2016年10月31日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(89)

在来工法かツーバイフォーか、という選択で、家づくりの当初はツーバイフォー優先で考えていたのですが、ビルダー選択の後半で残ったのは、すべて在来工法のビルダーでした。

これは、ツーバイフォーをうたう工務店の動きが鈍かった、というのも1つにはあります。
でも、より本質的な理由としては、ツーバイフォーに(在来工法と比べて)それほどの優位性はないんじゃないか、と考えるようになったことが大きいです。

在来工法と比較すると、ツーバイフォー工法には次のような弱点があると感じました。

a.コストが高い。

 本来、ツーバイフォー工法というのはコストダウンのために考案された工法のはずなのですが、日本ではまったくそんなことはなく、在来工法をうたうビルダーよりも坪単価は明らかに高いです。
 その結果、ツーバイフォーの標準仕様と同じコストなら、在来工法ではワンランク以上上の仕様が選べるという状況になり、ウリであるはずの耐震性能や断熱性能も含めて、同じコストレベルでは優位性がほとんどなくなってしまうのです。

b.設計の自由度が弱い。

 ツーバイフォー工法の最大の弱みの1つとして、設計上、窓が自由に開けられないということがあります。イメージとしては、日本の一般的な住宅よりもかなり窓が少なく、またそれぞれの窓が小さな家になります。
 そういった家が洋風でおしゃれだ、というセンスもあると思いますが、思ったところに窓が開けられないというのはプランニングする立場としては嫌だな、というのがありました。

c.建築中の雨に弱い。
 これもよく言われることですが、在来工法では上棟の日に1日で屋根をつけてしまうので、以後室内が雨ざらしになることが避けられます。
 一方、ツーバイフォー工法では下から順番に組み上げていくため、屋根がつくのは家が完成する最後の段階になります。そのため、建築中に大雨が降ると床の部分が水浸しになってしまうわけです。
 雨の多い日本の気候を考えたとき、この差は非常に大きいように感じました。

d.パネル工法自体は在来工法でも採用されている。
 ツーバイフォー工法のメリット(耐震性、断熱性)を生み出しているのは、筋交いではなくパネルで家を支える「パネル工法」であるところだと言えます。
 でも、実は在来工法を採用するビルダーの多くが、筋交いとパネルをうまく組み合わあせて家を建てることで、ツーバイフォーのメリットを吸収していることが分かりました。
 在来工法を選んでも、パネル工法のメリットを享受できるのであれば、ツーバイフォーを選ぶ理由はかなり薄くなってしまいます。

他にもいろいろ理由はあるのですが、主に上記のようなことを考え、ツーバイフォーにしてもはあまりメリットはないな、と感じるようになったので、最終的には在来工法のビルダーを選ぶことになりました。

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2016年10月24日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(88)

さて、間取りについての話題がひととおり終わりましたので、今度は「仕様」について書いていきたいと思います。

仕様、というのは、どういった性能や特性をもった素材や構造や特定の商品で家を構成していくか、といったことで、設計図面でいうと、部屋の形や配置がどうなっているかというのが「間取り」で、その間取りの中に書き込まれる「ここの壁にはこの商品を使って…」とか、図面の外側に表で記載される「外壁:○○、屋根:○○」みたいなのが「仕様」といえるでしょうか。

そんな「仕様」のなかの最たるものは「木造か、鉄骨造か、鉄筋コンクリート造か」というものでしょう。
これについては、コスト面を考えれば、ほとんど木造一択です
地下室と屋上を作るとか、5階建以上を作るとか、そういった特殊な目的がなければ、個人の小さな家で鉄筋コンクリートというのはほとんどありえません。
軽量鉄骨造については、コスト的にはぎりぎりないこともないレベルですが、これもまた普通の2階建ての家を建てるのであればあえて選択するメリットがあまりありません。

ということで「木造」というのはほぼ自動的に決まるのですが、こんどはその木造のなかで大きく二つの構造タイプに分かれます。
それが、「在来工法(軸組工法)」と「ツーバイフォー工法」です。

