2010年06月28日

発達障害のある人と楽しく学習―好みを生かした指導(ブックレビュー)

ユニークなABA本。「重度の人」に焦点を当てている点が画期的です。



発達障害のある人と楽しく学習―好みを生かした指導
著:デニス・レイド、キャロライン・グリーン
監訳:園山 繁樹
二瓶社

第I部 序論
 第1章 「好みを生かした指導」とは何か?
 第2章 障害のある人の指導を楽しくするエビデンスに基づくアプローチ
第II部 指導を楽しくする前提条件
 第3章 指導が効果的であることを保証する
 第4章 実用的なスキルを増やす指導
第III部 指導を楽しくする秘訣
 第5章 教師と学習者のよい関係を築く
 第6章 指導セッションを学習者にとって楽しくなるように構成する――「好みを生かした先行事象・行動。結果事象」モデル
 第7章 指導プログラムに選択機会を組み込む
 第8章 正の強化子と好きなもの
 第9章 指導のタイミング・指導セッションをいつ行うか
第IV部 楽しい指導を続ける秘訣
 第10章 教師も楽しく指導するために
 第11章 効果的で楽しい指導をサポートするための管理責任者の責任
第V部 まとめと問題解決
 第12章 好みを生かした指導のチェックリスト
 第13章 好みを生かした指導についてのよくある質問

この本、タイトルからは微妙に内容が想像しにくいですが(私も、出版社が「二瓶社」だから、「ああ、きっと行動分析の本だな」と分かったのですが、そうでなければ、この妙な訳語調のタイトルでは本を手に取らなかったかもしれません)、簡単にいうと、「退屈で面白くないといわれる、ABAのフォーマルトレーニング(机に向かって課題をやらせるようなトレーニング)を、『楽しんで実施してもらう』ためのアプローチをまとめた本」です。

この本の原題は、こうなっています。

Preference-Based Teaching: Helping people with developmental disabilities enjoy learning without problem behavior

サブタイトルのところをざっくり訳すと、「発達障害のある人が、問題行動を起こさずに楽しんで学習できるよう支援する」となります。
ちょっと面白いのは、「問題行動を解決するためにABAを使う」という話ではなくて、「ABAの指導の場面で問題行動が起こらないようにする」ということを言っている、という点です。
確かに、ABAのトレーニングをやろうとしたとき(あるいはやっている最中)に、子どもが嫌がって、「問題行動」を起こしてしまう、ということは普通にあります。
そういった問題に対して、ABAの文脈では一般に、「ABAでは強化のメカニズムを使うんだから、ABAのトレーニングは楽しくて当然、もしそうでないなら、それは指導者の力量不足」といった整理になってしまうことが多いのですが、本書は、「必ずしもそうではない。特に学習者が『重度の障害をもっている』場合は、ABAのトレーニングは楽しくないことも多く、楽しくするための工夫が必要だ」と考えます。

言い換えるなら、上記の「指導者の力量」、あるいは「強化子の見極め」「指導者と学習者とのいい関係(ラポール)作り」といった、ABA本であってもなかなか言語化されにくい領域について、「エビデンスに基づく方法論」をできるだけあてはめ、どのようにすれば「学習者と指導者の間にいい関係が生まれ、学習者が楽しくトレーニングに取り組むことができ、結果としてトレーニングの成果を最大化できるのか」に答えを出そうとしている、ともいえるでしょう。

さて、いまちょっと触れましたが、この本の最大の特徴の1つは、「重度障害の人に特に焦点を当てて書かれている」という点にあります。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 20:44| Comment(6) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする

2010年06月27日

高機能自閉症児を育てる(クイックレビュー)

当面、この本のレビューを書く予定はなかったのですが、Twitterで2日前くらいから急にこの本の話題が盛り上がってきて、そこでの評価も非常に高いので、ごく短く、ご紹介してみることにしました。



高機能自閉症児を育てる
著:高橋 和子
小学館101新書

第1章 自閉症と診断されるまで
第2章 幼稚園時代
第3章 小学校時代
第4章 中学校での支援とアルクラブ活動
第5章 義務教育後の進路

高機能自閉症児(ことばの発達が遅れたために、アスペルガー症候群ではなく高機能自閉症の診断となっているのだと思われます)を育てた(ている)母親による子育て・療育本です。

この方のお子さんは、現在京都大学の大学院に在学中とのことで、本のオビにも赤字の大きな文字ででかでかとそのことが書いてあったので、中を読む前は「我が家のようなカナー型の子どもの親が読んでもあまり役に立たないんじゃないかな?」と思っていました。

でも、Twitter等でも評判が立ち始めていて興味をもったので立ち読みしてみると、思っていたのとはかなり違って、参考になりそうな内容だったので買って読んでみることにしました。

