書こう書こうと思いつつ、なかなか時間が取れないので、取り急ぎショートレビューを。
TEACCHプログラムによる日本の自閉症療育
著:佐々木 正美、編:小林 信篤
学研のヒューマンケアブックス
総論 TEACCHプログラムの原理と日本の今
第1章 幼児期の診断と支援
第2章 学齢期の支援
第3章 医療現場での取り組み
第4章 早期からの地域と家庭における支援
第5章 自立を目ざす青年期の支援
第6章 支援者育成の最新情報
これ、なかなかすごい本です。
日本にTEACCHが導入されて、まだ20年そこそこといったところだと思いますが、既にさまざまな領域でTEACCHの理念が共有され、実践されていることがよく分かります。
前々から書いているとおり、TEACCHは、私たちのようなアマチュアの親には、それが何であるかが非常に「見えにくい」ものでもあると感じます。
私自身も、療育を学び始めたごく初期は、絵カードやスケジュールが部屋のあちこちに貼ってあって、ABAのような「厳しいトレーニング」をしていない状態が、何となくTEACCHっぽいのかな、程度にしか思えない時期もありました。
このような「よく分からない状態」を脱し、TEACCHの何たるかを深く理解するためには、
・TEACCHの理念について学ぶこと。
・TEACCHの具体的実践について、できるだけ多くの実例に触れること。
の2つが特に重要だと思います。
このうち、前者の「理念について学ぶこと」に適した本は、いくつかありますが、その代表的な1冊は、やはり佐々木先生の書いたこの本でしょう。
自閉症児のためのTEACCHハンドブック(レビュー記事)
そして、この本の内容を過不足なく補って、後者の「TEACCHの具体的実践について、できるだけ多くの実例に触れること」を実現できる本として登場したのが、今回の「TEACCHプログラムによる日本の自閉症療育」だと言っていいと思います。
何より、外国ではなく日本で、しかも研究や実験ではなく実際の自閉症児者への実践として、現に行なわれているTEACCHの取組みを具体的に紹介していますから、まさにこれは「日本におけるTEACCH」を知るための本の現時点での決定版といっていいのではないでしょうか。
ぜひ、「自閉症児のためのTEACCHハンドブック」とあわせて読むことをおすすめします。
本書の想定読者はおそらく教育関係者だと思われますので、親御さん向けの入門書として読む場合は若干歯ごたえがあるかもしれませんが、それだけ内容も詰まっていて、TEACCHについてしっかりと理解したい、という方には必携の本なのではないでしょうか。
おすすめです。
※その他のブックレビューはこちら。