2009年02月02日

マイコン制御のLEDタイマーの自作(1)

もう少し温めておこうかと思っていましたが、ちょっとした事件もあり、これも今取り組んでいることをお伝えするいいきっかけかもしれないと考え、予定を繰り上げて記事を公開することにしました。

今回は、これまでとはちょっと毛色の違うシリーズ記事になると思います。

このシリーズ記事では、自閉症児の「時間の構造化・視覚支援」に役立つ「電子式タイマー」を電子工作で自作するという企画をとりあげます。
もちろん、私だけが勝手に作るんじゃなくて、興味をもっていただいた方にも作っていただけるよう、回路図や配線図も公開しますし、必要なパーツをセットにした「製作キット」も頒布しようと思います

今回作るタイマーの概要ですが、

・「たくさん点灯しているLED(発光ダイオード)が、時間とともに消えていく」という電子式タイマーです。(タイムタイマー的な視覚化タイマーの電子版という感じです)
・LEDの数は、全部で64個と、かなり多めです。
・LEDの制御は、よく家電などでも使われている「マイコン制御」とします。
・入力は押しボタンスイッチ1個(これで時間を設定します)、出力としてはLED以外にブザーをつけて、時間がきたら音が出るようにします。
・お子さんの多様なニーズを考慮し、表示パターンや音の有無など、さまざまな設定変更ができるようにします。
・電源は006P電池(四角い9Vの電池)を使い、携帯できるようにします。
・配線はユニバーサル基板を使い、部品点数も最小限として、はんだごてを握った経験のある方なら製作にチャレンジできるシンプルな回路とします。


自閉症児むけ電子タイマー
↑実際に製作した電子タイマーです。ソフトウェアの最終調整中ですが、既にタイマーとして動作しています。部品点数が非常に少ないのが分かると思います。(裏面は配線だけで、部品はついていません。部品はこれだけです。)

自閉症児むけ電子タイマー 回路図
↑この電子タイマーの回路図(一応完成版)です。PICマイコンの各ピンに部品を直結しただけの、とてもシンプルな回路です。

自閉症児むけ電子タイマー 配線図等
↑この回路を実際に製作するための、部品一覧・基板配線図・部品配置図です。部品は少ないのですが、ピンの数がマイコンで20本、マトリックスLEDに16本ありますので、基板裏面の配線だけはちょっと複雑です。
 ※2009/2/18 PDF差し替えました。

使用している電子部品は、現時点ですべてパーツ屋さんの通販で容易に購入できるものばかりですので、同じパーツを集めて同じ回路を組めば、同じものを製作することが可能です。
ただ、これは「マイコンタイマー」ですので、搭載しているマイコン(写真の右のほうに写っているICで、プログラミング可能なコンピュータの一種です)に別途プログラムを書き込まなければ、部品を組み立てても動作しません。

現時点では、そのプログラム(ソフトウェア)の開発もほぼ終わっており、新しい機能を追加したり、細かい調整とバグ(プログラムの不具合)の洗い出しを行なっている段階です。
プログラムについても、完成次第、ソースファイルを公開する予定です。

また、ソフトウェアが完成した段階で、工作に必要な電子部品一式と、タイマープログラムを書き込み済みのマイコンをパッケージした「製作キット」を、音楽CD1枚程度のパーツ代(予定)にて頒布したいと考えています。もともとの製作動機が「市販品は高すぎる」ということでもあったので、できるだけ少ない部品で安く作ることを考えました。

なお、完成品のタイマーの頒布についてのニーズも間違いなくあると認識してはいるのですが、基板の配線にそれなりの時間がかかり、また私のような素人のはんだ付けでは品質を保証できないので、申し訳ありませんが「完成品」をご用意する予定は、現時点ではありません。はんだごてを握ったことのないお母さんは、ぜひ「お父さん」にでもお願いしてみてください(^^)。

製作にかかる時間は、私が作った場合で、部品のはんだづけと配線で1台あたり5時間程度ですが、面倒な処理はみんなマイコンが担当する形になっていますから部品点数も多くありませんし、趣味の工作・休日のチャレンジとして、楽しんで取り組める程度の作業量におさまっていると思います。

できるだけ早くプログラムのほうも完成させて、「製作キット」もリリースしたいと考えていますので、ぜひご期待ください。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:39| Comment(7) | TrackBack(0) | オリジナル教材 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 JKLpapaです。ご無沙汰しています。最近ROMばかりでした。すみません。
 しかし、すごいですね。私はエンジニアですが、ここまでやろうとは思いませんでした。さすが、そらパパさんですね。自分で作っちゃうなんて。市販品も今ではいろいろありますが、自分の子供用にカスタマイズすることを考えると、最初から作るのもありですね。お怪我だけは気をつけて。
Posted by JKLpapa at 2009年02月03日 14:37
特別支援学校に勤務しています。
そらまめパパさんのブログは毎日読んでいます。本もとても参考になりました。

今回の電子タイマー、本当にほしかったモノです。(実際タイマーをいろいろ試しているのですが、目に見える形で音もしっかり伝えられるものが見つかりません。
制作キット完成されたら、ぜひ学校で試してみたいと思います。
よろしくお願いしますm(--)m
Posted by miyamoto at 2009年02月03日 17:22
皆さん、コメントありがとうございます。

