まずは、「単純マッチング」と「選択マッチング」の違いについてです。
ここに、トランプのカードがあるとします。
机の上にトランプのカードを並べた状態にして「見本」とします。その上で、子どもにカードを「課題」として渡し、机に並べてあるカードの上に正しく乗せていく、この課題が「単純マッチング」です。
※単純マッチング課題のイメージ
次に、子どもの目の前にトランプの各種類のカードをあらかじめ並べておき、親がその中のどれかと同じカードを「見本」として子どもに見せ、子どもは目の前のカードの中から同じカードを選ぶ(指差すか、持ち上げるか、親に渡すか、どこかに置く)ことが「課題」になる、というのが「選択マッチング」です。
※選択マッチング課題のイメージ
単純マッチングでは、子どもの「手持ちカード」すべてに正解(置くべき場所)があるのに対して、選択マッチングでは「手持ちカード」の中に正解は1枚しかなく、残りのカードはすべて不正解です。
つまり、単純マッチングで「置き場所」を間違えても、修正するのは最後のステップの「カードを置く」という部分だけでいいのに対して、選択マッチングでカードの選択を間違えた場合、最初のステップの「カードを選ぶ」というところから、行動全体を修正しなければならないために、単純マッチングよりも選択マッチングのほうが難易度が高いと考えられます。
それでは、マッチング課題のとりあえずの到達点として目標にしなければならない「音声マッチング」についてはどうでしょうか。
音声マッチング課題をこれまでの課題の流れで簡単に説明すると、トランプを子どもの目の前に並べておき、親が言ったマークと同じカードを選ぶ、という課題になります。
※音声マッチング課題のイメージ
この図をこれまでのものと比較すると、似ている部分とまったく異なる部分があることが分かります。
似ている部分としては、課題のパターンが選択マッチングとまったく同じであることがあげられます。このため、音声マッチングを行なうためには、選択マッチング課題をこなせるというレディネスを育てることが必要になるわけです。
音声マッチングを単純マッチングの形式でトレーニングすることは、理論的には可能かもしれませんが現実問題としては非常に困難です。本質的に音声は「その場で消えてしまう」ものなので、カードなどとは違い、「見本を一覧できるような形で並べておく」ということが難しいからです。
さて、音声マッチングは上記のように、選択マッチングの一種なのですが、ただの選択マッチングとは根本的に異なる点があります。それについては次回書きたいと思います。
(次回に続きます。)