてしまえば、それはやはり浅見氏自身もキレーションとかを肯定的に受け止めていると判断されても仕方ないと思うわけです。

JKLpapaさんのおっしゃる感覚統合療法の問題も、そのとおりだと思います。
脳科学の知見をつぎはぎしてできている感覚統合の理論は、部分部分では合っているところもある(引用しているわけだから当然)でしょうが、全体としての整合性やグランドセオリーとしての完成度は低い、という感じなのではないでしょうか。

「感覚の違い」というのも、なかなか難しい概念だと思います。
だって、それって要は「クオリア」ですし、誰もAさんとBさんの感覚を比べることなんてできないわけですから。
「周りの人は平気だけど自分は平気じゃないから違う」ということであっても、それは感覚が違うのか、それを受け止めるキャパシティの問題なのか、そもそも、「感覚」という実在を脳の中に仮定すること自体に既に思い込みがあるんじゃないか、とか、考え出すときりがありません。

そういうことを全部すっ飛ばして、「脳のなかに入った感覚が・・・」と言ってしまうのは、ある種の思考停止でもあるのですが、どうも感覚統合理論というのは、自分たちが言及している脳のなかのプロセスの「デリケートさ」に、あまりに無頓着だなあ、という印象はもちます。
Posted by そらパパ at 2009年05月29日 22:12
はじめまして、初めてコメント書かせていただきます。
少し前から、いろいろ参考にさせていただいて、本とかも購入しています。
七田式とかも、一時期はまっていたこともあったのですが、やはり違和感を覚えやめました。
今回のニキ・リンコさんの本は、久しぶりに買ってみようかなと2冊、続、続々を購入申し込みしてしまいました。
私も勉強の途中なので、どれが正しいのか迷うことも多く、冷静な判断が必要だなと思います。
以前から気になっていることで「自閉症が治った」という書き方をしている人にちょっと抗議したことがありました。
治るという言い方をすると、親としてはどんなことをしてもすがってしまいたいという気持ちがわかるからです。
その人は、アメリカの方でした。
代替療法というもので、ドイツとか、アメリカでは保険で気軽にかかれるものですが、日本ではやはり高価なもので。
カウンセリングだけで何万もして、薬みたいなものをもらいます。
一度そらパパに見てもらいたいなとずっと思ってました。
ホメオパシーって知ってますか?
最近では、自閉症のためのという講義も開催されています。
http://www.homoeopathy.co.jp/index.html
ぜひ、一度見ていただいて、意見を聞かせてぐださい。
Posted by みつき at 2009年05月30日 00:03
みつきさん、

コメントありがとうございます。

ホメオパシーが自閉症などの発達障害を「狙って」いることは既にけっこう有名な事実です。

下記リンク先をご覧になって、ご自身で判断されるのがいいと思います。判断するために十分な情報が掲載されています。

http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20081016/1224121631

まあ、私から言わせれば「よくある代替療法」の1つに過ぎないのですが、よくもまあ次から次へと出てくるものだ、と思います。(それだけお金が稼げるんでしょうね)
Posted by そらパパ at 2009年05月30日 00:40
ありがとうございました。
私の中ですっきりしました。
私の周りはすがるように、そういうものに
お金をかけようとしたり、予防接種のせいだからと受けない人もいるので、それは違うよと説明すると、すごく悲しそうな顔をされました。
私も心が痛かったので、説得しないほうがいいのかなと罪悪感さえ覚えました。
その協会も、何かあってもあくまでも自己責任でこちらは責任は取りません的な書き方をしてあります。
Posted by みつき at 2009年05月31日 16:37
みつきさん、

ご指摘の点は、とても重い問題を含んでいますね。

療育は本来、子どものためにやることなのに、親の側が「早く分かりやすい答えをもらってラクになりたいから」とか「何か頼れるものを見つけて、それにすがってしまいたいから」とか「とにかくいろいろやってる気になりたいから」といった理由で、「親のために」療育モドキに手を出してしまうということが、少なくないと思います。

ホメオパシーについては、いくつか気になる新しい記事を見つけました。

http://transact.seesaa.net/article/120587271.html
自分の生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医 -忘却からの帰還

上記は、ホメオパシーというのが「医療行為の代わりに呪術をやる(つまり医療行為を妨害する)行為だ」ということがよく分かるケースですが、それが非常に悪い形で現実に起こっていることを痛感するのが、下記のエントリです。

http://192.ikuji-de-macrobi.com/archives/50616182.html
ホメオパシー 突発性湿疹?麻疹? -育児deマクロビ 食べ物で人生が変わる!子供の心と体が本当に喜ぶ生活

http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?no=2701&reno=no&oya=2701&mode=msgview&list=new
予防接種、受ける方向に傾いています。 -ホメオパシー体験談紹介

