(ネットのニュース記事はすぐに消えるので、全文引用させていただいています)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090126-OYT1T00592.htm
障害者作業所にも不況の波…仕事減り、社会と接点失う恐れ
大手自動車メーカーが減産を進める中、自動車関連の業務を請け負っている障害者の職場でも、仕事が減っている。
世界的な不況の波は、障害者の社会参加をも脅かしており、全国社会福祉協議会では、関係する授産施設を対象に、不況の影響について近く全国調査を行う方針だ。
東京都大田区の授産施設「とちの実作業所」には、軽度の知的障害者など20人が通う。安定して請け負ってきた仕事が、北米向け乗用車の座席に入れる消音用カバーにゴムひもを通す作業。1か月の作業所全体の平均収入約23万円のうち、この仕事を発注する部品メーカーからの収入が多い時は半分近くを占めていた。しかし、昨年10月以降はこの仕事の注文が激減し、12月の納品を最後に注文がなくなった。
「金融危機でアメリカの仕事が減っちゃってね」。施設長の黒田浩康さん(47)は通所者にそう説明するしかない。通所者に払う「工賃」は、昨秋までは月約1万円だったが、11月は約9000円、12月は約7000円。「元々少ないのに、申し訳ないの一言」と黒田さんは話す。
通所者の一人、笹川正一さん(55)の月々の収入は、工賃や障害年金、区から出る福祉手当で約9万3000円。グループホームの家賃や光熱費などを差し引くと、手元に残るのは1万2000円前後で、この中から、グループホームの食事が出ない週末の食費や洋服代などを工面する。週末の食事は100円均一のコンビニ店のおにぎりやパンで済ませているという。
「作業所は、人とのかかわりや金銭管理などを訓練する場でもあり、明日こんな仕事があると楽しみにしている人もいるのに」と黒田さん。車の座席カバーにひもを通す別の仕事などを続けているが、発注側からは「注文量が少ないからあまり急がなくていい」と言われているという。
愛知県小牧市の「すずかけ共同作業所」では、知的障害者など通所者約15人が、トヨタ車の窓ガラスを梱包(こんぽう)する段ボール製の緩衝材を作っているが、昨年11月中旬以降、1日の製作個数が半減して600~700個に。今月から、単価も16円から10円に引き下げられた。
多い月で40万円ほどだった作業所の収入が12月は25万円。工賃カットも検討せざるを得ない。作業所に20年ほど通う吉川光男さん(56)は「自動車業界が大変なのは分かるけど、工賃が減るのは困る」と不安そう。指導員の光岡秀昌さん(44)は「『役立っている』という気持ちが彼らの支えなのに、散歩などで時間をつぶす必要が出てきた」と話す。
不況が授産施設に与えている影響について全国調査を予定している全国社会福祉協議会は、「企業が決算期を迎える年度末に大きなしわよせが来る恐れもある」と、障害者の生活が深刻化することを心配する。全国の共同作業所などで作る「きょうされん」(東京)も、「仕事が減って給料が出ないと、障害者が通所しなくなり、社会との接点が断たれてしまう可能性がある」と危機感を強めている。(2009年1月26日14時48分 読売新聞)
途中に収入が40万から25万というのが出ていますが、これ、1人分ではなくて「通所者15人+経営者」の作業所全体です。もちろん補助はあるのでしょうが、景気変動に対するバッファーがなさすぎだという感は否めません。
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/koyou_houkai/list/200901/CK2009012502000176.html
障害者も解雇急増 企業側「責任あるが…」
不況の波は障害者にも-。民間企業に就職した障害者の解雇が急増し、相談が相次ぐほか、新たな働き口を求めて就労訓練に逆戻りするケースも出てきた。2006年の障害者自立支援法の施行や、障害者雇用促進法の改正でようやく根付いた障害者の働く場にも、景気の荒波が及んでいる。
長野県北信地方の家電解体会社に勤めていた精神障害のある男性(30)は昨年の初めから、初めて1日8時間のフルタイムの仕事に就いた。しかし突然、会社の業績悪化で、昨年9月いっぱいで解雇された。9カ月間働き、生活への自信を感じ始めたころだった。
「経営状況が理由なので仕方なかったが、早く職場に戻りたい」と男性。失業保険を受けながら、就業訓練として紹介を受けた地元の老人施設で清掃の業務に就いている。就職のため、パソコン講座にも通い始めた。
