2013年09月30日

NOといえる(ようになる)療育 (15)

このシリーズ記事、後半は、「しない」ということば(拒否の意思表示)を活用したコミュニケーションがなぜ「難しい」のかについて、さまざまな角度から考察しています。
(というより、だんだん、「しない」ということばをきっかけに、コミュニケーション療育のさまざまな側面を議論する雑談っぽくなっていますが(^^;)、おつきあいくだされば幸いです。)

さて、このシリーズ記事の第13回でも書いたとおり、「(Aという行為を)しない」という学習を効果的に成立させるためには、「しない」の対象である「A」という行為について、「しない」の学習を繰り返しても揺らがないだけの明確なイメージが形成されている必要があると考えられます。

どういうことかというと、「Aをしない」という学習を繰り返す、ということは、「A」について話題に上がっているのに「A」が登場しない、という事態が繰り返されることを意味します。これは、少し視点を変えると、「A」についての消去学習という側面をもってしまうからです。
ですから、「Aを」「しない」という学習が、シンプルに「しない」のほうにだけ学習効果を及ぼすためには、「A」のほうが強固に学習されている必要がある、ということになるわけです。

ところで、これとは別の視点で、「Aをしない」という学習が、「A」の消去という方向性ではなく「しない」ということばのほうを学習するという方向性をより効果的にもつための、非常に重要なポイントがあります

それは、

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする

2013年09月23日

NOといえる(ようになる)療育 (14)

このシリーズ記事、後半は、「しない」ということば(拒否の意思表示)を活用したコミュニケーションがなぜ「難しい」のかについて、さまざまな角度から考察していますが、今回はちょっと脱線した番外編的な話です。

前々回の記事で、「しない」を強化することが大事だ、という話を書いたのですが、これを書いていて、少し思い当たることがあって、ちょっと考え込んでいました。

それは死人テスト」と呼ばれるものと、「しない」ということについてです。

ここで言う「死人テスト」というのは、ABAのもととなっている行動分析学という心理学で使われる、ある事象が行動分析学でいうところの行動に該当するかどうかを判定するためのテストです。

端的には「死人にはできないことが(ABAなどでいうところの)行動であり、死人でもできることは行動ではない」というのが、死人テストが言っていることになります。

なぜABAにおいて「死人テスト」が重要かというと、死人テストに合格しない(行動ではない)事象は、オペラント条件付けで学習させることができない、つまりABAでトレーニングすることができない事象ということになるからです。

そして、「しない」についてです。

何かを「しない」ということ、それ自体は、いわゆる「死人テスト」に合格しません。

「おまいりする」→死人にはできないので合格。
「おまいり『しない』」→死人にもできるので不合格。

「トイレにいく」→死人にはできないので合格。
「トイレに『いかない』」→死人にもできるので不合格。


ですから、何かを「しない」ということ、それ自体はABA的にいえば「行動ではない」、だから「ABAでは教えることができない」ことになります。

おかしいですね。
じゃあ、「しない」というトレーニングはABAではできないのでしょうか?

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする

2013年09月16日

ボクの彼女は発達障害(ブックレビュー)

愛だけじゃ、やってけない。でも、愛がなきゃ、やってけないかも。


ボクの彼女は発達障害: 障害者カップルのドタバタ日記
著:くらげ
マンガ:寺島ヒロ
監修:梅永雄二
学研(ヒューマンケアブックス)

はじめに
登場人物紹介

第1章 身だしなみといろいろな先入観
 かわいい服が着られない!?
 服を買いに行ったらパニック!
 化粧ができないよ
 メガネにはこだわる
 梅永先生のメッセージ1
コラム くらげとあお、二人の出会い

第2章 お出かけでドタバタ!
 チョイスができない!
 チョイスしたらそれがパターンに
 いつものレストランが満席でパニック!
 「お金を大事に使う」ってどういうこと?
 財布の中身は小銭だらけ!
 梅永先生のメッセージ2
コラム 発達障害の日常をイメージするには

