軒と庇
についてです。
軒というのは、簡単にいうと屋根が建物から出っ張っている部分のことです。これをさらに分けて、屋根の傾斜に対して同じ方向(雨水が落ちていく方向)の出っ張りを「軒先」、直角の方向(雨水が落ちない方向)の出っ張りを「ケラバ」ということもあるようです。
この軒ですが、最近の家づくり、特に都心部などでは、建築面積の狭さやコストダウン、そしてデザイン的な見た目の美しさなどから、軒をまったく作らなかったり、非常に短い軒にしたりすることが多くなっています。
実際、今回、最初にビルダーが作ってきた図面では、ベランダの上の「軒先」が25cm程度、「ケラバ」にいたっては10cmほどしかありませんでした。
でも私は、木造の家には軒は絶対に必要だと思っています。
軒があることで建物の外壁に直接雨が当たることが避けられ、また真夏の強烈な日差しが外壁を劣化させることも防げ、木造建物の耐久性を大幅に向上させることができると考えているからです。
それだけでなく、窓からの真夏の日差しや雨が入り込むことを防ぐ効果も期待できます。
ですから、その図面を見て、私は即座に「軒先とケラバをもっと伸ばしてほしい」とお願いしました。
ただ、どちらについても、あまり伸ばすと土地の斜線制限などに引っかかるため、間取りや配置を変えずに可能な範囲で伸ばすように依頼しました。
その結果、軒先もケラバも45cm(1/4間)とすることになりました。
そのうえで、さらに窓からの雨の侵入やサッシ周りの耐久性向上のために、原則、家のすべての窓の上にアルミ製の「庇(小さな屋根)」をつけることにしました。(2階やグルニエで、軒やケラバが庇の機能を果たせる窓についてはつけませんでした)
こちらは追加のオプションで庇1つあたり2〜3万円でつけることができたので、たくさんつけた割にはそれほどのコストアップにはなりませんでした。
また、玄関のドアの上のアルミ庇もオプションだったので、これもつけました(これだけはサイズが巨大だったので10万円以上しました)。
これらの軒と庇、そして横滑りだし窓の配置などのおかげで、新しい家は、どの窓を開けても雨の入り込みが少なく、小雨程度なら気にせずに窓を開けて換気できるようになりました。
外観的には、最近のモダン住宅っぽい凹凸の少ない無機質な箱的なところからはやや外れ、屋根の軒が伸び庇があちこちについたことで「屋根っぽいものの出っ張り」が強調された家になりましたが、それはそれでありかな、と思っています。
そして、そういうこともあるので、今回の家のデザインのベースはいわゆるベーシックなシンプルモダンに置きつつも、建物だけでなく外構も含めて、あまり無機質さを強調せずにディテールでいろいろな表情をつけることを意識するようにしました。