2015年02月23日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(8)

「長女の高校通学問題」を解決するための8つのアイデア、

1)現状維持
2)学区の高校の近くに家を借りる(家族全員)
3)学区の高校の近くに家を借りる(母子のみ)
4)隣の市区に家を借りる(家族全員)
5)隣の市区に家を借りる(母子のみ)
6)郊外に家を借りる(家族全員)
7)郊外に家を借りる(母子のみ)
8)自宅を売却して郊外に転居


の検討のプロセスについて書いています。主な評価基準は以下のものです。

①コスト
②通学の利便性
③卒業後の進路
④次女の幼稚園
⑤家族のつながりとバックアップ体制
⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
⑦住居の防音性能
⑧その他


2)から5)まで、どれもコストの割にメリットが小さく、納得して選択するのは難しいということが分かってきました。
残るは6)7)8)です。

6)7)8)は、現住所よりも郊外に出るプランになります。そして、その郊外の学区の特別支援学校とは、もともと小学校低学年のころから越境入学するつもりだった学校になります。
したがって、現住所よりも都心に向かうプランである2)から5)と比較すると、コスト面では負担が軽くなりますし、電車を利用するのもラッシュとは反対方向になるため十分に現実的です
さらに、郊外に住む妻の実家の両親にとっては現在よりも来るのが近くなり、次女の幼稚園の問題も生じないため、他の案に比べるとメリットが大きいのは一目瞭然でした。
一方、私の通勤時間が長くなることや、行政サービスが若干低下するなどのデメリットがありますが、これらは「そこに住めば当たり前のこと」でもあるので、妥協は十分に可能な範囲だと思われます。

ただ、この3つの選択肢のうち、6)7)の選択肢においては、「③卒業後の進路」という問題が残ってしまいます
郊外に引っ越して、郊外の学校に通って卒業した後、いきなり現住所に戻ってきても、いったん周囲とのつながりが「切れて」しまった現住所で、改めて長女の卒業後の進路を見つけるのは簡単なことではないように思われます。

そして、もっと率直にいえば、いったん家族が郊外に出てそこで生活を始めるのであれば、卒業後に現住所に戻ってくる必然性があまりない、ということもありました。
2)3)4)5)については、「一時的な」引越し先が現在以上に都心になるため、そちらに娘の卒業後も住み続けるというのは住環境と住宅コストの観点から考えにくかったのですが(上記⑦の住宅の防音の問題もあり、基本的に戸建て志向でもあるため)、引越し先が郊外で、いったん生活の拠点をそちらに移してしまうのであれば、いっそのこと現在の家を売却して、そちらにずっと住んでしまうほうが、さまざまな意味で合理的であるように思われます。
実際、「本来の用途で利用されない不動産を所有している」ことは、極めて非効率的でムダな資産運用であることは間違いありませんから。

もちろん、8)の選択肢は、他のどの選択肢よりも高額の費用がかかります。
でも、2)から7)までの選択肢が、せっかくの持ち家の利用を一時的に不全な状態にしたうえで、消えてしまうコストを賃貸住宅に大量投下するものであるのに対して、8)の場合、かかるコストは住宅という資産への投資という側面をもっており、また低金利の住宅ローンも活用できることなどもあって、「将来に残らない実質的なコストの費消がどの程度あるか」という視点で見ると、動くお金の大きさと比べ、実はそれほど「損失」が出るわけではない、と考えることもできます

私は、上京してから、結果的に不動産の売買を何度も経験するハメになりました(実はどれも計画的なものではないのですが、これについては改めて書きたいと思います)が、そこで分かったことは、不動産というのは上手く売買すると意外とコストがムダにならない資産であり買い物だ、ということです。
今回も、現在の住居を売却して得られた売却資金を「頭金」として郊外に新しい家を買うのであれば、資金計画的には十分に現実的な範囲に収まります。

そして、この8)の案にはさらに別のメリットもありました
posted by そらパパ at 22:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2015年02月16日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(7)

さて、「長女の高校通学問題」を解決するための8つのアイデア、

1)現状維持
2)学区の高校の近くに家を借りる(家族全員)
3)学区の高校の近くに家を借りる(母子のみ)
4)隣の市区に家を借りる(家族全員)
5)隣の市区に家を借りる(母子のみ)
6)郊外に家を借りる(家族全員)
7)郊外に家を借りる(母子のみ)
8)自宅を売却して郊外に転居


について、以下の評価基準にあてはめながら、検討していきました。

①コスト
②通学の利便性
③卒業後の進路
④次女の幼稚園
⑤家族のつながりとバックアップ体制
⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
⑦住居の防音性能
⑧その他


2)3)がコストと生活圏変更により厳しいということで、次に4)と5)です。

先のエントリでも触れたとおり、我が家は所属する市区の外れにあり、10mも歩くと隣の市区になります。そして、その隣の市区の場合、学区として指定されている特別支援学校が変わるという事情があります。
ですから、その隣の市区に引っ越すことで学区を変え、そちらで指定されている特別支援学校の高等部に通う、というのが4)5)の選択肢のミソになります。