長野市で障害者の就労を支援する社会福祉法人「ともいき会・ウィズ」には、この男性を含めて昨年末までに4人が戻った。市内の製造業などで正社員として働いたが、下請けの製造業を取り巻く環境は厳しく、辞めざるを得なかった人たちだ。センター長の越川睦美さん(57)は「企業も泣く泣く切る、という感じだった。企業の存続か雇用かの選択で、それだけ事態は深刻化している」と話す。
同じく、障害者の就職訓練などに取り組む名古屋市障害者雇用支援センター(熱田区)によると、昨年11月末以降、障害者や家族らから「解雇された」といった相談が十数件、寄せられた。
就業のための訓練も、定員(30人)を上回る状態が続いており、数カ月待ちの状態という。宮崎潔所長(57)は「解雇された人は製造業のほか小売業が一部あった。学校を卒業して就職したばかりの人が目立ち、落胆が大きい」と話す。
障害のある女性パートを解雇した中部地方の製造業人事担当者は「企業として(雇用の)責任はあるが、致し方なかった」。この会社では、受注が途絶えて工場の1つを閉鎖に踏み切って、障害者を含む従業員11人を解雇。「ここまで冷え込むと、自助努力ではどうしようもない」と嘆く。
国や自治体は企業への助成制度を設けて障害者の雇用機会の拡大に努め、昨年末には国が緊急的に助成を増額。しかし、助成金を返還してでも雇用を断たなければならない現実を、企業側も抱えているようだ。
倉知延章・九州産業大国際文化学部教授(障害者雇用)の話…不況で障害者の雇用を支えきれなくなった今こそ、企業に対する国の支援体制が必要だ。障害者への支援はいろいろとあるが、障害者を受け入れる企業に、雇用を継続できる環境を整えられるような仕組みが求められる。(2009年1月25日 中日新聞)
これも、選択肢が極めて限られる人に対する行政のセーフティネットはこれで本当に十分なのか、ということを深く考えさせられるニュースです。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/73332
福祉作業所 存続ピンチ 佐賀・江北町のNPO法人 不況で収入源の受注打ち切り 運営費大幅減「弱者にも目を」
急激な景気悪化のしわ寄せが、地域の障害者のよりどころである授産施設にも及んでいる。佐賀県江北町の特定非営利活動法人(NPO法人)「障がい者福祉作業所・ギャラリーちゅうりっぷのうた」では、収入の柱だった自動車部品関連の請け負い作業が、メーカーの販売不振で今年打ち切られた。作業所の本村容子理事長は「社会的弱者に突き付けられた現実の厳しさに途方に暮れてしまう」と肩を落とす。
作業所は、小学校教諭として障害児教育に取り組んだ本村理事長が退職後の2003年4月、巣立った子どもたちに働く場を提供しようと、保護者らと私費を投じて開設した。現在は20‐50代の知的障害者8人が通所する。
保護者の紹介で、開設時から同県武雄市の自動車部品関連会社から仕事が舞い込んだ。パワーウインドー用のモーター部品などを工場で検査しやすいよう、ケースに並べ直す単純作業。多いときは月60万個をさばき、約6万円を得ていた。
ところが、昨年末に会社から連絡が。「注文が激減し、仕事を頼めなくなった」と頭を下げられた。会社側も雇用調整を余儀なくされたという。
本村理事長は「通所者たちに伝えられなかった」と振り返る。通所者たちは年明けも朝から黙々と作業の準備をした。しかし、仕事がなくなったことにはすぐ気付いた。
作業所の運営費は年間約400万円。うち障害者のための町からの地域支援センター事業予算約300万円を除く約100万円を、作業の収入で賄わなければならない。現在は菓子箱の組み立てや、端切れを縫い合わせたバスマット作りでしのぐ。ただ、1枚約300円の収入となるマットは、1人が3日で1枚仕上げるのが精いっぱい。以前のような収入は望めない。
「(これまで仕事を回してくれた)会社には感謝の気持ちでいっぱい」と話す本村理事長だが、今は景気に左右されにくい農作業をさせることを考えているという。「政府や自治体は派遣労働者だけでなく、さらに弱い立場の障害者にも目を向けて」と訴える。(2009/01/26付 西日本新聞朝刊)
いまの日本の現状だと、知的に重い障害をもっている人(私の娘もそうですけど)に、「成人後の社会のなかでの居場所」を提供しようと思うと、たまたまそういう環境がある場合を除けば、それこそ私費を投じて作業所を作るくらいしか選択肢がないと思います。そういった作業所を作ったり、そこの運営に携わる人を動かしているのは、それこそ「志」だけでしょう(利益なんて出るわけがないですから)。