このあたりの細かいところは家づくりの本などを見ていただいた方が早いと思いますが、簡単にいうと、柱をいっぱい立てて、壁はその柱と柱の間に筋交いを入れて作るのが在来工法、柱というよりは壁を設置するための「枠」を作って、その枠に合板を張った「パネル」を作り、そのパネル状の壁がそのまま耐震構造になるのがツーバイフォー工法です。

家づくりの勉強を始めたりすると、だいたい最初に入ってくるのが「ツーバイフォーのほうが地震に強い」「ツーバイフォーのほうが断熱性が高い」といった、ツーバイフォーの優位性を強調するような世間的な評判です。

私の場合もそうだったので、家を建てることに決めた当初は「うちはぜひツーバイフォーで建てよう」と思い、ツーバイフォーに強い工務店を探したりしていました。

でも途中からは、ツーバイフォーのビルダーとは縁遠くなり、いわゆる在来工法のビルダーばかりが残っていったのです。
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2016年10月17日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(87)

21)おまけ:地下室と屋上

さて、間取りについてはだいたいこんな感じですが、今回触れなかったアイデアとして、「地下室」と「屋上」というのがあります。

まず、屋上については木造だとほとんどナンセンスですから考慮さえしませんでした

木造建物の最大の敵は「雨」です。
家のどこかに雨が滞留すると、そこから木が腐ってしまって家がだめになってしまいます。
そして雨が最も多く当たる場所は、言うまでもなく屋根であり、木造の家は屋根に雨が滞留しないよう、屋根形状をシンプルにし、また傾斜をきつめにつけることで雨をどんどん地面に落としていく必要があります。
対して、「上がれる屋上」を作るためには、屋根をできるだけフラットにして、かつ屋根に上がるための仕組み(はしごなど)をつけ、さらに屋根の上を歩いてもいいような補強、落下を防ぐ手すりの設置まで施す必要があります。
こういったものはすべて、「屋根から雨を早く落とす」こととは真逆に働いてしまうわけです。
たまに、木造でも屋上を作るプランとかありますが、家の耐久性を考えれば、ちょっとありえない選択だと思います。

一方、地下室については、居住スペースを大きく広げることができるアイデアとして、いったんは考慮の俎上にあげました。
ただ、検討のかなり早い段階でプランからは外すことにしました

まず、大きかったことはコストの高さです。
地下室を作るためには、地下部分は基礎を兼ねた鉄筋コンクリート造にする必要があり、建築のための坪単価は通常の住宅の倍ではすみません。

そして、そこまでのコストをかけて地下室を作っても、湿度が高く漏水のリスクもある使いにくい部屋ができてしまい、用途としては趣味のスペース(オーディオルーム、シアタールーム、楽器の演奏スペース等)といったものになりがちで、部屋としての使い勝手が悪くなること、さらには大雨のときに漏水どころか「冠水」のリスクさえあることなどを考えると「割に合わない」と考え、やめることにしたわけです。

屋上を作るくらいなら、床がすのこ状で屋根のないバルコニー(グレーチングバルコニー)を思いっきり張り出すほうが面白くかつ実用的だと思いますし、地下室を作る目的は、大きなグルニエを作れば相当程度達成できると考えたので、今回はどちらもなしにしました。
(グレーチングバルコニーについては、割と本気で考えていましたが、若干建築基準法上もグレーになりますし、コストも意外と高かったのでやめました。)
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2016年10月10日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(86)

20)規制との戦い

間取りについて、立体的な設計を意識することで問題をクリアしたということを書きましたが、もう1点、設計士の方に無理をお願いしたポイントとして、建築規制をクリアするために、いくつかテクニックを使っていただいたということがあります。
まあこれは、設計士の方にとっては当たり前の仕事ではあると思いますが、以下のポイントのうち、浴室のサイズの件については、私の方から提案しました。

