学研様より2冊献本いただきました。ありがとうございます。
「ママ」と呼んでくれてありがとう: 自閉症の息子と歩んだABA早期療育の軌跡
著:杉本 美花
学研 ヒューマンケアブックス
先生、親の目線でお願いします!: 保護者の本音を知れば特別支援教育は変わる
著:海津 敦子
学研 ヒューマンケアブックス
まずは、「先生、親の目線でお願いします!」のほうから取り上げたいと思います。
こちらの本は、障害ある子をもつ親の、特別支援教育を担当する教師への率直な意見、本音(大部分は批判的なもの)をまとめたものになっています。
たとえば、健常児への教育で通用した我流の指導法を特別支援教育にあてはめることによる問題(そしてそれを子どものせいにしてしまう問題)、障害の特性や特別支援教育へ教師の知識不足、無意識のうちに現れる障害や障害ある子への差別意識、子ども一人一人ではなく障害ある子をまとめてレッテル貼りして配慮のない発言をしてしまうこと、親にとって大切なことを「たいしたことではない」といった風に考えてしまう配慮のなさ、といったさまざまな「教師の側の問題」を、親の声、親の本音を通じて掘り起こす、といった内容です。
まあ、一言で言えば、「
親がひたすら教師を批判する本」(それを著者がまとめたという体裁の本)です(笑)。
ただ、内容を読んでいると、親の側がそんなにムチャな要求をしているわけではありません。
むしろ、もし本当にここまでレベルの低い、差別的な教師にあたってしまったら、親としてはいたたまれないなあ、というくらい、「基本的な」要望の範囲に留まっているという印象です。
1つ、具体的な例を引用してみます。(実はこの引用部分は、もう1冊のほうの本のレビューと少しだけつながっています)
勇雄さんは子どもの特別支援学級の担任に思いを伝えることの難しさを感じています。
「子どものありのままを受け止めていただき、ご指導を願いたい」と担任に話をしたところ、「お子さんは今のままで成長する必要はないというお考えですか」と返されたのです。
子どもが成長しないでいいなどと思う親がいるでしょうか。
勇雄さんが伝えたかった「ありのまま」の意味は、先生が考える「~であるべき」という子ども像の枠で目標を立てて子どもを指導するのではなく、今、子どもができていること、好きなことを伸ばすことを基本に指導を組み立ててもらいたいという意味です。
今できないことや不得手なことは、支援や配慮で補い、我が子らしい、その子らしい学校生活を築いてもらいたいという、今の教育の流れとしては当たり前の願いです。(中略)
こうしたことを理解することも当然、教師の専門性として身につけるべき力であることはいうまでもありません。でも、教師の中には求められる専門性を理解できていない人も少なくないように思います。
勇雄さんは、「先生なら当然、身につけているはずの考え方という前提で話をしてしまった。この学校のレベルを考えなかった自分が悪かったのだ。反省している」と学校を揶揄します。
(初版P51~52ページ)
・・・まあ、こんな感じで、親の立場(もしかすると、部分的には「わがまま」)をそのまま代弁する内容ですから、ある意味、あからさまな「ポジショントーク」なわけです。
それが正しいか間違っているかは、読者の判断に委ねられている、と言ってもいいでしょう。
ともあれ、
「親の本音ってこんなところにある、親が傷ついたりするポイントはこんなところにある」ということを、先生をはじめとする支援者の方が理解するには、とてもいいまとめになっていると思います。
何より、
類書がほとんどないことが、この本の価値を高めていると思います。
続きがあります・・・