これでわかる 自閉症とアスペルガー症候群
監修:田中 康雄、木村 順
成美堂出版
自閉症・アスペルガー症候群とは?
自閉症やアスペルガー症候群は心の病気ではない
しつけが悪いのではない
発達障害は脳の機能障害と深い関わりがある
発現には遺伝子が関係している?
自閉症スペクトラムとは?
グレーゾーンの子どもたち 他
うちの子、なんだか育てにくい
人と視線を合わせない
親から離れてします
音や肌に触れるものに敏感
パニックを起こす
友達の輪に入らない
姿勢のくずれ、運動能力が低い 他
相談先とケア
サインが出る理由を理解して、早期対応を
始めて受診するときのポイント
自閉症・アスペルガー症候群の診断のつけ方
診断は「療育」の始まり
障害受容に向けて
納得できる相談先を数多く見つける 他
症例別アドバイス
言葉の遅れが気になる
問題行動が気になる
身辺自立が遅れている
触覚防衛・聴覚防衛が目立つ
姿勢のくずれ・不器用が気になる
コミュニケーションがうまくいかない 他
保育園・幼稚園・小学校との協力
親から教師への効果的な伝え方
モンスターペアレントなんて言わせない
従来の教育法にとらわれず、個性を伸ばす
その子の行動の前に存在を受け止める 他
進学・就労・社会的支援
しっかり調べて子どもに適した環境選びを
子どもの意思をふまえた選択を
就労するための選択肢
暮らしを支える施設サービス
障害者手帳を申請するには
自立して生きていくために
自閉症・アスペルガー症候群の子どもを育てて
うちの子にとっていい教育が学校にとってもいい教育
彼らのほうからこちらを見ると何をすべきかわかる
周囲に援助を求めることは、悪いことではない
外に発信することが大事。するといい人に巡り会える
周囲に適応させることより、本人の気持ちを尊重して育てたい 他
ここ1年くらいでいくつか登場した、1000円台の実用書シリーズでの自閉症と療育の入門書に、また新たに1冊の本が登場しました。
既に似たような本はいっぱい出ていますし(過去の紹介レビューはこちらやこちら、新書サイズの入門書でのおすすめならこちらなど)、屋上屋を重ねるような感じかな、と思って読んだのですが、ちょっと他の本とは毛色が違っていて面白いな、と思いました。
というのも、本書の視点は「自閉症の研究者」とか「療育(だけ)の専門家」からのものじゃなくて、「発達支援センターの相談員」的なものになっているからです。
自閉症の入門書は、自閉症という障害がどんなもので、子どもに対してどんな風に働きかければいいのか、といった「理解と療育」といった構成になっているものが多いのですが、本書の場合は、その辺りの「自閉症の一般的知識」についてはあっさりしている一方、「どんなサインがあると自閉症の疑いが強いのか」「子どもの障害の受容」「どこに相談すればいいか」「当面の困った行動にどう対応すればいいか」「学校や地域とどう折り合いをつけていけばいいか」といった記載が豊富で、「働きかけ・取り組みを始める」よりもさらに前の、「よくわからない、とにかく誰かに相談したい」といった親御さんのニーズに対応するものになっている印象です。
療育についても簡単に触れられていますが、監修者の一人が作業療法士ということもあり、感覚統合療法が中心になっています。具体的な技法としては感覚統合療法は悪くないですし、こういった入門書で感覚統合がとりあげられるのは珍しいと思うので、その点でもユニークです。
今までの「自閉症入門書」とはちょっと目線が違っていて(つまり、守備範囲が違っていて)新鮮です。
「子どもに何をさせるか」よりも「親として何ができるか」ということを中心にまとめてあるので、こういった本を初めて読むという方だけでなく、いろいろ自閉症の本を既に読んでいるという方(私を含む)にも、意外と?学ぶところ、考えさせられるところのある内容になっていると感じました。
値段も手ごろですし、イラストも多くて気軽に読める内容になっていますので、興味があれば一読をおすすめします。
(これはよく見ないと気づかないですが、本書はイラストの構成・「説明力」がなかなか秀逸です。イラストだけざっと見るという読み方もOKです)