第3章 日常生活、あれもこれも
 毒舌の理由
 メガネで人を認識してはいけない
 振り込め詐欺でパニック!
 朝専用コーヒーは朝しか飲んじゃダメ?
 確認することを確認するのを忘れる!
 子どもが怖い!
 梅永先生のメッセージ3
コラム 1 あお、診断を受ける
    2 あお、診断をうけて変わったこと
    3 あお、親にかミングアウトする

身近な人たちがまず理解して
特別ではなく普遍的なふたり
おわりに


ツイッターの私のタイムラインでは、発売前から大変に話題になっていた本でした。
本書の著者である「くらげ」さん(@kurage313book)は、ご本人も聴覚障害があり、そして本書のタイトルどおり、交際している女性には発達障害がある、という「障害当事者カップル」のひとりとしてツイッターで積極的に発言されている方ですが、そういう立場や境遇からかもし出されがちな「力(りき)み」みたいなものを感じさせない、とても肩の力の抜けた方です。

「肩の力が抜けている」というのは、例えば、交際相手であり、本書でも「実質的な主役」である「あお」さんのことを(ツイッターで)話題にするときも、そこには「発達障害という障害をもった女性」ではなく、「自分の恋愛対象である、他の誰でもない『あお』さん」が言及されているわけで、

要は、ほんとにただのノロケ。(笑)

でも、この「ただのノロケ」の対象になる、なれる、あたりまえの恋愛関係がつむぎ出される、ということが、どれだけの価値があることか、ということでもあって。

それを実感している「発達障害クラスタ」の皆さんから大いに支持され、くらげさんがノロケるたびに、周囲がみんなして「もげろ」とか「爆発しろ」と「温かい声援」を送る、そしてときどき「あお」さんが障害ゆえにパニックを起こしたり精神的に参ったりといったことが起こったときに、問題を乗り越えられるよう一生懸命頑張る「くらげ」さんにも、共感とある種の羨望が投げかけられる、そんな、ツイッターをぐるっと見回してみてもあまり他では見当たらないような、独特の「くらげ空間」が生み出されているのです。

本書は、簡単にいえば、そんな「くらげ空間」を紙面から追体験する本です。

全体の半分弱はとても読みやすいマンガになっていますし、それに続くエッセイ部分もくらげさんと「あお」さんの会話中心で易しくスラスラと読めます。
もちろん、「学研のヒューマンケアブックス」でもあるわけで、話題は発達障害であるがゆえの苦労話が中心になっているわけですが、それを力みなく受け止め、適切な配慮と対応で切り抜け、「それもまたあおの面白いところ」とノロけ、あろうことか最後は「XXXX、XX(自主規制)」と究極のノロケで終わっている(笑)この本を、私たちもそんなに力んで読む必要なんて全然ないはずです。

ぼくかの
↑学研ヒューマンケアブックスの一冊をコテコテのノロケで締めるという大暴挙。

すべての読者はこの結末を読んで「もげろ」「爆発しろ」と思うことでしょう(笑)。
そして同時に、とても手に入りにくい、とても大切なものに(うっかり)触れてしまったことで(うっかり)温かい気持ちになってしまうことを避けられないでしょう。
それこそが、読者もまた(うっかり)「くらげ空間」に取り込まれてしまったことに他なりません。

そんな「もげろ体験」ができれば、本書を読む意味は90%くらい達成されたと言っていいんじゃないでしょうか(笑)。

・・・

・・・さて。

これだけだとただのティーザー広告みたいなので(笑)、少しだけ本書について真面目な紹介や考察なども書きたいと思います(まあ蛇足といえなくもないですけど)。続きがあります・・・
posted by そらパパ at 20:50| Comment(3) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2013年09月09日

NOといえる(ようになる)療育 (13)

ブックレビューが続いて、少し記事に間があきましたが、またこちらのシリーズ記事の続きを書きたいと思います。
このシリーズ記事、後半は、「しない」ということば(拒否の意思表示)を活用したコミュニケーションがなぜ「難しい」のかについて、さまざまな角度から考察しています。