最初の記事もそうですけど、はっきり言って正視にたえません。思わず目をそむけたくなります。子どもがかわいそう過ぎる。これは完全に「善意の虐待、悪意の業者」という構図ですね。

でも、ホメオパシーをはじめとする代替療法で「療育」する、っていうのは本質的にはこれと同じことです。
「効果が期待できること」の代わりに「呪術」をやってしまうことで、「効果が期待できること」をすることを妨害してしまう(リソースを食ってしまう)。そういう行為です。

私はよく言うのですが、「何もしない勇気」って必要なんだと思います。
余計なことをするくらいだったら、何もしない。
何もしなくたって、発達指数をフラットに維持する程度には、子どもは発達します。少なくとも悪くなるようなことをするよりはマシでしょう。
そして、余計なことをしないことで手に入れた時間で、自分にとって有益なことをして、余計なことをしないことで貯まったお金で、おいしいものを食べたり旅行に行ったりしましょう。

しっかり効果が検証できる療育に十分な時間をとって取り組んでも、余計なことをしなければ、きっと余裕は生まれます(お金も時間も)。
その「余裕」を使って、自分自身や家族全員にとって楽しいことや有益なことをやっていけば、療育そのものにも楽しく取り組めるようになるはずですよね。
Posted by そらパパ at 2009年06月01日 20:22
感覚統合は、逆トーナメント理論を想起させます。要は、甲子園の優勝校が優勝した理由は、準決勝でのピッチャー交代が奏功した、準々決勝での代打があたった、とそれぞれの理由自体は実際に存在するものの、同じようにやって負けたチームについては頬かむりして、うまくいった場合にだけ焦点を当てて全てに当てはまるかのように正当化するやり方です。
ただ、モンテッソーリ教育の本を読むと、子どもは自分で脳を育てるような遊び(ブランコ等体を揺らす遊び)をしたがるというようなフレーズがあります。これが正しいのかの検証(ブランコ遊びをしたことが無い子と、した子の発達度合いを比較する)がなされているのかはわかりませんが、確かに子どもはそういうの好きだな、という事実はあるわけで、そういう遊びを教える手法としての感覚統合が全く無意味か、についてはそうでもないなあと思います。
これで治る、等と言わなければ良いわけで。
Posted by はじめ at 2009年06月02日 21:59
今だに「キレーション」や「グルテンカゼインダイエット」「サプリメント療法」などを
肯定する本がでてくるなんて驚きました。
その上、名の通った人が推薦すると、一般の人はみんな信用してしまうんですね。
そして無駄なお金と時間をつぎ込んでしまう。
なんとかならないもんでしょうか。
Posted by あいのパパ at 2009年06月03日 06:08
はじめさん、

コメントありがとうございます。

感覚統合で提案される「遊び」は悪くはないな、というのは同意です。
「作業療法士が提供する遊びの体系化」という位置づけであれば、感覚統合「療法」をいたずらに非難する気はまったくありません。
本書やこの前の本についての私の批判は、そこに「あとづけの理論」をくっつけて、その「理論」のほうを普及させようという動きに向けられたものです。

ちょっとぼんやりした話で申し訳ありませんが、ヒトは、ものごとの結果に、どうしても因果関係を見出そうとする傾向があるようです。
そして、その「因(原因)」について、自らが能動的に働きかけたものに帰属しがちです。
さらに、私たちは過去について、快であったことは記憶し不快であったことは忘れる傾向もあります。

何らかの療育的働きかけに一定期間取り組むと、これらが組み合わされることによって、

・過去の結果について、うまくいったことだけが記憶に残る
・その「うまくいったこと」に、偶然でない原因があると考える
・その「原因」は、自分が行なった働きかけであると考える

ということが起こって、自分がやったことについて、再現性のない「療育効果」を信じてしまう、ということが起こるように思います。子どもの場合、放っておいても年相応には「伸びて」いきますから、この傾向はさらに強まるでしょう。

結果として、教育とか療育には、ちゃんと検証すれば何ら有意な効果の見られない「メソッド」が大量発生し、生き残りつづける(さらには、新たなものが生まれつづける)ということが起こるんだと思います。
ご指摘の「試合の勝因」と同様、あとづけであればどんな説明でもできますが、それを一般論として理論化するためには、検証のプロセスが欠かせないはずです。それをしないままで、影響力のある人が親とか教育関係者の前に立って「仮説」を述べるのは、メリットよりデメリットのほうがはるかに大きいと言わざるを得ません。