まず1つめは、浴室について、ミリ単位でサイズを調整したことがあげられます。

我が家は真上から見ると長方形ではなく、浴室部分だけ、わずかに出っ張った形になりました。まあこれは、浴室を1坪ではなく1.25坪タイプにしたことが最大の理由です。
ところが、この間取りを素直にプランすると、建ぺい率が規制をわずかにオーバーしてしまうのです。それも、0.1%より小さいような、ごくごくわずかなレベルです。
この状態から一般的なやり方で間取りを修正すると、どこかの部屋を一回り(2畳とか3畳のレベルで)小さくするか、さらに建物を凸凹にして複雑な形にするか、どちらかになってしまいます。
それは避けたかったので、今回は、「浴室のために出っ張らせた部分の長さを、ミリ単位で縮める」というアイデアで乗り切りました。
浴室にはユニットバスがごろんと入りますが、実は1.25坪のユニットでも、1.25坪の空間に対して、5cmくらいの余裕をもって小さめに設計されています。
ですから、1.25坪のユニットは、わずかに1.25坪よりせまい、例えば1.24坪のスペースにも入れることができるわけですね。
そんなわけで、今回は浴室部分の出っ張りを「1cm」だけ縮めることで、建ぺい率を規制の範囲内に収めることができました。(建ぺい率は、規定の40%に対して、39.998%とか、そういう笑ってしまうくらいぎりぎりのレベルになりましたが。)

また、もう1点、規制をクリアするために設計士の方に汗をかいていただいたのが、「ベランダ」でした

ベランダ自体はごくオーソドックスな標準仕様で、2階の南向きの掃き出し窓に沿って規制の範囲内(張り出し1m以内)で作っただけだったのですが、敷地との関係で、そのベランダの南西の角だけが、そのままだと道路斜線規制に引っかかってしまうことが分かったのです。

こちらについては、こういった場合によくやる(ただし超低コストビルダーとかだと嫌がってやらないこともある)、「天空率」を使った制限緩和の規定を活用して、なんとか当初想定していたとおりのベランダを設置することができました
posted by そらパパ at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2016年10月03日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(85)

19)3次元での微調整

これまで、間取りについてのこだわりポイントを書いてきましたが、これらをすべて満たすような間取りを、決まった広さの敷地に破綻なく設計していくことは非常に大変です。
いったん、「これならうまくいく」と思った間取りができても、それをハウスメーカーにもっていくと、設計士の方から問題点を指摘されてやり直しになる、といったことも何度かありました。

逆に、普通に間取りを組んだらできないはずのプランについて、設計士の方に無理を言って設計を詰めてもらって、何とか押し込んだというパターンもいくつかありました。

その際のポイントは「3次元」ということでした。

その1つは浴室です。
我が家の浴室は結果的に、その上を階段がとおることになりましたが、フルの天井高よりも低い位置を階段の一部が通っています。
こういった場合、通常の部屋であれば、天井の一部に階段の出っ張りができる、ちょっと不格好な部屋になるだけで済みますが、浴室の場合、ユニットバスですから天井を削ることができません。
天井の出っ張った部分だけユニットバスの天井をカットして、別途天井を施行することができるか、とハウスメーカーに聞いたのですが、それはちょっと難しいという回答でした。(たぶん、保証とかもできなくなるからでしょう。)
これは無理か、と思ったのですが、選択可能なユニットバスの図面を比較吟味した結果、特定のメーカーのユニットバスで、天井をドーム型ではなくフラットにして、かつ浴室換気ユニットの位置を工夫すれば、ユニットバスを加工せずにそのまま入れても何とか入ることが分かりました。

また、グルニエについても、当初の設計では階段と屋根の位置関係が悪く、平面図ではうまくできているように見えていたものの、立面図で書き起こしてみると、階段の途中で天井高さが80cmを切るというありえない状況になることが分かったため、階段の段数や回転部分の刻み方を調整して、何とか1.1m程度を確保するようにしました。

間取り図とにらみあっていると、つい間取りというのは平面的にプランニングされているものだと錯覚してしまうのですが、実際には建物は3次元の立体なので、空間をうまく使えば、思いもよらないアイデアで問題解決できたりするものなんだな、と改めて感じたりもしました。
きっと、こういったセンスが抜群に優れた建築家とかに家造りをお願いすると、スキップフロア(中二階)とか吹き抜けを駆使した、芸術的でとても魅力的な家ができたりするんだろうな、とも思ったわけです。(私にはそういうセンスはまったくないので、あくまで実用上、機能上役に立つ部分でだけ、「立体的なプランニング」の恩恵を蒙りました。)
posted by そらパパ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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