前回までのエントリで、「しない」を教えるときには、セットで「する(したい)」を教える必要があり、子どもがある行為を「したい」ときに「する(したい)」と発話し、「したくない」ときには「しない」と発話するという行動を「分化強化」していかなければならない、ということを書いてきました。

さて、ここで、以前も掲載した4つのパターンを改めて見てみましょう。

1)「したい」ときに「する」と答える = 「する」が強化される
2)「したい」ときに「しない」と答えた場合 = 「しない」が消去/弱化される
3)「したくない」ときに「しない」と答えた場合 = 「しない」が強化される
4)「したくない」ときに「する」と答えた場合 = 「する」が消去/弱化される


実はこのパターンは、大事な要素を1つ省いています

それは、

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする

2013年09月02日

発達障害のある子のABAケーススタディ(ブックレビュー)

献本御礼。
ABA実践の優れた入門書の続編が出ました。


発達障害のある子のABAケーススタディ
井上 雅彦 (著), 小笠原 恵 (著), 平澤 紀子 (著)
中央法規出版

1.行動随伴性とは
 行動随伴性とは

2.Case紹介
 Case 1 休み時間に自傷行動を続けるユミちゃん
 Case 2 大声で泣き叫び、おもらしをしてしまうマミさん
 Case 3 授業中に空中文字を書くヒロシくん
 Case 4 叱責や注意が嬉しいカーくん
 Case 5 爪噛みをするハナさん
 Case 6 教室を飛び出してしまうイチロウくん
 Case 7 激しい他害行動、自傷行動が頻発するタロウくん
 Case 8 脅迫的な確認行動や攻撃行動のみられるミチオさん
 Case 9 授業中の離席や友だちとのトラブルが頻繁にみられるヒロトくん
 Case 10 母親にしつこくつきまとうケンイチくん
 Case 11 いたたまれずに家出をしてしまうユウくん
 Case 12 日常のあらゆることに対して、手伝いを求め続けるカナメくん
 Case 13 授業時間に教室からの逃走行動が多いシンくん
 Case 14 動物に対する攻撃行動がみられるナオキくん
 Case 15 母親や祖母に暴力をふるってしまうコウジくん
 Case 16 脅迫的な確認をするガッちゃん
 Case 17 ぐずぐずしてなかなか教室へ行かないタケくん
 Case 18 衝動的に発言してしまうシマくん
 Case 19 グループホームで物を投げるコウタさん
 Case 20 自分の思いどおりにならないとパニックを起こすアキラくん
 Case 21 授業に参加できないナミさん
 Case 22 通園施設で紙類を破ってしまうタクトくん
 Case 23 教室から出ていってしまうユウコちゃん

3.行動問題とは
 行動問題とは

用語解説
 機能的アセスメント
 行動の機能
 強化と罰
 ABC分析
 分化強化
 機能的コミュニケーション訓練
 プロンプト
 課題分析と行動連鎖
 トークンエコノミーシステムとレスポンスコスト
 セルフマネジメント


中央法規出版様より献本いただきました。ありがとうございます。
(Amazon在庫が切れていたのでレビューのタイミングを少々待っていましたが、ようやく在庫復活したのでレビュー書かせていただきます。)

この本は、以前当ブログで「殿堂入り」させていただいた、同社の「発達障害のある子の『行動問題』解決ケーススタディ」の続編という位置づけになります。(当時のレビュー記事
前著と比較すると、著者が3名になり、前著では推薦文を書いていた井上先生も共著者に加わっているのが分かります。


発達障害のある子の『行動問題』解決ケーススタディ
著:小笠原 恵
中央法規出版

改めて前著も読んでみましたが、ABAの基本のところから具体的な実践につなげていくところが非常に分かりやすく書けていますし、働きかけの対象が「行動問題」(問題行動)に限定されているところも、とてもいいと思います。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:23| Comment(4) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする
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