2014年08月25日

障害者いじめの一つの「形」-「聲の形」から(14)

さて、本シリーズエントリでは、もともとの出発点だった、まんが「聲の形」からは離れて、簡単な数値的モデルを束って「福祉社会だからこそ起こるようなタイプの「障害者いじめ」とはどのような構造で発生するのか」について考えてきています。

前回までで、その「現象」の説明は終わったので、今回からはその問題に対する解決法、ソリューションについて考えていきたいと思います。

この「弱者いじめ」の構造、根っこにあるのは、弱者に対する「実際にはそんなに困っていないはずだ」という誤解です

その誤解があるために、社会から与えられる福祉が過剰であり、弱者は焼け太っており、既得権として「甘い汁」を吸っている、という「誤った認知」にいたり、さらにそこから「人はみな公平であるべきであるという「正義感」に基づいて、弱者に与えられた福祉的サポートを無力化するような私的制裁(リンチ、いじめ)が行われ、かつ正当化される、そういう流れがあるわけです。

では、この問題を解決するには、どうすればいいのでしょうか?
この答えは「弱者が困っている、苦しんでいることのリアリティを、正しく伝えて理解してもらう」こと、つまり、あえて陳腐な言い方をするならば、

社会の理解を深める

ことが、最大の解決法になります


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2014年08月18日

聲の形 第5巻(まんがレビュー)

ずっと追いかけていて、専用のブログまで作ってしまったので、もはや誰よりも「聲の形」について語っているブロガーの一人になってしまっている気がしますが(笑)、ともかく私にとって非常に大きな存在になっているまんが作品、「聲の形」の最新刊、第5巻です。


聲の形(5)
大今 良時
講談社コミックス



当初、障害者いじめをテーマに始まったこの作品ですが、巻を追うにつれて、「障害」だけにポイントを絞ったような話題はほとんどなくなり、登場人物それぞれが抱えるトラウマとコミュニケーション不全から生じるさまざまな摩擦、衝突、誤解、絶望、そういったものが織りなす群像劇の様相を呈してきています。

だからといって、物語のなかから「障害」が消えてなくなったわけではないです。むしろ、「障害」が投げかける「影」は、巻を追うごとに重く苦しいものになっていると言ってもいいのではないかと思います。

それは、2つの意味においてです。

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2014年08月11日

発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ(ブックレビュー)

日本のABA療育本もついにここまで来たか、と感慨深くなるほどの、素晴らしい1冊。
この本が、いわゆる「専門書をおかない大きめの一般書店の発達障害本コーナー」に置かれるタイプの、講談社の健康ライブラリーシリーズ(この本>と同じ)から出たことの意味ははかりしれません。


発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ
講談社 健康ライブラリー
著:shizu
監修:平岩 幹男

はじめに
第1章 ABAを利用した言葉かけのすすめ
第2章 ABC分析で子どもに対するイライラを減らそう
第3章 ほめ上手になろう
第4章 遊びを通して親と子のいい関係を築く
第5章 叱るとき、指示を出すときの言葉かけ
第6章 子どもの問題行動への7つの対処法
第7章 子どもを伸ばす日常生活での言葉かけ
第8章 ABAを利用した働きかけを続けるための7つの鍵
第9章 子どもの療育にのぞむあなたに伝えたいこと
おわりに
おすすめの本やウェブサイト


これはすごい。
久しぶりにすごい。
手放しにすごい本だと言える本にはさすがに滅多に会えないものですが、これはそういう本だと言っていいと思います

本書は、簡単にいうと、「言葉かけ」を中心にまとめた、家庭でのABA療育の入門書です。
そしてこの本は、これまでのABA本で、家庭の療育の教科書としては物足りないと私が感じていた部分をパーフェクトに近いレベルでカバーした、「家庭での療育のためのABA本」の決定版になっていると思います。

いま世に出ているABA本は、大きくわけて3つあると思います。

1)アカデミックな行動理論の説明が中心のもの。
2)模倣や発話など、認知スキルを系統的に訓練していく技法を説明したもの。
3)個別具体的な問題(問題行動)への対処の仕方を列挙したもの。


これらの本も、当然役に立ちます。
でも、私がなにより「あったらいいな」と思っていたのは、これらにもまして、次のようなカテゴリのABA本でした。

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posted by そらパパ at 19:38| Comment(7) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする

2014年08月04日

障害者いじめの一つの「形」-「聲の形」から(13)

さて、前回の私的制裁(=リンチ、いじめ)の話で、「本当に困っている人」という概念が出てきました。
「本当に困っている人」まで、福祉を提供すべきではないと表立って主張する人は、ほとんどいません(心の中で思っている人はいるかもしれませんが)。
「本当に困っている人」にだけ必要な福祉を提供すべきである---福祉の「ばら撒き」に批判的な人は、多くの場合このように主張します。

そして、その主張の背景には、「現在は『大して困ってない人』が福祉を受けすぎだ」、あるいは「提供している福祉の量が多すぎだ」という認識があるのでしょう。
でも、その「福祉が多すぎる」という認識は、弱者がどれくらい困っているかを自分が勝手に判断して、その結果、「弱者の困っている度合い」を軽く見積もりすぎていることが原因で起こっている誤解かもしれない、というのが、前回までで書いてきたことの1つです。

さて、そのような「誤解」に基づいて、「本当に必要な福祉」だけが提供されるような形で福祉が削減されたらどうなるでしょうか。
それが、下記のグラフです。



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posted by そらパパ at 20:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする
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