なお、上記のように、「子どもへの具体的取り組み」については必要最小限の内容になっていますので、この本を読んで「親としての取り組み・考えかた」を学んだら、あわせて「子どもへの具体的な家庭での療育」についての本も読まれることをおすすめします。幸い、そういった目的にぴったりな非常によくできた本(当ブログ殿堂入り)が最近出ています。
※その他のブックレビューはこちら。また、本書については改めて詳細レビューを書く可能性があります。
感覚統合について詳しいのもおもしろい視点と思いました。QA的に解説されている自閉症の特性への対処について、「ボディイメージ」の観点での答えが多いなという印象でした。一理ある、というか、生活実感として納得する部分がありますが、初めて自閉症入門本としては、やはり佐々木先生の「自閉症のすべてがわかる本」などで他の観点も押さえておいたほうがよいような気がしました。
それにしても、自閉症と特別支援教育のコーナーの本の多さには驚きました。普段行く本屋にはこれほどの量はないので。
色々手にとって見ましたが、とても自分で選べる量ではなかったです。
そらパパさんのブックレビューはとても助かります。(トンデモ本の見分け方についても)
ブックレビューで書かれていた本で、よさそうなのもチェックできました。また、改めてレビューから注文したいと思います(笑
鈴蘭さん、
私は通勤の電車のなかが一番の「読書タイム」です。(ですので、大判の本はなかなか読めません(^^;))
これからも、読んだ本についてはできるだけレビュー記事を書いていきたいと思いますので、よろしければ参考にしていただけるとありがたいな、と思います。
ピッカリママさん、
ポイントを押さえたコメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、この本は「感覚統合」で自閉症を語っているので、先日レビューした「続・自閉っ子」と同じような、「感覚統合理論用語」がところどころで出てきます。
ただ、こちらの本については、本当に自閉症ということを学んでいく「入口の入口」に立っている人が想定読者だと思うので、それであれば、直感的に理解しやすい「感覚統合理論」で自閉症をとりあえず全体として理解してしまうのもアリだろうな、と感じているわけです。(実はこの辺りは、詳しいレビューを書き直すときに触れようと思っていましたが、さすがにピッカリママさんには先に指摘されてしまいました(笑))
自閉症や発達障害の、専門家向けでない本は、ここ2年くらいで劇的に増えましたね。それ自体はとてもいいことだと思うので、あとは「トンデモ」に近い本をしっかりふるい落とすことが大切だろうと思います。
そらパパさんのブログをいつも参考にさせていただいております。
就学を控えたそらまめちゃんと同学年の男児の母親です。
息子は3歳時から二年間、感覚統合のセラピーを受けておりました。
感覚統合理論は、いかにも脳神経系学をベースにした根拠の確かなモノのような説明が、一般主婦には難しい専門的用語を使いながらも意外に理解し易く語られてしまうため、コロッと信じてしまう保護者が多い
ような気がします。
私もそんな一人でした。
そして、専門家についてある程度のボリュームでセラピーを受け続けてきた今、思うのは、感覚統合とは「自分の体が存在する感覚(ボディイメージ)を確立させるための最初の一歩」に尽きる療育であり、それ
以上でも以下でもないということです。
セラピーの実践自体は、子供にとって悪いものではありません。
ただ、前回紹介された「続・自閉っ・・」
の岩永氏にしてもそうなのですが、感覚統合理論で自閉症をウマく(?)説明してしまうのは・・・
当事者の親として、実践してきた者として
なんだかチョッと嫌な感じがいたします。
月見子さんのご指摘は、とても的確だと思います。
私も感覚統合って要は「ボディイメージ」の療育なんだ、と思います。
で、自閉症児にとって確かにボディイメージ作りはとても大切なテーマなので、療育の内容そのものには共感できる部分が多いとも思っています。
でも、そこに「脳科学の理論を・・・」といったものが入ってきて、グランドセオリー(自閉症全体を語る大きな理論)を作ろうとするところで、「ちょっと待った」と言いたくなるわけです。
この本の場合は、本当に入口の部分だけなので、感覚統合から始める入門書、というのはある種「ユニークな方法」でありかな、と思っているんですね。
これからもよろしくお願いします。