どうも、最近の言動を見ていると、浅見氏というのは自閉症関係者の前で「(この療法が)効く」と語ることの意味の重大さに、まったく気づいていないんじゃないかと思います。正直いって、「お肌にビタミンBが効く」といったレベルの話と同じ感覚で「感覚統合が効く」「GFCFダイエットが効く」と言っているように感じてなりません。
まあ、もしかすると、講演とかを手広く展開するために「敵」を作りたくない、というしたたかさなのかもしれませんが(正統療法系よりも代替療法系のほうが、むしろ講演とかの機会は多そうですから)、いずれにしても違和感を感じる動きではありますね。


あいのパパさん、

コメントありがとうございます。

代替療法の本は、昔も今も出続けていますし、最近はハリウッドセレブや海外の大学教授を引っ張ってくるなど、マーケティング効果まで考えた「普及活動」が広がっているなあ、という印象です。

「なんとかならないか」ということについては、残念ながら、究極的には「なんともならない」と答えるしかないかもしれません。

もちろん、できるだけ多くの方に適切な知識を持ってもらって、ある種のリテラシーを高めていくという取り組みは重要ですが、それでもやはり「治りません」といわれてしまう「正統療法」から目を背けて、「秘伝の特効薬」とか「未承認の秘薬」に飛びつく人が一定割合生じてしまうことは、必然だとも言えます。
そして、そういった「新しいアプローチ」のなかから、本当に効果のあるものが出てくる可能性も(極めて低くはありますが)ゼロではありませんから、こういったものを一律に禁止するという方向も、適切だとは言えないでしょう。

そういった現状をふまえて言うなら、少なくとも「ちゃんとした情報を知っていればそういったものには手を出さない」という人たちに対して、できるだけ幅広く、「ちゃんとした情報」を届けていくこと、これが地味ですが一番大切なことなんじゃないか、と思っています。
僭越ではありますが、このブログは、そういうものが少しでも多くの方に届けられたらいいな、という気持ちももって、続けさせていただいています。
Posted by そらパパ at 2009年06月03日 22:08
そらパパさん、こんにちは。

先日、ひとりで外出したときに1時間ほど空き時間ができたので、久しぶりに大型書店に寄りました。
発達障害・特別支援関連の本の増えたこと増えたこと!背表紙を眺めただけで時間が過ぎてしまいました。残念ながら、買いたいと思う本はありませんでしたが。

当事者が書いたという本もたくさんありましたが、私が心配なのは支援者や保護者がその内容を鵜呑みにすることもそうですが、当事者が「自分はこうなんだ」と思い込んでしまうことです。
言葉にできない(本人が気付いてもいない)自分の感情や体調・見え方聞こえ方など、『文字』という『理解しやすい』モノで示されれば、自分に起こっていることを以前読んだ文章の中から探し出して(頭の中から探し出すのは得意なようですから)当てはめてしまう。
そして周囲もそれで納得してしまう。

どうか、どうか!

当事者の方々が書かれた文章が、そんなふうに扱われませんように、願います。

また、療育(教育)効果や成長について、以前に出席した講演で児童精神科医がこうおっしゃていました。

「変化がないのは成長です。日々変わっていく世の中にいて、現状を維持しているというのは大変なことです。成長しているということです。」

Posted by のっち at 2009年06月04日 17:56
のっちさん、

コメントありがとうございます。

ご指摘のポイントは非常に重要だと思います。
ことばは便利な道具ですが、限界を内にもっています。

感覚統合「理論」だけではありませんが、目に見えない「脳のなか」に、同語反復的な概念をおくやり方っていうのは、「だまされやすい」んです。
例えば、「感覚異常があるのは、『感覚を処理する脳の情報処理』に異常があるからだ」---というのは、同語反復以外のなにものでもないですが、何となく説明された気分になってしまいませんか?
こういう「なんちゃって理論」で説明されると、少なくない人が、それが自分自身の症状であっても(つまり、自閉症の人がそういう説明をされても)、納得してしまうことになります。そして、それ以降は、自らの口から、その「理論」でもって自分のことを語るようになってしまうでしょう。

