それをふまえて、その第一歩として使うことを想定した、今回のオリジナルマッチングカードについて書きたいと思います。
この図は、私がイメージしている、ことばのない自閉症児にことばを獲得させるための療育フローチャートです。
まだ完全に固まっているものではないので、今後変えていく可能性がありますが、既にこの中で記事として書いているものもいくつかあるのが分かると思います。
マッチングカードは、このフローでいうと左側の流れの下半分、フォーマルトレーニングの単純マッチング課題(チャート(F))として考えたものです。
このチャートについては、全ての構成要素について記事を書き終わってから改めて詳しく考えたいと思いますが、簡単に説明すると、こういうことになります。チャートを下から上に見ていってください。
1. チャート(A)
コミュニケーションのためのことばとして最初に出てくるものは、恐らく何かを要求することば(行動分析学でいう「マンド」)だと思われます。仮にマンド以外の言語行動が先に出てきたとしても、マンドを教えなければいけないことに変わりはありません。
2. チャート(B)~(D)
要求のことばが出るために必要な要素(レディネス)を非常にシンプルにまとめると、次の3つだと思われます。
1) ものの名前を知っていること。(チャート(B))
2) 単語を発声できること。(チャート(C))
3) 目の前にないものを要求する行動があること。(チャート(D))
普通の赤ちゃんで言えば、1)は親のことばが分かること、2)は喃語、3)は指差しに相当すると考えられます。これらのレディネスが発達して、初めてことばが出るというイメージは持ってもらえるのではないかと思います。
この中で、1)の「ものの名前を知っていること」というのは、モノと名前のマッチングができるということとイコールです。その中でも特に、モノと、その名前の音声がマッチングできれば完璧です。
3. チャート(E)
音声マッチングの課題とは、親がものの名前を言ったら子どもがその名前に対応するもの(絵カードなど)を選ぶ、というトレーニングになります。このトレーニングを開始するためには、その前段階のレディネスとして、「親が見本を見せて、子どもがそれと同じものを選ぶ」というマッチングスキルが必要になります。
このようなマッチング課題を「選択マッチング」と呼びます。これは、次に説明する単純マッチングよりも難易度が高いと考えられます。
4. チャート(F)
選択マッチングよりも簡単なマッチング課題として、「単純マッチング」があります。これは、「既に並べられている見本に対して、1つ1つの問題を順にあてはめていく」という課題です。このような、同じものと違うものを区別し、同じものを選んで組み合わせる、というスキルの開発が、マッチング課題の最初のステップとなります。
マッチングの能力を向上させるためには、行動療法のフォーマルなトレーニングとしてマッチング課題をやらせるのが一番効率的だと思われます。
今回のマッチングカードは、上記4.の単純マッチング課題として使うことを想定して制作しました。ただ、よく考えてみると、3.の選択マッチングの課題としても使えることに気づいたので、今後、カードの解説書を改訂し、選択マッチングもできるようにしたいと思います。
次回は、マッチング課題の3つの段階として、今回出てきた「単純マッチング」「選択マッチング」「音声マッチング」について、さらに分かりやすく解説したいと思います。
(次回に続きます。)