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自閉症の子どもと家族の幸せプロジェクト ~お父さんもがんばる!「そらまめ式」自閉症療育
著:そらパパ
ぶどう社
第1章 「ピリオド・ゼロ」を乗り越えて
第2章 療育は家族の一大プロジェクト
第3章 お父さんは、プレイング・マネージャー
第4章 私の経験談から
第5章 自閉症とその療育の進めかた
第6章 自閉症療育の全体像
第7章 明日から実践できる療育のアイデア
前回、前半(1章~4章)の「導入編」について書きましたので、今回は後半(5章~7章)の「実践編」についてご紹介したいと思います。
読んでいただいた皆さんからの声では、この「実践編(プラス、第4章の「我が家の経験談」)」を高く評価いただいているようで、ありがとうございます。
でも実は、この本の当初の企画の中心は、「父親の新しい役割モデルについて」、つまり前半の「導入編」に相当する部分だったので、「実践編」は当初はもっとシンプルなものでした。
その最初の原稿(第1稿)を、ぶどう社さんとの打ち合わせのなかで大幅に構成を直し、内容も加筆・修正していき、現在の姿になりました。
その打ち合わせでの議論のポイントは、こういうことでした。
「療育の入門書」として書いているのに、理屈だけが先行して「実際の療育のやり方」につながっていかないというのではいけない。
前半の「導入編」で、療育の意義を理解して「やる気」になった(でも、療育についてまだ詳しくない)親御さん(お父さん)に、機を逃さず、まさにその日からでもスムーズに始められるような、そんな「実践のやりかた」をコンパクトにまとめた内容を後半に置きたい。
そういった経緯があったので、やはりこの「実践編」も、単にABAとTEACCHと絵カード療育の概要を紹介して、それぞれの実践テクニックをばらばらに並べてオシマイ、なんていうカタログ的なものから脱却し、前半の「熱いメッセージ」を、リアルな「実践の形」につなげていけるような内容にしよう、と思いました。
そして、いろいろ悩んだ結果として、「実践編」では、療育の実践例を通じて、療育の「知識」よりもむしろ「本質」を伝えることを目指すことにしました。
療育の「本質」とは何でしょうか。それは、私は、
試行錯誤
だと思っています。
もう少しだけ補足して書くと、「『一般論』をベースに、『試行錯誤』によって『個別化』すること」が、療育の本質だと思っています。
子どもがパニックする。トイレトレーニングがうまくいかない。寝つきが悪い。
そういった問題について、天下り的に「こうすれば解決する」というシンプルな答えは、ありません。言い換えると、実際に子どもに対して適用する前から「正解」だとわかるような「答え」は、療育についてはまず存在しません。最初に手に入るのは、試行錯誤のための「ヒント」だけです。
ある問題に対して、専門家のアドバイスや療育理論の知見などを活用して、「こうすればうまくいくんじゃないか」というアイデアを見つけてきて、それを「実際に適用してみて」、うまくいけばそれを続けて、いかなかったら他のアイデアを考える。その繰り返し、つまり「試行錯誤」こそが、療育の本質だと思います。
ABAやTEACCH、絵カード療育などで取り上げられる個別具体的な「テクニック」も、「確率的にその方法はうまくいく可能性が高い」というだけであって、適用する前から、ある特定の子どもの特定のの問題に対して必ず有効であるという保証はどこにもないわけです。
でも、何の指針もなく、やみくもに試行錯誤を繰り返しているのは、あまりにも非効率的です。非効率だということは、親にとって療育が労多くて益少ないものになってしまうだけでなく、自閉症児の貴重な時間を無駄にしてしまうという意味でも問題です。
そう考えていくと、家庭での療育の「実践」のために最も重要な情報とは、「どうすれば最も効果的・効率的に『試行錯誤』できるのか?」というノウハウだということになります。
そのための視点を提供するのが、第5章になります。この章では、「科学の目」という概念を使って、この「試行錯誤」のプロセスを、「仮説-実践-記録-検証」という流れで体系化しています。
このような考え方は、実は、実験心理学、臨床心理学に限らず、心理学の研究を進めるためのもっとも基礎となるノウハウだと言えます。
療育というのは、突き詰めて考えると、「自分の子ども」を対象として、心理学の研究を続けていくような行為です。ですから、その「研究」を上手に進めるための(心理学的な)ノウハウというのは決定的に重要なのですが、これまでの療育書では、その部分を明確にしているものはほとんどなかったと思います。
そして、ABAやTEACCHその他の療育技法の知識も、この「試行錯誤」のプロセスをうまく進めていくための「ツール・ヒント」と位置づけ、どのようにこれらの技法や知識を学び、応用していけばいいかを考えていきます。
ですから、この第5章も非常に思い入れの強い、ぜひ多くの方に伝えたいメッセージが込められた章になっています。
続く第6章、第7章では、より具体的な療育の実践方法を書いていますが、ここでも、それぞれの実践を単なるテクニックとしてではなく、上記の「試行錯誤」のプロセスの一例と位置づけ、いろいろな療育のテーマ(問題行動の解消や、コミュニケーションの促進など)について、どんなことを考えて、どんな風にそれを「試行錯誤」していくのか、ということにしっかりと議論を尽くしながら、ストーリー的に紹介していくことを心がけました。
第6章は、「療育の全体像」を示していて、ここにもいくつか実践のアイデア(鏡の療育、家庭内の構造化など)が書かれています。
第7章は、より個別具体的な実践例を通じて、でも全体としては療育という営みを「体系的に整理してみよう」という挑戦をしています。既に一度紹介していますが、第7章のコンテンツは、こんな感じになっています。
・パニックへの対処法を通じて、ABAの基礎を学ぶ。
・絵カードの作り方と、絵カードを使ったコミュニケーション療育の実践
・絵カードを使ったスケジュール表で、TEACCHの構造化を学ぶ。
・マッチングカード作りと実践で、家庭での課題のすすめかた、ABAの実践方法を学ぶ。
・記録シートの作り方・つけ方を通じて、ABAの「記録」の意味と実践方法を学ぶ。
そして今回も、巻末にかなり詳細な「読書案内」をつけました(7~8ページあります)。
全体を通じて、子どもが自閉症だと知らされて「どうすればいいか分からない」という親御さんが、この本を読むことで「どうすればいいかが少し分かってくる」ようになってほしい、そんな願いを込めてこの本を書きました。
その狙いが、実際にどのくらい成功しているのかは、実際にそういった立場にある読者のかたに読んでいただいて評価を仰ぐほかありませんが、私自身としては、今回のテーマで、書きたいこと、いま書けることはしっかり書くことができたと思っています。
・・・本書についての記事は、あと1回、最後は裏話的なことを中心に書きたいと思っています。
(次回に続きます。)
http://blogs.yahoo.co.jp/xqwsh759/374829.html
ありがとうございました。