2014年07月28日

障害者いじめの一つの「形」-「聲の形」から(12)

社会が弱者に対して段階的な福祉サポートを与えることが逆説的に引き起こす私的制裁(リンチ)について、書いています。

さて、弱者に福祉が提供される社会環境では、その福祉が過剰に多いと認知される、ないしはもともと「弱者」がそれほど困っていないと誤って認知されることによって、「弱者は福祉によって甘い汁を吸っている」「自分たちよりも楽して恵まれた生活をしている」という誤解を受け、さらにその結果として、その「社会によって与えられ過ぎている福祉」を無効化するような方向性での私的制裁(リンチ、いじめ)が生じる構造がありうる、ということを、いくつかのグラフを使って解説してきました。



この私的制裁は、「誤解された弱者の利得カーブ」に基づき、社会から提供される福祉利得がほぼゼロに帰すような量的レベルで課される、と考えることができます。(それは、私的制裁が「公正世界理念」に基づくペナルティだからです)
私的制裁のペナルティが、社会からの福祉を「全部」マイナスしない場合もあるかもしれません。それは、その私的制裁者が考える「本当に必要な最小限の福祉」だけが残されている、ということになるでしょう。
先のグラフでいうと、下の方にある社会福祉の茶色い太い実線と、赤くて細い実線がずれている部分、このずれの分が「私的制裁者が考える本当に必要な最低限の福祉」です。

さて、ここで問題は、この元々の「弱者の利得カーブ」が、誤った認知にもとづいている、という点です。

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posted by そらパパ at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする

2014年07月21日

障害者いじめの一つの「形」ー「聲の形」から(11)

さて、前回から、社会が弱者に対して段階的な福祉サポートを与えることが、逆にそういったサポートを受けている層への私的制裁(リンチ)を生むことがありうる、ということを、グラフを使ったモデルを示しながら説明しています。



既に何度か出ていますが、こちらが、そういう私的制裁を生むような社会の福祉構造の認知モデルです。「認知モデル」と呼んでいるのは、このグラフが実際(を反映させたモデル)ではなく、「そう思われている」というものであって、「実際」のものよりも弱者が「多くもらっている」という誤解を含んだグラフになっていることを示しています。

水色の実線がその「誤って認知された」利得のグラフです。
これを見ると分かるとおり、この「誤った認知」のベースでは、弱者は「もらいすぎ」です。(繰り返しますが、本当はそうではないのですが、そう誤って認知されている、というグラフです)
しかもこの「もらいすぎ」は、社会によって保障されているので、社会の側からは「是正」されることはありません。

こういったとき、「社会によって正義が実現されないのであれば、われわれが自分たちで実現する」ということで、不公正を正すために特定の人間や集団に対してペナルティを与えるのが、「私的制裁=リンチ」ということになるわけです。

次に示すグラフが、先ほどのグラフに「私的制裁」を加えたものになります。



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2014年07月14日

障害者いじめの一つの「形」ー「聲の形」から(10)

さて、前回は、社会が段階的な福祉的サポートを提供することが、以下のような問題を引き起こすということを、グラフを提示しながら解説してきました。



・弱者(当事者)にとって、「より弱者であるように振る舞う」あるいは「あえて弱者のままでいる」という悪しきインセンティブを与えてしまうこと。

・障害認定の段階が変わる境界近辺に位置付けられる弱者(当事者)にとって、「障害を軽く認定されることによって提供される福祉的サポートが減り、ぎりぎり重い側に認定された人よりも社会から得られる利得(=生きやすさ)が下がってしまうことがあること。

・相対強者(非当事者)にとって、弱者は自分たちがもらっていないサポートを受け取っていて「得をしている」「甘えている」といった錦をもってしまうことがあること。特に、弱者の「困っている状況」がうまく非当事者に理解されていない環境では、弱者の弱者性(困り度)が軽く見積もられ、いっぽう与えられている福祉的サポートは実態より大きく見積もられる(隣の芝は青い)傾向があるので、そういった妬みの感情はより強くなる傾向がある。


簡単にいうと、弱者の側に「既得権」っぽいものができあがってしまって、弱者は弱者でそれをできるだけ多く得続けるために「弱者でい続ける」インセンティブが働いてしまうし、弱者ではない非当事者からは、「あいつらは楽をしておいしい汁を吸っている、不公平だ逆差別だ」と見えてしまう、ということです。

さて、ここでようやく「いじめ」の話に戻ってきます。

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2014年07月07日

障害者いじめの一つの「形」ー「聲の形」から(9)

※このシリーズ記事ですが、タイトルを微修正することにしました。過去分のエントリについても、今後修正します。

さて、前回のエントリの最後で、下記の「福祉国家の利得モデル」のグラフについて、



段階的な社会福祉制度の導入によって、一部に「利得の逆転ポイント」が生まれる、という問題があることを指摘しました。



これは、実際によくある、「障害認定が軽い方になってしまったので(あるいは、障害認定がぎりぎりされなかったので)、もう少し障害が重い人よりも支援が少なくて苦しくなってしまった」といったケースが図示されていることになります。

こういう状況が起こると、大きく2つ問題があります。

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