JKLpapaさん、

この辺りの「きっかけ」は今後の記事で書こうと思っていますが、私は電気のほうはほとんど知識がなかったんですが、プログラミングはかつて趣味でやってました。
なので、「プログラミングを中心に構成できる電子工作がある」という事実を知って、それなら何とかなるかも、と思って挑戦してみたという感じです。(プログラムのほうはアセンブラで2000行を超えるボリュームになっています。)
電子回路のほうはまだ分からないことが多いので、アドバイスなどいただけると嬉しいです。(さっそくmiyamotoさんの音に関する部分で回路の改造の話題が出てきますね。)

miyamotoさん、

どのくらいご期待にそえるものになるか自信がありませんが、プログラムで対応できる内容であれば、新しい機能を追加したりすることも含めて、ご要望にもお応えできることもあると思います。

ちなみに音は、アンプに相当する部分がないので、このままですとかなり控えめです。
にぎやかな場所で使うには、トランジスタを1個入れて増幅するなど、多少の改造が必要になるかもしれません。でも、そういった改造も簡単にできるのが、自作キットのいいところだと思います。
Posted by そらパパ at 2009年02月03日 23:13
はじめて書き込みをさせていただきます。
 特別支援学校で自立活動専任をしているものです。シンプルテクノロジーを活用した肢体不自由のある子ども達のためのスイッチや機器を個人的に研究しているものです(振動するおもちゃをATAC等でポスター展示してます)。同時にコミュニケーション支援としてのシンボル作成等も校内で担当しています。
 当ブログはいつも参考にさせていただいているのですが、そらパパさんが電子系等にもお強いとは……機器は子ども達の支援に有効なものですが、高価で学校や生活場面で実践するほど数をそろえることができません。VOCAについても同様です。そこで秋葉の秋月電子で手に入る音声再生キット(550円)を使うと安価で作成可能で、結構校内で当たり前に活用できるようになりました。
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-00912/
 タイムタイマーでも同様にできないかと探していたところ、そらパパさんの開発品を見て驚きました。是非参考にさせていただきます。ありがとうございました。
Posted by tosugi at 2009年02月04日 14:14
tosugiさん、

はじめまして。
コメントありがとうございます。

電子系は強くないです。今回は電子系を最小限にして、プログラムのほうでガリガリやるというアプローチでやっています。
プログラムのほうは、かつてオセロの先読み思考ルーチンやゲーム制作用スクリプト言語(言語そのもの)を自分で書くくらいのところまでやりこんでいたので、今回は初めてPICマイコンのアセンブラに挑戦しましたが、意外にスムーズに入っていけました。命令数がたった35しかないのであっという間に覚えられますね!

http://homepage1.nifty.com/rikiya/software/302picreg.htm

秋月のキットは私も趣味で買いますが、ケースに入れるところが考慮されていないので、きれいに仕上げて耐久性をもたせるときには、そこがけっこう難関になることが多いですね。
今回は秋月のキットというわけではありませんが、マトリックスLEDをはじめとして、秋月さんの部品はたくさん取り入れています(多分半分以上)。ケースに入れるところはやはり難しいなと感じていますが、とりあえず、電源や入出力系もふくめてすべて基板に固定する形にはできたので、あとはこれをベースにして、そのままケースに入れたり、ケース加工をしてスイッチ類等をそちらにつけたりといった工夫がいろいろできると思います。

PICマイコン用のプログラムのソースファイルはいましばらくお待ちください。一度完成したのですが、そこからまた機能をいろいろ追加したので、改めてデバッグ作業を続けているところです。ただ、ソースファイルの長さが2000行を超えてきましたので、解読するのは結構骨が折れるかもしれません。
Posted by そらパパ at 2009年02月05日 21:49
 返信感謝です。障がいのある子ども達とシンプルテクノロジーとAACとの関係、すなわち機械と人との繋がりという視点が、工学の新しい切り口として感性工学という領域を作り出しているようです。私が住んでいる理科系大学にもそういう学科があり、そこで主催しているイベントに仕事仲間とともにセミナーをやりました。http://www.kanseisangyo.org/matsuri08.pdf
 その会を運営している研究会があり、農業、教育、街作り等々(何でもあり(^_^;))の異業種からの参加がたくさんあるのですが、その中に時計メーカーの方がおられるのでタイムエイド系の機器を安価にできるだけ簡単に作成できないかと相談しています。
 またそこでの進展等もあったら報告させていただきます。
 ありがとうございました。
 
Posted by tosugi at 2009年02月06日 14:29
tosugiさん、

情報ありがとうございます。
私が作っているのはLEDを使ったタイマーですが、個人的には、LCDを使ったタイマーがあると面白いんじゃないかな、と思っています。


若パパさん、

はじめまして。
コメントありがとうございます。

ブログのコメント欄というのはまさにコミュニケーションのためにありますから、ご意見やご質問など、どんどん書き込んでいただければと思います。
携帯電話でこの文章量を読むのは大変だと思いますが(^^;)、意外と携帯で読んでいらっしゃる方は多いようですね。
これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2009年02月08日 22:31
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