2011年01月31日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (5)

前回は、「子どものパニック」を例にとって、ABA的思考法が、よくある「内面モデル」に基づく思考法とどのように違うかをご説明しました。
前回の「分析」で、今回例にとったパニックは、次のように理解できることが分かりました。

このパニックには、スーパーという場所において、ゲームコーナーで遊ぶことができるようになる、という機能をもっている。
パニックはゲームコーナーで実際に遊ぶという「ごほうび」によって強化されたので、今後も続くだろう。


すっきりしていますね。パニックという問題行動の「前」と「後」を考えることで、その意味=「機能」も見えてきます。

※これに対して、内面モデルによる問題行動への対処は、いろいろ考えているようでいて、実は「問題行動それ自体しか見ていない」ことが多くなります
 問題行動に「きっかけ」とか「結果」が関係している、というのは冷静に考えれば分かることですが、内面モデルによるアプローチでは「いま」何を考えているんだろう、という思考パターンに陥ってしまい、「前」も「後」も考えずに「いま」の問題行動だけを見てしまうことがしばしばあります。
 そのために、つい私たちはただ放置したり、逆に厳しく叱ったりという、その場その場の場当たり的な対応に追い込まれてしまいがちになるわけです。


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2011年01月24日

冬花火を撮る



今日2回めのアップ。こちらは療育と関係ない、写真の話題です。

昨年の秋、デジタル一眼レフ(Sony α550)を買ったのですが、そもそも秋にデジタル一眼が欲しくなったのは、毎年冬に見に行っている河口湖の冬花火(夏の花火は混みすぎて娘が耐えられなくて行けないので)を、一度ちゃんと本格的に撮影してみたいなあ、と思ったからでした。

そして、いよいよ今年の冬花火が先々週の15日から始まったので、さっそく撮影にチャレンジしてみました。
そのときの写真は、妻のブログのエントリや、TwitPicに掲載したこちら(1, 2, 3, 4, 5)を参照ください。

ところで、このときの撮影で使ったのは、カメラを買ったときについてきたキットレンズ(18-55mm)と、追加で買った望遠レンズ、TAMRON A17(70-300mm)でした。


α550のキットレンズ(SAL1855)とTAMRON A17(望遠ズームレンズ)

最初にキットレンズで撮影を始めて、55mmだとちょっと寄りきれないので途中で望遠に切り替えたら、今度は望遠すぎてうまく花火を追えず、再度キットレンズに戻したら気づかないうちにフォーカスリングに触ってしまって(マニュアルフォーカスなので)全部ピンボケ、と、レンズ選びの部分でかなり失敗でした。

この経験で、我が家がいつも行く観覧ポイントから花火を撮影する(私にとっての)ベストな焦点距離は、(APS-Cサイズの場合で)およそ60~70mmくらいらしいということが分かりました。
そして残念なことに、私が持っている数少ないレンズで、この焦点距離がカバーできるものは1つもありませんでした(苦笑)。
せっかく花火を撮るためにデジタル一眼を買ったのに、まさにその花火を撮影するのに最適な焦点距離がなかったわけです。

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「子育ての工夫」としてのABA入門 (4)

さて、これまでのシリーズ記事で、ABAの一番重要なポイントは、私たちに「内面モデル」とは異なる人の行動の理解のしかた、働きかけのポイントを教えてくれるところにある、という話をしてきました。
専門家によるトレーニングではない、「家庭の療育」「工夫のある子育て」としてのABAでは、この「新しい考えかた、見方を意識して、少しだけ子育てのやり方を変える」というところこそが最も大切なんじゃないか、そう思っています。

ここからは、実際の子育ての場面で、「ABA的な見方、考えかた」がどんな風に活かされるのか、それはよくある「内面モデル」とはどんな風に違うのか、そういったことを考えながら、具体的なABAのテクニック的なこともその中に織り交ぜる形でご紹介していきたいと思います。