そういうことが、自閉症の人の「当事者語り」のなかには、かなり混じっているんじゃないだろうか、というのは私も感じているところです。

ことばというのは必ずしも「真実」を反映しているものではなくて、特に自閉症にかかわることについては、むしろ真実を反映していない(もしくは真実かどうかわからない)言説のほうが多いくらいなので、「自閉症についての解説」に対しては、常に疑ってかかって、その疑いが晴れなかったら信じない、くらいの心構えが必要なのですが、養育者の方にとっても、当事者の方にとっても、それは容易なことではないでしょう。

そういったなかで、「誤った理解」が共有化される流れが生まれるとすれば、それは非常に恐ろしいことで、だからこそ、私はこの本を批判しているわけです。

以前も書きましたが、私たちが子どもを伸ばす(そんな僭越な!)んじゃなくて、子どもは勝手に伸びていく、わけです。その「勝手に伸びていく」のをそっと支えて方向づけていくのが、「療育」の一義的なありかただろうと私は考えています。
Posted by そらパパ at 2009年06月04日 22:49
はじめて読ませていただいています。こちらのブログの内容の深さに驚いています。こういう見方って有るんですね。 私は、現在中学三年生の重度の自閉症の女の子を育てています。子どもをなんとか良くしたい一心で、いろんな本を読み、できる限り実践もしてきました。食事療法、感覚統合、七田式、ニキリンコさんのほんも持っています。共感できたこと、変化が感じられたこと、全然当てはまらなかったことなど、さまざまです。最近は、一人一人違うのだから、我が子としっかり向き合っていくしかないと、本を買うこともなくなりました。                           何も余計なことをしない勇気も大切だと思いました。勉強させていただきます。  ありがとうございました。  
Posted by はるちゃん at 2009年06月05日 10:43
はるちゃんさん、

コメントありがとうございます。

もちろん、「何もしない」ことそれ自体を薦めているんじゃなくて、すべての時間を「何かやっている」ことで埋め尽くさなければならない、という強迫観念から解放されることが大切だと思っているわけです。

効果がある/効果が検証できることには十分な時間をかけて取り組んで、そのうえで「余った」時間を、子どものためではなく、自分や他の家族のため(あるいは「みんなのため」)に使えば、きっと充実した毎日が送れるんじゃんないだろうか、と思います。
その「充実した毎日」によって生まれる「新しい元気」でもって、また、「効果がある/検証できること」に前向きに取り組んでいく、そういういい循環を作っていくことが、質の高い療育を続けていくためには大切だろうと思います。

※本を買うこと自体は、悪いことではないと思いますよ。(^^) いい本を読むと、新しい発見があります。

これからもよろしくお願いします。


※別のコメントへのレスになりますが、追記です。

なんか「ホメオパシージャパン」でとんでもないものが売られているようですね。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090605#p1
ホメオパシージャパンが販売する波動機器 クォンタム・ゼイロイド - NATROMの日記
Posted by そらパパ at 2009年06月05日 21:53
お返事ありがとうございます。こちらで紹介している本を読んでみようと思います。もう一つ、東田直樹君の本も持っていて、感動していただけに、ショックを受けました。でも、そらパパさんのご指摘通りなら、なぜそういうことをするのか、同じ母親として理解できないのですが・・  
Posted by はるちゃん at 2009年06月07日 18:16
はるちゃんさん、

このブログでは、「おすすめの本」と、「おすすめでない本」、両方をご紹介していますので(例えばこの記事で紹介している本は、「おすすめでない本」ですね)、レビュー記事をご覧になるときはご注意ください。

それと、東田さんの件なのですが、もちろん、私の意見も批判的に検証いただいたうえで、ご自身の判断をされるべきだと思います。

ただ、端的に言えることは、「普段はことばのない重い自閉症者なのに、母親がそばにいるだけで詩人になって、健常者に向けて自閉症論とか道徳論を語って本まで書ける」なんていうことは、もしあったら「奇跡」であり、常識としては到底考えられない、ということです。「奇跡」は、実際には滅多に起こりません。

ただ、「母親として…」の部分はちょっと難しい問題を含んでいると思っています。
FCを心から信じている人にとっては、FCによって障害をもった人や子どもが語る姿は、おそらく「真実」として映っているんだろうと思います。
そういう「世界観」のなかでは、東田さんは本当に「彼の言葉で語っている」のだろうと思います。
Posted by そらパパ at 2009年06月07日 21:39
母乳ケアしてもらった助産師さんに薦められたことがきっかけで、一時ホメオパシーをやっていたことがありました。