その「志」が、こんな風にあっさりともろく崩れそうになってしまう現状(年間100万円の欠損を「私財」で埋めるような対応は、仮に運良く多少続けられたとしてもまったく「継続可能」ではないわけです)には、本当に言葉もありません。
どのニュースについても、いろいろな議論をする前に「ここで翻弄されている人たちは、あらゆる意味において『選択肢がほとんどない』人たちばかりなんだ」ということをふまえなければならない、と思います。つまり、「翻弄されているという結果責任」を議論する、そもそもの前提となるであろう「機会の平等」が与えられていない人たちなわけです。
そのことを考えたとき、この現状には、どうしても、「福祉行政の不毛・制度的欠落」を痛感せざるを得ないし、「なんかもうちょっと税金の使いかたを工夫してくれよ、せっかく払ってるんだから」とも言いたくなるわけです。
重度知的障害をもつ娘の父親として、私自身、長期的な療育のビジョンとして「成人後の社会のなかでの居場所をどうするのか」ということを常に模索しています。
娘には、社会と幸せな形でかかわりをもちつづけて、一生を全うして欲しい。そのためにできることをいろいろ考えているわけですが、これらニュースが炙り出す「現実」には、本当に幻滅させられ、絶望的な気持ちにもなります。
障害をもった人、なかでも重度知的障害者が「幸せに一生をまっとう」できるような継続可能な社会のモデルを、右肩上がりの経済を前提とせずに構築すること。
簡単なことではないと分かってはいますが、障害者福祉行政に携わるプロの方々(つまり、障害者福祉行政に携わることで私たちの税金をサラリーとしてもらっている方々)には、真剣に真剣に考えていただきたいと思うのです。
もしかするとそれは、障害者自立支援法が無条件の前提としている、「自立=就労」という図式以外のところにあるかもしれません。そういったところにまで踏み込んで、改めて問題意識をもって、障害者福祉行政を改革していかなければならないんだと思います。
「自分でやらず、人にやってもらうこと」についていろいろ語るのはあまり本位ではないのですが、次々と飛び込んでくるニュースを放っておくことができず、あえて書かせていただきました。
http://news.cabrain.net/article.do?newsId=22359
授産施設や作業所の受注減、工賃にも影響―東社協調査
東京都社会福祉協議会はこのほど、都内の障害者授産施設や福祉作業所に対し、作業の受注状況などのアンケート調査を行った。調査結果によると、製造業の企業から作業を受注している施設や作業所の7割超が、この半年間で「受注が減った」と回答。作業量が減ったり、工賃が下がったりするなど、影響が広がっていることが分かった。
調査は4月下旬から5月上旬にかけて、都内の障害者授産施設や福祉作業所など567か所に対して行い、236か所から回答を得た。回答率は41.6%。
調査結果によると、企業などから作業を受注しているのは189か所。このうち、この半年間の変化として「受注が減った」と回答したのは118か所で62.4%だった。特に「製造業」から受注している129か所の施設や作業所では、73.6%の95か所が「受注が減った」と回答した=グラフ=。
受注が減った施設や作業所などが行っている作業内容は、▽部品の組み立て▽ダイレクトメールやパンフレットの封入▽箱の組み立て▽サンプルづくり―などだった。
また、「受注が減った」と回答した118か所のうち65.3%が「利用者が行う作業が減っている」、54.2%が「利用者の工賃が下がっている」と回答。一方、「利用者の通う日数を減らしている」と回答したのは1.7%だった。東社協では、施設や作業所は利用者に「日中活動」を提供しており、作業がなくても利用者が通って来ることになるとした上で、「その過ごし方をいかに工夫し、利用者にとって通うことのモチベーションを下げないかが課題」と指摘している。
また、クッキーやパンなどの食品や木工製品、織物など独自製品の製作や販売を行っている施設や作業所など188か所のうち、この半年間の変化として「原材料に掛かるコストが高騰している」と回答したのは53.2%。一方、「コストは特に変わらない」は31.9%で、「コストが下がっている」と回答した施設や作業所はなかった。
製品の売り上げは、「減っている」が30.3%、「変わらない」が46.9%、「伸びている」が12.8%だった。