ここで例として、目の前で突然パニックを始めたお子さんがいると想定します。何とかしなければなりません。

ここで、「この子は何を考えているんだろう」というところから問題の解決を図ろうとするなら、これは完全に「内面モデル」の考えかたです
つまり、「いまこの子が考えていること=内面の動き」が、パニックという「行動」を引き起こしている、という構造を前提にものごとを考えていることになるからです。

では、「この子は何に困っているんだろう」あるいは「この子は何を伝えようとしているんだろう」ではどうでしょうか?
この視点は、そんなに悪くありません。ABA的思考法に慣れた後なら、こういう視点から問題を探っていっても迷うことは少ないでしょう。

でも、そうでない(まだABA的思考法に慣れていない)場合は、この問題設定もあまりよくありません。
なぜなら、このレベルだと、まだ簡単に内面モデルに移行してしまう可能性が残っているからです。
例えば、「何を困っているんだろう」「何を伝えたいんだろう」という問題設定は、「子どもが内面から発するメッセージを何とかして探ろう」という方向性に、簡単に変わってしまいがちです。そうすると「内面モデル」になってしまって、「目に見えないものを推測する」という困難なルートに乗ってしまいます。

では、ここで設定すべき「ABA的に適切な問題設定」とは、どんなものでしょうか?

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2011年01月17日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (3)

さて、ABAは、自閉症児への働きかけではうまく機能しないことの多い「内面モデル」に代わる、新しいものの考えかたを提供してくれるという話を前回書きましたが、その「新しい考えかた」とはどんなものでしょうか。

まず、とても簡単に書きます。
ABAの考えかたとは、「内面モデルを使わずに行動を理解する」というものです。

でもこれでは、最初に書いたことを言い換えただけでよく分かりませんね。もう少しだけ噛み砕いてみます。
ABAの考えかたとは、「行動と、それに伴う状況の変化(だけ)から、人の行動を理解する」というものです。

さて、前回の記事で、「内面モデル」の考えかたをどう説明したでしょうか。思い出してみてください。
そうですね、内面モデルとは、「人の内面の状況や変化によって人の行動を理解する」というものでした。

つまり、こういうことです。

内面モデルでは、「内面の変化」が原因、「行動(の変化)」が結果、という考えかたです。
ABAの考えかたは、「環境の変化」が原因、「行動(の変化)」が結果、という考えかたです。


これは、特にABAについてはちょっと乱暴なまとめかたです。もう少し正確にいうなら、「行動の前後での環境の変化が、その後の行動の傾向を変化させる原因となる」といった感じになります。でもここでは、「内面ではなくて環境の変化を見るんだ」という「視点の変化」が重要なので、あえてシンプルに書いています。

どうでしょう。あまり違わないように思えるでしょうか。
行動の原因だととらえるものが「内面」であろうが「環境」であろうが、何かの原因があってその結果が行動(の変化)だ、という考えかたの「構造」は似ているから、結局やることはあまり変わらないんじゃないだろうか、と感じられるでしょうか?

でも、そんなことはありません。この「視点の違い」こそが、「内面モデル」ではできなかったたくさんのことを可能にしてくれる、とても大きな力を発揮するのです。

ここで改めて聞きます。

「内面って、見えますか?」

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2011年01月10日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (2)

さて、いよいよ「家庭での療育のための、子育てのちょっとした工夫としての」ABAについてですが、そもそも、ABAが他の療育法と決定的に違う部分というのは、どこにあるのでしょうか?