ホメオパシージャパンの製品は、そらパパさんが紹介されたもの以外にも、凄いものがたっくさんあります。再生するだけで部屋がシューマン共振波で癒されるCD-ROM(2万6千円くらい)とか、痛いところに当てるだけで共鳴によって痛みが和らぐペインケアクッション(2万強)とか、水道管の横に置いておくだけで、水が解毒されてまろやかになる棒(2万円強)とか、冷蔵庫に置くだけで食品の解毒をしてくれる棒…以下略とか。これらがずらずら並ぶ商品カタログを見て、アワワワワこれは単なるトンデモ療法だぁぁ、とすぐ気付けたので、逆にありがたかったです。

でもそれよりビックリしたのが、DVDに収録された講演の中で、そこの由井学長が、脳性マヒのお子さんの治療をホメオパシーでしていた時の発言です。そのご両親が、不妊治療で子宮外妊娠をされた方だったのですが、そのことに対して、「こういう元々生まれてはいけない子を、神様に逆らって無理に産むから、こういう障害が生まれるんだ」と言っていて、大勢の前でこういうことを平気で言う人間がいて、それが受け入れられる場があるのか、とショックを受けました。また、そういう思想が広がること自体が害悪だと感じ、ホメオパシーと完全に手を切るに至りました。

薦めてくる方に悪意はなく、完全に善意なだけに、性質が悪いです。
Posted by さくママ at 2009年06月07日 23:20
さくママさん、

これは以前も書いたことがありますが、ガンとかアトピーとか発達障害のように、「当事者にとって深刻な重い障害・病気」であり、「正統療法で有効とされる療法の『効き』が比較的弱く、あまり治らない」ことが多く、かつ「急性でなく、時間の経過とともに良くなったり悪くなったりする」といった障害・疾病については、劇的な改善を期待する当事者の「ニーズ」に応える形で、代替療法・インチキ療法が蔓延するものです。

そして、その「治療」を受けている期間に、たまたま「良くなるサイクル」に入る人がいたりすることで、効果が否定されずに長く続いていってしまうだけでなく、当事者の側にも「善意の支持者」を生み出していきます。

おっしゃるとおり、代替療法で本当に怖いのは、科学的根拠がないのに「効く」と主張する「治療者」の側ではむしろなく、実際には効いていないのに「効いている」と信じている、「善意の当事者」の存在だと思います。
そういう「善意の人」と「闘う」のは本当に辛いことですし、それが一定規模の勢力になると、社会や行政をこれを認めざるを得なくなります。
さくママさんご指摘の「ひどい物言い」も、無邪気に信じる「善意の人」がたくさん現れれば、「そういう考えかたもある」みたいな流れになってしまって、それと「闘う」ために膨大な労力が必要になってしまうわけです。これは、かつて自閉症児の親も(冷蔵庫マザー説により)経験していることです。

逆にいえば、こういう「善意で信じる当事者」をいかにたくさん作るかが、代替療法サイドがビジネスを成功させるポイントになってくるわけで、そういう意味では自閉症のように「偏りをもちつつも、時間がたてばそれなりに伸びていく」障害というのは格好のターゲットになりえます。
さらに「そういった効果を語るのが、本人ではなく親である」ということによって、プラセボ効果に加えて、観察者バイアスやピグマリオン効果まで影響を与える可能性が出てきますから、ぶっちゃけ、「自閉症の代替療法は、どんなインチキであってもすべて効くように見える」と言い切ってしまってもいいくらいです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%BD%E8%96%AC#.E5.81.BD.E8.96.AC.E5.8A.B9.E6.9E.9C
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%B3%E5%AF%9F%E8%80%85%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B9#.E8.A6.B3.E5.AF.9F.E8.80.85.E3.83.90.E3.82.A4.E3.82.A2.E3.82.B9
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%8A%B9%E6%9E%9C

ちなみに、ホメオパシーの宣伝に、「海外では政府が認めている」といったものがよくあるようですが、その辺りの事情についてはここが詳しいです。

http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%A5%DB%A5%E1%A5%AA%A5%D1%A5%B7%A1%BC


助産婦さんの間ではホメオパシーはかなりポピュラーなようですね。
マーケティング的にいえば、助産婦業界は「病院で出産」とは異なるポジショニングをとるために、どうしても「アンチ現代医療」的な立場にならざるを得ないところがあると思いますので、ホメオパシーとは相性が良くなるのでしょう。
Posted by そらパパ at 2009年06月08日 20:53
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花風社・浅見淳子社長との経緯についてはこちらでまとめています。