2014年03月31日

自閉症スペクトラムとは何か: ひとの「関わり」の謎に挑む(ブックレビュー)

ありそうでなかった、「自閉症それ自体を知る」というカテゴリの、素晴らしい入門書。


自閉症スペクトラムとは何か: ひとの「関わり」の謎に挑む
千住 淳
ちくま新書

はじめに
第1章 発達障害とは何か
第2章 自閉症スペクトラム障害とは何か
第3章 自閉症はなぜ起こる?
第4章 自閉症者の心の働きI――他者との関わり
第5章 自閉症者の心の働きII――こだわりと才能
第6章 自閉症を脳に問う
第7章 発達からみる自閉症
第8章 社会との関わりからみる自閉症
第9章 自閉症という「鏡」に映るもの
第10章 個性と発達障害
おわりに
参考文献


多くの科学に基礎と応用があるように、学問の世界?における「自閉症の研究」にも、基礎と応用があると言っていいと思います。

ここで「基礎」とは、「自閉症の定義」「自閉症のメカニズム」「自閉症をもっている人の認知の機制」といった、自閉症そのものを理解し、そこで何が起こっているのかを問うことを指しています。
当然、自閉症をひきおこす遺伝子とか、自閉症の人の脳で何が起こっているのか、といった問題意識も、この「基礎」のほうに含まれます。

いっぽう「応用」のほうは、「自閉症の診断」「自閉症の療育」「自閉症の人の社会参加」「自閉症の人を支援する法整備」といった、そこに「自閉症」の人がいる、ということを前提に、その人にどう働きかけていくのか、その人をとりまく社会にどう働きかけていくのか、といったことを考えていくことを指しています。
その中でも特に「自閉症の療育」の部分が、「応用」のなかでは極めて大きな位置を占めています。

これは、端的にいうと、自閉症に対する「基礎(実験)心理学」と「応用(臨床)心理学」という区分に近いですね。

そして、これまで自閉症に関する多くの優れた「入門書」はほとんどのものが「応用」に関するものでした

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2014年03月24日

自閉症という謎に迫る 研究最前線報告(ブックレビュー)

情報収集のためにサブテキスト的に読むのなら、アリ。


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(上がAmazon、下が楽天。AmazonはKindle版も選べます)

自閉症という謎に迫る 研究最前線報告
金沢大学 子どものこころの発達研究センター
小学館新書

はじめに
自閉症をめぐる五つの謎
第1章 自閉症は治るか―精神医学からのアプローチ
第2章 遺伝子から見た自閉症―分子遺伝学からのアプローチ
第3章 自閉症の多様性を「測る」―脳科学からのアプローチ
第4章 自閉症を取り巻く文化的側面―心理学からのアプローチ
第5章 社会的なものとしての自閉症―社会学からのアプローチ
執筆者紹介


タイトルにあるとおり、本書は自閉症をめぐるさまざまな研究について、それぞれの分野の専門家が研究の現状を整理し、それを一般向けにかみくだいてまとめた文章をまとめた本になっています。

新書という限られたボリュームで、さらに複数著者がさまざまなトピックについて触れた文章を集めているわけですから、1つ1つのトピックについては「ちょっと充実したパンフレット・雑誌記事」程度のボリュームしかなく、また文章のテイストが統一されていないため、かなり散漫な印象を受けます。
(特別支援教育などの専門雑誌の特集記事のような感じですね。)

いちおう、序章で全体を概括するために、「自閉症の5つの謎」というのが列挙されます。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:15| Comment(4) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする

2014年03月17日

聲の形 第3巻(まんがレビュー)

やっと出ましたね。待望の新刊です。


聲の形 第3巻
大今良時
講談社 少年マガジンKC

当ブログでずっと追いかけているまんがの最新刊です。
これまでのストーリーについては、既に他の記事で何度も触れているので詳しくは繰り返しませんが、耳の聞こえない少女・西宮硝子と、彼女を無邪気にいじめてしまったことで運命が変わってしまった少年、石田将也とをめぐる物語です。
第1巻は将也と硝子の小学生時代の「いじめ」のエピソードが、第2巻では高校3年生になって将也と硝子が再会し、少しずつ新しい絆を作っていくエピソードが語られていました。


