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2006年01月23日 [ Mon ]

TEACCHを考える(8)

TEACCHについて書いてきたこのシリーズ記事、今回で一旦終わりです。

前々回、TEACCHの基本理念について書きましたが、実はこの内容は、ただTEACCHの概要というよりは、TEACCHの骨格(基礎)のかなりの部分を網羅したものになっているのではないか、と感じています。

TEACCHに、科学のような「基礎」と「応用」というジャンル分けを考えるとすれば、「基礎」の部分については、前々回の「基本理念」の説明以外に残っているのは、大きなところでは、自閉症の認知障害の具体的内容くらいだと思います。つまり、

・自閉症児の先天的な脳の損傷とはどのようなものか
・自閉症の認知プロセスの障害とは具体的にどんなものか
・その結果として、自閉症児はこの世界に適応することに対しどんな困難を抱えているのか
・そのような障害の中で認知スキルを発達させるためにはどのような刺激が適切なのか
・自閉症児が強みを持っている認知力というのは存在するのか
・強みがあるとすればそれを代償的に活用して発達水準を引き上げる可能性はあるのか


こういった研究を進めることによって、何をどのように構造化すべきか、あるいは課題の選択といった実際の療育の効果を高めることができることから、これらはTEACCHに関する「基礎研究」であると言えるでしょう。

そして、この領域はTEACCHというよりはむしろ認知心理学の守備範囲であり、TEACCHの世界から離れて知識を深める、あるいは独自に研究することができる分野です。
(実際問題として、認知心理学の最前線における研究は、TEACCH本で語られている内容よりもかなり先を行っていると思います。この分野における私なりの考察も、今後書いていきたいと思っています。)

それ以外の「応用」に関連する部分については、2つのレベルに分けて考えたいと思います。

まず、構造化の具体的ノウハウ、絵カードなどを使った「視覚化」、作業課題の準備の仕方や実際の進め方といった、課題の実施にあたっての療育のやり方については、前回概要をまとめましたが、「自閉症児のための絵で見る構造化」が非常に有用な参考書になります。以前ご紹介した、「講座 自閉症療育ハンドブック」を含め、他のTEACCH本にも具体的事例がいくつも出ていますので、これらの一般書レベルを研究することで、少なくとも家庭における療育のために必要なノウハウは十分に得られるものと思います。

そして最後に残る、具体的な個別の療育メニューの作成については、これまでも書いてきたようにTEACCH本はほとんど語ってくれません。この部分だけは、TEACCHの効果を最大限に引き出すためには、経験を積んだプロのTEACCHスタッフのサポートがぜひとも欲しいところではあります。
しかし、それが得られないから自分にはTEACCHは縁がない、ということではない、と思います。
TEACCHにおいて、具体的にどんな課題を設定するかは療育者に任されている部分が大きく、極論すれば、TEACCHの基本理念に反していない限りどんなメニューを作ってもいい、と言えます。

「基本理念に反していない」とは、例えばコミュニケーションスキルが伸びていないのにことばを教えるとか、問題行動を対処療法的に禁止しようとするとか、障害が重く適応状態が悪いのに無理に統合教育に放り込むといった、そもそもTEACCHの考える自閉症児像、療育方針に反するメニューを作らないということを意味しています。

TEACCHには専用の発達テストがあり、このテストで「芽ばえ反応」と呼ばれる、発達しつつあるスキルに着目して療育メニューを作成するという手順がとられるわけですが、この部分については、行動療法におけるスモールステップの考え方や「太田ステージ」の考え方のように、発達や学習についての仮説をもとにできることから順番にやっていくという、いわば療育プログラム作りにおいては常識といえる手法を体系化したものだといえます。
ですので、発達段階についての明確な仮説を持ち、それにしたがって無理のない着実な療育メニューを作ることができれば、この部分についての「TEACCHの目指す方向性」もある程度満たされると考えられます。

つまり、療育に対するある程度体系化された知識と経験を積んだ親御さんにとって、TEACCHの考える療育を家庭で実践することは十分に可能である、ということです。

前回解説したように、TEACCHの基本理念は自閉症児に対する深い愛情と配慮、自閉症児を幸せにしようという前向きな意欲に満ちています。
例えばTEACCHと並び称されるABAに基づく多くの行動療法的アプローチが、どうしても「親の望むように子どもを変えていこう」という、どちらかというと親や大人の立場から構築された療育法であるのに対して、TEACCHは徹底して「自閉症児の側」に立っています
この違いの大きさは、いくら強調しても強調しすぎることがない、TEACCHの本当に素晴らしい点だと考えています。
仮に、TEACCHのサポートを最も理想的な形で受けられないとしても、やはり親は自分なりに一生懸命療育の仕方を学んで、その上で、TEACCHの崇高な理念を日々の家庭の療育に生かしていくべきだと思うのです。

posted by そらパパ at 20:43 はてなブックマーク | コメント(2) | トラックバック(0) | 理論・知見
この記事へのコメント
はじめまして、双子の四歳男児がともに精神延滞と自閉症ですが、行政や病院での療育には疑問や限界を感じはじめ、わからないことだらけながらも「これは!」というセミナーに出たり、本やネットを読みあさる毎日です。
しかしながら、あまりにも自閉症の専門家は少なく、信頼できるあらたな療育先はそうそう見つかるものではありませんでした。もう、親が専門家なみに勉強して自分で療育するしかないのか?とがっかりする毎日でした。TEACCHは「本当のTEACCH」を先ごろ読みまして、深く感銘を受けました。でも、日本では無理なんだろうなぁ〜とあきらめ気分で、ネット検索しておりまして、
こちらのそらまめさんのブログにたどりついたわけです。
すごいです!今はまだTEACCHのところしか読ませて頂いてないのですが・・・
全部読んだら、ほんとすごそうですねぇ。
ただ(へんな言いかたですが)で、いいのでしょうか?ってかんじです。
これでまた、なんとかがんばれそうです。
ありがとうございます。
Posted by ちかぶん at 2007年06月13日 11:50
ちかぶんさん、はじめまして。

自閉症児の子育ては、本当に大変ですね。(特に、2人の自閉症児を育てるというのは、想像を絶する大変さだとお察しします。)
でも、子どもだけでなく、親も「見通し」を持って子育てにとりくめれば、きっと気持ちが軽くなると思っています。

当ブログは、大学時代にちょっと心理学をかじったアマチュアである私が書いていますので、あくまでも参考程度に読んでいただきたいと思いますが、もしもお役に立つ情報が少しでもあればうれしく思います。
Posted by そらパパ at 2007年06月14日 09:27


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