この4)5)の選択肢については、前エントリの2)3)と似ている部分と異なる部分があります。

「似ている部分」としては、隣の市区の学校自体はいまの市区の学校と同じかそれ以上に都心にあるため、「学校の近くに引っ越す」という選択肢を選ぼうとすると、2)3)と同等以上にコストがかかる、という点があげられます。
それであれば、住所変更等の必要の必ずしもない2)3)のほうがまだメリットがあるため、4)5)を選択する必然性はありません。

ただ、4)5)が2)3)と「異なる部分」として、あえて学校の近くには住まずに現住所のそばに引っ越す、という選択がありうる点があげられます。
そして、自宅近辺から隣の市区の特別支援学校へ電車で送迎する場合、所要時間が1)の半分強、乗り換えは1回も必要ないので電車での送迎がある程度現実的になるだけでなく、車で送迎するのも幹線道路1本で近くまで行けるということもあります。

つまり4)5)の場合、あえて学校の近くではなく現住所の近くに部屋を借りる、という選択肢になる、ということです。
これにより、現在の生活や卒業後の進路に大きな変更を生じさせることなく、越境入学のような効果を得ることができるメリットが生まれます。マイカーも、いまある1台をそのまま家族で共有し自宅に停めておけばいいので新規取得コストも駐車場コストもかかりません。

言い換えると、4)5)の選択肢とは、3年間近所にセカンドハウスを借りるコストを支払うことで、実質、1)の「現状維持」に近い状態で確実に越境入学を実現する案だということになります。

ただ、この選択肢の場合、隣の市区に借りた部屋に住民票を移してそちらの住民になる必要が当然に生じます(ここが2)3)と違うところです)。
「新居」が現在の自宅のそばだったとしても、生活の実態を「新居」に移さなければ住所の偽装と受け取られかねないため、少なくとも平日、妻と子どもはそちらで生活することになるでしょうし、そのためにはやはりファミリータイプのマンションないしアパートを借りる必要はあります。
そうなると、2)3)のケースほどではないとはいえ、やはり3年間で数百万円の出費は避けられません。
しかも、それだけの出費と家族の一定の分断を伴いつつ、通学にはラッシュアワーの電車もしくはラッシュの渋滞道路に突っ込んで、現状維持よりは短くはなるものの片道1時間(妻は2往復なので毎日4時間)かかり、次女の幼稚園問題に困難が残るというのは、あまり納得できるものではないように感じられました。
とはいえ、この選択肢は比較的現実的であるため、実は最後の最後まで検討の俎上に残っていました。
posted by そらパパ at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2015年02月09日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(6)

さて、「長女の高校通学問題」を私的に解決するための方策案として、以下の8つを検討の俎上に乗せました。

1)現状維持
2)学区の高校の近くに家を借りる(家族全員)
3)学区の高校の近くに家を借りる(母子のみ)
4)隣の市区に家を借りる(家族全員)
5)隣の市区に家を借りる(母子のみ)
6)郊外に家を借りる(家族全員)
7)郊外に家を借りる(母子のみ)
8)自宅を売却して郊外に転居


そして、これらの案を比較検討する際の評価基準として、以下の8つを考慮することにしました。

①コスト
②通学の利便性
③卒業後の進路
④次女の幼稚園
⑤家族のつながりとバックアップ体制
⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
⑦住居の防音性能
⑧その他


以上をふまえて、各案を検討していきます。

まず、1)はそもそも論外です。

1)では問題が解決できないから他のアイデアを探しているわけなので、せいぜい、他の全てのアイデアがダメだった場合の「やむを得ない選択」としてしか、選ぶ価値がないでしょう。

次に、当初は有力な候補だと考えていたのが、2)もしくは3)でした。

この選択肢のメリットは、住民票を移したりする意味での引っ越しが必ずしも必要でないということです。
住所は今のまま、セカンドハウス的に学区の特別支援学校の近くに部屋を借り、そこをある種の「拠点」にして長女の通学をサポートする態勢を組むのであれば、各種手続きはほとんど必要ないですし、借りる部屋は寝泊まりと平日の生活ができる最低限の広さにして、必要に応じて現在の自宅と行き来するようにすれば済みます。
学区の特別支援学校はいわゆる「より都心に近い人気のある住宅地」に所在しているため、賃貸住宅が非常に高く、コストの問題を考えるとほぼ必然的に選択肢は2)ではなく3)になっていきます。
ただ、そうは言っても⑦の問題があるため、選ぶべき住居はアパートではなくマンションの1階ということになります。
さらに、ワンルームではさすがに狭すぎるので(小さめの)ファミリータイプの部屋ということになり、さらに子どもを連れての移動にマイカーが欠かせないとなると駐車場も契約しなければなりません。そのような条件で相場をチェックしてみた結果、どうしても部屋+駐車場の賃料だけでも月15万円は確実に超えてきてしまうことが分かりました。
それ以外に、「拠点」のためのマイカーの購入費と維持費(税金・保険・車検等)も、軽自動車程度は必要になるのでかかってくるでしょうし、夫婦が別居になると生活費もダブルでかかりますから、そういったものを全体でならすと、やはり月あたり20〜25万円程度のコストがかかり続けることが確実です。