それは、子どもに限らず、ヒト全般を見る=観察するときの「見るべきポイント」を常識的な位置からシフトさせる=ずらす、という点にあります。

私たちは、他人を観察するとき、何よりまず「内面の動き」を第一に考え、内面の状態とその変化が、行動となって現われているという風に考える傾向があります。
このような、「人はいろいろなことを考えたり感じたりする『内面』があって、行動というのはその内面の動きが現われたものである。だから、人と接するときには、その人がどんなことを考え、感じているのか、あるいはどんな信念を持っているのか(つまり「内面の動き」)をそのときそのときで推測し、その『内面』に働きかけるのがいい」という考えかた、人との接し方を、ここでは「内面モデル」と呼ぶことにします。

こういった「内面モデル」は、日常生活のなかで人間関係を円滑に処理するためには有用であることが多いでしょう。
だからこそ私たちはそういう考えかたを身に着けているわけです。
ですが、社会とのかかわり方それ自体に困難を抱える自閉症のお子さんとかかわるときや、特に難しいビジネス上での人材活用・交渉ごとにおいては、あまり役に立たないことが多いと言えます。

なぜでしょうか?

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posted by そらパパ at 19:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする

2011年01月08日

サイドバーとブックレビューを更新しました。

本日、当ブログの左サイドバーにあるナビゲーション用のリンク一覧と、ブックレビュー一覧のページを更新しました。

これにより、今日時点までの過去のほとんどの記事に、これらのリンクから漏れなくアクセスできるようになっているはずです。ぜひご活用ください。

※ちなみに、ブックレビューは、各項目ごとに、基本的に上にあるものほど新しくレビューしたものになります。
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2011年01月06日

「名誉健常者」という概念とその議論

新年早々、とてもエキサイティングな議論と出会いました。

http://togetter.com/li/86254
発達障害当事者と「名誉健常者」というロールモデルについて

http://togetter.com/li/88947
発達障害と「名誉健常者」ロールモデルについての補足的な議論


こちらのTogetter(Twitterでの議論をまとめたもの)を、ぜひご一読ください。

私が発達障害への支援について感じていた(でもうまく言語化できなかった)もやもやした思いを、「名誉健常者」ということばが見事に可視化してくれました

※ちなみに、この「名誉健常者」というタームを適切に理解するためには、「名誉白人」というかつての国際問題を知っておく必要があります。こちらをご覧ください。

※1月13日追記:さらに関連するTogetterをもう1つ作成したので、上記に書き足しました。
posted by そらパパ at 22:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする

2011年01月03日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (1)

当ブログにお越しくださっている皆さん、

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、今年最初のエントリは、久しぶりに新しいシリーズ記事でいきたいと思います。
これまであまりまとめてこなかった、自閉症療育のためのABAについての、比較的短めのシリーズ記事になります。どうぞよろしくお願いします。



当ブログでは、自閉症療育についてのオープンな(誰かがパテントを持っていて公開することに制限があるようなものでない)情報を広く共有することと、「インチキにだまされない」ための考えかた、すなわち療育にかかわるリテラシーについての話題を主に取り上げています。

そんななかで、これまで、「絵カード療育」と、それに関連する領域としてのTEACCHの構造化に関する話題、そして「リテラシー」の話題については比較的基礎的な部分も含めて記事で取り上げる機会がありました。例えば、以下のシリーズ記事です。

そらまめ式絵カード療育

3た論法から療育リテラシーを考える

それと比較すると、ABAについては、これまで散発的な記事が多かったように思います。例えば、

幼児期の療育を考える(28)以降

あたりでしょうか。

なぜかというと、これは一つには私の「家庭療育におけるABA」の位置づけが影響しています。
ABAのベースとなっている「行動分析」は、非常にストイック、もっといえば「マニアック」な心理学で難解でもあるのですが、それを家庭の療育に活用するという意味での「ABA」は、テクニックとしては比較的シンプルなものだ、と私は考えています。

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posted by そらパパ at 20:01| Comment(5) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
子どもが自閉症かもしれない!どうしよう!という親御さんへのアドバイスはこちら
孫が自閉症らしい、どうしたら?という祖父母の方へのアドバイスはこちら

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自閉症関連のブックレビューも多数掲載しています。

花風社・浅見淳子社長との経緯についてはこちらでまとめています。