http://blackshadow.seesaa.net/article/102896143.html
キレート療法の心臓病臨床試験が炎上中:幻影随想
この記事によると、過去4回も「効果なし」という結果がすでに得られているキレーション療法について、なぜかアメリカのNIH(National Institutes of Health)が治験に3000万ドルもの大金を計上したということで、論争が起こっているようです。
当ブログでは、過去に何度かキレーションを取り上げています(1, 2, 3, 4, 5)。私自身、キレーションの効果自体についても懐疑的ではありますが、基本的に、「効果があるかないか」については、こういった医学的・疫学的な研究に譲り、少なくとも危険性があることだけは間違いないという前提から、主に倫理面から意見を多く書いています。
もちろん、こうやって有効性を検証する(そして、結果として有効性を否定する)研究が積み重なっていくことはとても重要なことなのですが、それが結果として、キレーションを研究している人間の懐を潤して、キレーションを続ける原資と言質を与えてしまう結果になるのは残念なことだと思います。
毒性のある重金属などの排出にメチオニンが費消されると、ヒスタミンの前駆物質のヒスチジンが増え、心臓に影響するアデノシンが増える。
メチオニンがうつや統合失調症に関係もしそうなのはこのヒスチジン、アデノシンの関係だとおもいます。
このヒスチジン、代謝されれば覚醒系でアレルギーやその他中枢神経系により身体の守備的統合をはかるヒスタミンに、溜まればうつなども入るステロイドの副作用と同様の広汎な働きがある睡眠系に働き、『生存と生殖とエネルギーをバランスさせる回路』を調節する働きが大きく、自閉症もここに大きく影響されているとおもいます。
やり方等の問題は大きいとおもいますが、一応そこに影響するものの1つでありそうです。
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http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/119/5/273/_pdf/-char/ja/
心筋障害の調節因子とアデノシン産生
小畑俊男 大分医科大学薬理学教室
7. 一重項酸素とアデノシン
反応性の非常に高いラジカル種に一重項酸素(1O2)が知られているが,その代表的なスカベンジャーは必須アミノ酸の一種であるヒスチジンである.ヒスチジンはアデノシン産生を増加させる(37).このように虚血障害によって生成される1O2はヒスチジンの枯渇によりアデノシン産生を抑制しているものと考えられる.
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http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080716#p15
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080718#p10
倫理上、大きな問題があると思います。
私自身は、自閉症への対処としてのキレーションは、メリットよりデメリットが大きい(メリットがゼロである可能性は高そうです。)のは明らかであり、行うべきではないという立場に立っています。m(_@_)m
ただつながっているから症状が動くこともあり、かえって本筋が見えなくなることもあるかと。
キレート療法が有効か無効かという議論を、機序のレベルで思考実験的に進めるのは、なかなか難しいことなのではないかと思います。
自閉症の症状はいろいろな要素が複雑に相互作用した結果だと思いますし、それに何らかの医療行為が「効く」としたら、やはりそれも複雑な相互作用の結果でしょう。
ですから、とりあえず信頼できるのは、実際の治験の結果だけなのではないかと思います。その「結果」についていえば、今回引用した記事や、ntkさんが紹介されている記事にもあるように、基本的には「否定的」な結果が出ている、ということだと理解しています。