いま、障害をとりあつかった作品として注目されている作品の1つとして、週刊少年マガジン連載中の「聲の形(こえのかたち)」があります。
↑リメイク読みきりで今年春に掲載された「聲の形」。
これは、聴覚障害の少女と、その少女をいじめる少年を描いたコミックで、さまざまな紆余曲折をへて、現在の連載にいたっています。
(その辺りの経緯については、たとえばこちらの記事などを参考にしてください。)
私も、先日の読みきりが話題になって読んで以降、この作品には興味を持っていますが、その流れのなかで、この作品の漫画家にとってこの連載は連載2本目であり、「1作目」の連載作品も非常に高く評価されていることを知りました。
それが、この「マルドゥック・スクランブル」です。すでに完結していて、コミック単行本で全7冊で読めます。
マルドゥック・スクランブル コミック 1-7巻セット
大今 良時
講談社
この作品には原作があり、原作もSF小説として高く評価されているようです。(原作は何度もセルフリメイクされているようですね。下記は最新バージョンです)
マルドゥック・スクランブル 完全版 第1巻~第3巻(原作小説)
冲方 丁
早川書房
この作品、かんたんに言うと、ある組織のトップに殺された少女がサイボーグとなって復活し、復讐のために戦うという、バイオレンス系アクションSFコミックです。
途中からなぜかカジノでトランプ勝負が延々と続くギャンブルまんがになったりするのですが、途中でだれることなく最後まで高いテンションを保って一気に読めます。
青年コミックのSF作品としては、設定を複雑にせずにシンプルで分かりやすいものになっているのも個人的にはとても良かったです(複雑なのは頭がついていかない(^^;)ので)。
すごいなあ、と思うのは、たいていこういうややライトノベル寄りのSF作品のコミカライズって、まあ言っては悪いですが作画は割とラフな感じで、アクションシーンとかは十分に描ききれずにストーリーを追うことが中心になるか、逆に作画がすごいと言われてる作品は設定も非常に複雑で、とても気軽に読めるものじゃなくなったりする、というのが個人的な印象なのですが(かなり偏見入ってるかも(笑))、この作品は、「ストーリーをどんどん読ませる」タイプでありつつも、作画にも妥協がなく、細かく描き込まれている点です。
特にアクションシーンの躍動感と迫力はかなりのもの。
これがプロとしてのデビュー作とは思えないほどの完成度です。
また、ヒロインの少女には非常に屈折した過去があり、その過去を克服して未来に向かっていく「成長」も作品のなかでしっかり描かれています。
↑「マルドゥック・スクランブル」の1シーン。
私はこの作品を読んで、大今先生の実力について確信しました。
連載中の「聲の形」についても、安易な感動路線やステレオタイプに落ちる路線、お説教路線、キラキラ路線には決してならないだろうと思いますし、より強く期待できる気持ちになりました。
なにか適度にまとまった面白い長編コミックがないかな、という方にもおすすめできます。
よかったら読んでみてください。