2015年09月21日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(36)

今回、長女の今後の生活を意識して土地探しをしたわけですが、何より強く意識したのが、「徒歩圏の利便性と安全性」でした。

どこに住むにしても、私たちは住む家そのものだけでなく、その家の周囲にあるさまざまな施設や社会的リソースを利用して暮らしています。
家の周囲でどのような社会的リソースにアクセスできるかということが、その土地に住む価値を決定づけると言っていいと思います。

この「周囲の生活圏」、通常は最寄り駅からどんなターミナル駅にどのくらいの時間で行けるかとか、自転車や車でどんな店に行けるかといったことが「評価の基準」になり、実際、私や妻にとってはそのとおりなのですが、こと長女については状況が大幅に異なります。

長女にとっては、「徒歩で安全に行ける範囲」だけが自分自身の意思で利用できる可能性のある主たる「生活圏」であり、その外側は「介助があって初めて利用できる生活圏」となり、利用価値は一段も二段も落ちると考えられます。

例えば、「歩いて安全に行ける範囲」にコンビニがあれば、娘が大人になったとき、通所施設などに行った帰りに、歩いてコンビニに寄って好きなものを買って帰る、という「楽しみ」を、娘の人生に加えることができるかもしれません。
さらに「歩いて安全にいける範囲」にフードコート形式で利用できるレストランがあれば、やはり将来、そこに歩いて立ち寄って、好物を食べながらフードコートのテーブルでタブレットでも楽しんで時間をつぶす、そんなこともできるようになるかもしれません。少なくとも、週1回とか定期的に、ヘルパーさん等の(もしくは私たち親の)支援を受けて、(可能な限り自力で)フードコートに遊びにいく、というイベントを、安全に作り出すことは可能になるだろうと思います。

これに対し、家を出て最初に車道を渡る信号が登場し、その信号を渡らなければどこにも出ることができない、という立地があったとしたらどうでしょう。
いくらその先すぐ近くに娘が独力で利用可能なお店や施設があったとしても、それを利用するためには安全のために必ず誰かがついていかなければならなくなり、娘が本当の意味で「自由意志で」外部のリソースを気軽に利用することはできなくなってしまいます。
もちろん、「それを利用したいという意思をいつでも周囲に示せるようになればいい」、というのもそうかもしれませんが、その「ワンクッション」がない形で外部リソースが利用できる(という可能性がちゃんとある)ことが、娘の社会へのかかわりという視点からは、非常に意義深いことであるように思われました。

せっかく土地から探して新しい家をつくるなら、家を出ていきなり信号があるような土地は絶対に選ばずに、逆に大きな信号なしで数分歩けば娘の毎日の楽しみになるような施設にたどりつけるような場所を選びたい、と強く感じたわけです。

でも、この希望は(土地の用途について詳しい方なら想像できると思いますが)、決して簡単にかなうものではありません
posted by そらパパ at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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