聲の形 第1巻・第2巻

第3巻では、将也と硝子以外の、小学校時代のクラスメートとの再会が描かれています。
もう少し具体的にいうと、第3巻は「佐原との再会編」、「植野との再会編」、そして最後に「とんでもない1話」(笑)という構成になっています。


まさに今日が発売日でした。さっそく買ってきましたよ。

なお、以下ネタバレになりますのでご注意下さい。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする

2014年03月10日

障害者いじめの一つの「形」ー「聲の形」から(5)

このシリーズ記事では、いま週刊少年マガジンで連載中の話題のまんが、「聲の形」をとりあげ、その中で主要なテーマ、モチーフになっている「障害者に対するいじめ」という観点から考察を加えています。


聲の形 第1巻・第2巻・第3巻
大今良時
講談社 少年マガジンKC

まんがの単行本も、いよいよ来週月曜日に3巻が発売されますね。
3巻は最後に驚きの展開が待っている(はず)ので、これまで2巻までお持ちの方はぜひ3巻も読んでいただきたいと思いますし、まだ読んでいない方は3巻発売を期にまとめて読むのもとてもいいと思います。ぜひ。

ところで、先週はこのシリーズ記事でまさに今連載中の「聲の形」の展開を話題にしましたが、そちらもまだ話が続いています。
いちおう、27話での植野のセリフはある程度露悪的なものだった、という整理で話が前に進んでいくようなので、そちらはそちらでこの先を見守っていきたいと思います。

さて、ここからは本論に戻りたいと思います。

今回、このシリーズ記事で着目しているのは、「聲の形」の小学生編でいみじくも示されているとおり、障害者(だけでなく、いわゆる社会的弱者と呼ばれる人たち)へのいじめのなかには、単に「異種の存在を排除する」といった「古典的」なものだけでなく、「弱者が公的に保護され支援されていることに対する『衡平化圧力』としての私的制裁」といったものがありうる、ということです。



それがどのようなものであるかということについては、前々回のエントリで箇条書きで書きました。
ここでは、その中身をもう少しシステマチックに見ることで、問題の構造を明らかにすると同時に、そのような「いじめ」を抜本的に解決しうる方法と、応急処置的に解決する方法についても、あわせて構想していきたいと思います。
その副産物として、障害について「社会の理解を深めていく」ことがなぜ必要なのか(そのことと、障害者への「いじめ」がどのようにつながっているのか)、ということについても1つの答えが出せるように思います。

そのために、このようなグラフを導入したいと思います。



続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする

2014年03月03日

障害者いじめの一つの「形」ー「聲の形」から(番外編)

このシリーズ記事では、いま週刊少年マガジンで連載中の話題のまんが、「聲の形」をとりあげ、その中で主要なテーマ、モチーフになっている「障害者に対するいじめ」という観点から考察を加えています。


聲の形 第1巻・第2巻・第3巻
大今良時
講談社 少年マガジンKC

いよいよ第3巻の発売日が近づいてきました。第3巻の表紙のデザインもようやく公開されました。

ところで、このブログで考察をしている間にもまんが本編の連載は続いてストーリーは進展しているわけですが、ちょうどいま、第27話まできたところで、ここ最近はあまりストーリーにからんでこなかった「ヒロイン・硝子が受けた小学校時代のいじめ」の話題が改めて登場してきました。
それも非常に劇的な形で。

私も連載を読んでいて衝撃を受けましたし、まさにいまこのシリーズ記事で考察している内容にも対応するストーリーなっていたこともあり、マガジン発行日にこの話題について連続ツイートをさせていただきました。

なお、以下には第27話のネタバレを含みますので、単行本しか読んでいない方で、ネタバレを気にされる方はご注意下さい。
(ちなみに第27話は、単行本でいうと第4巻の中盤くらいに相当すると思われます。)

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする
子どもが自閉症かもしれない!どうしよう!という親御さんへのアドバイスはこちら
孫が自閉症らしい、どうしたら?という祖父母の方へのアドバイスはこちら

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