これを3年続けるとなると、800万円程度のコストになるでしょう。
しかも、このコストは全て「消えてしまって何も残らないコスト」であり、かつ家族はばらばらになり、妻の実家からも不便でサポートも期待できなくなります。
さらに、高校(および平日拠点)の場所と、卒業後に戻ってくる自宅とは、同じ市区とはいえまったく別の生活圏であるため、長女の卒業後の進路を見つける活動にも大きな支障が出ることが予想されます。

同じ大金をかけるにしても、それで十分に納得のいく解決になるならまだしも、このように妥協しまくり・問題ありまくりの「解決法」に、これだけの大金を費消してしまうことは、あまりにもったいなく、生産的ではありません。

というわけで、2)および3)については、主にコストの問題と卒業後の進路の問題から、選択肢としては問題があるという結論に達しました
posted by そらパパ at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2015年02月02日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(5)

さまざまな事情により、このままでは長女が特別支援学校の高等部に進学しても通学が極めて困難になってしまうという問題が生じたため、我が家では家族全員で(といっても事実上は私と妻の2人ですが)解決策を模索することになりました。

そのなかで、具体的に考えついたアイデアは、たとえば以下のようなものでした。

1)現状維持。いまの自宅に居を構えたまま、なんとか越境入学できるように頑張るが、それができなければ学区指定の高校に送迎する。

2)学区で指定された高校の近くに賃貸住宅を借りて3年間だけそちらに住む(家族全員)

3)学区で指定された高校の近くに賃貸住宅を借りて3年間だけそちらに住む(母子のみ、土日は自宅に戻ってくる)

4)隣の市区に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(家族全員)

5)隣の市区に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(母子のみ、土日は自宅に戻ってくる)

6)市区が変わる郊外に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(家族全員)

7)市区が変わる郊外に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(母子のみ、土日は自宅に戻ってくる)

8)市区が変わる郊外に家を購入し(または賃貸で借りて)、自宅を売却してそちらに引っ越す。


他にもいろいろ考えましたが、それなりに現実的に検討できるものとしては、概ね上記のようなものに収まりました。

ここで、それぞれの選択肢を比較するためのポイントは、以下のようなものでした。

①コスト
 長女が高校にいる3年間にかかるコストがどの程度かかるか。不動産がからむため、選択肢によっては数千万円単位のコストがかかりうるので、これは検討にあたってのかなり大きなポイントになります。
 家族全員で引っ越す場合、現在の自宅を貸し出して収益を得るチャンスもなくはないですが、戸建ての賃貸というのは流通市場が極めて弱いのでカウントしないことにしました。(家を賃貸に出す場合、引越し先に入り切らない荷物をレンタル倉庫に預けることにもなり、さらにコストが膨らむという問題もありました。)
 家族が別居する選択肢の場合、マイカーをもう一台買うコストと維持費も必要でしょう。

②長女の通学(親の送迎)の利便性
 長女を高校に送迎する利便性が高いかどうか。大きなコストをかけて、結局ラッシュアワーの電車に1時間乗らなければならないような選択肢を選ぶ必然性はありません。

③卒業後の進路
 長女の障害の重さからいって、卒業後は福祉関連の施設に通うという進路になる可能性が高いでしょう。長女の進路を卒業までに確保しやすいかどうかは、実は「最大の重要ポイント」と言えるかもしれません。
 そういった情報の多くは学校で手に入るでしょうから、「学校の所在地」と「卒業後の住所」が違うことは、実は大きなハンデになります。

④次女の幼稚園
 長女の高校だけでなく、次女を幼稚園に預けやすいかどうかも検討すべき要素の1つです。子どもは熱を出したりもしますから、「妻が住む場所」と幼稚園は近くないとまずいでしょう。

⑤家族のつながりとバックアップ体制
 選択肢の中には家族が離れ離れになるものもありますが、これは家族のつながりが弱まる
だけでなく、家族の誰かが病気になったとき等のバックアップ体制も脆弱になるという問題があります。

⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
 妻の両親もだいぶ高齢になってきましたが、今でも何か外せない用があるときに長女を預かって留守番をお願いするなど、多大なサポートを受けています。
 引っ越しを伴う選択肢の場合、このサポートが今後も受けやすいか(妻の両親から見ると、負担なく来られるか)というのもポイントになります。

⑦住居の防音性能
 長女はときどきパニックを起こし、大声で泣いたり地団駄を踏んで大きな音を出したりします。
 これを完全に防ぐことは不可能なので、そういった事態になったとき、共同住宅の2階より上や壁の薄い木造アパートなどは選びにくいです。

⑧その他
 私の通勤の便、休日にセカンドハウスに遊びに行きやすいか(中央道へのアクセス)といったことも、同時に考慮の対象としました。
posted by そらパパ at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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