この本の特徴は、「特定の子どもの子育て本」であり、「当事者本」であるにもかかわらず、可能なかぎり客観的な視点に立ち、一般化された「子育て・療育上の問題の解決方法」が随所に書かれている点にあると思います。

なかでも、学校に入って以降の、教師や保護者との関係作り、子どもの特性や障害を理解してもらう方法、トラブルの乗り越え方といった、「親-子-学校(教師・保護者)」関係のなかでの親の役割、動き方といったあたりの話題は、もしかするとこれまでどんな「専門書」とか「療育ハウツー本」にも書かれていなかったくらい、具体的かつ一般化された分かりやすいものになっていると言ってもいいかもしれません。
そして、この部分は間違いなく、我が家のようなカナー型の自閉症児をもつ親御さんにとっても役に立つ部分だと思います。

このような「引いた」記述ができるのは、著者が単に自閉症児の親というだけではなく、親の会を自ら設立し、さらには発達障害の研究者・臨床者にまでなっていて、自閉症について、親であると同時に専門家である、という稀有な立場にいらっしゃるからなんだろうと思います。

また、本書を実際に読む前に「子どもが京大」というキャッチコピーから想像したような「詰め込み教育」的な療育は全然登場せず、肩の力の抜けた、子ども自身の「伸びる力」を支えるような自然体の療育にも、大変共感できました。

自閉症スペクトラムのお子さんをもつ、すべての親御さんにおすすめできる本だと思います。
新たな「新書版の自閉症本」の定番誕生の予感がします。

※その他のブックレビューはこちら

posted by そらパパ at 16:57| Comment(6) | TrackBack(2) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2010年06月21日

そらまめ式絵カード療育法 (17)

5.スケジュールを教える(続き)

(2)ステップ1:1枚スケジュールで、直後におこるイベントを教える(続き)


前回は「1枚スケジュール」のための絵カード作りについてご説明しました。

次に、絵カードを貼り付ける掲示板を用意します。
これは、絵カードが貼り付けられればどんなものでもいいのですが、例えば100円ショップなどで売っている、ベニヤ板製の掲示板(ひもなどで吊り下げられるようになっているものが便利でしょう)と、幅広タイプの粘着式マジックテープで作ることができます。
掲示板の表側の面の、できるだけ広い範囲にマジックテープを貼り付けます。もちろん貼り付けるのは、絵カードの裏に貼り付けたものと、オスメスが逆のマジックテープになります。

あとは、この掲示板を壁に吊り下げて、行き先やイベントを表す「1枚スケジュール」用の絵カードを貼り付けられるようにすれば完成です。


↑こちらは、我が家で実際に使っている1枚スケジュール用の掲示板です。
 「1枚スケジュール」は、主に外出時に行き先を教えるために使っているので、時刻と移動手段の欄も用意してあります。ただ、「1枚スケジュール」で「時刻」を教えるのは実際には難しく、このスケジュール板に行き先を貼るとすぐにそれをはがして出かけようとする(それはそれで、このスケジュール表の意味が分かっているということでもあります)ので、実際の運用では「移動手段」と「行き先・イベント」の2枚だけを使って、出かける直前に貼るようにしています。(これとは別に、週間スケジュールの表も作成して玄関に掲示しています。そちらについては後述します)

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする

2010年06月16日

いちばん簡単なPC自作 番外編(Mini-ITXで作る)

先日、連載していた「いちばん簡単なPC自作」のシリーズ記事では、タワー型で汎用性の高い「メインマシンとして使う自作PC」を簡単に作る方法をご紹介してきました。
でも、自作PCの楽しみ方は、それだけではありません。

最近私が個人的に興味をもっているのは、「Mini-ITXフォームファクタのPCを作る」ことです。
こういっても多くの方には分からないと思いますが、要は「30cm四方くらいの、かなり小さなPCを自作で作る」ということになります。

自作PCの「大きさ」を決める最大のファクターが「PCケース」であることは言うまでもありませんが、そのPCケースの大きさを決める最大の要素が「中に入れるマザーボードの大きさ」になります。
現在、主流となっているマザーボードの大きさは以下の3種類です。

ATX:305mm×244mm
Micro-ATX:244mm×244mm
Mini-ITX:170mm×170mm


3DのPCゲームをバリバリ遊ぶような用途には、一番大きいATXサイズのマザーボードが向いています。PCケースも「ミドルタワー」「フルタワー」と呼ばれるかなり大きなサイズのものになります。
一般的なホームユースのメインマシンを作るなら、Micro-ATXサイズで十分です。PCケースも「ミニタワー」と呼ばれる、ちょっと小さめのものを選べます。これまでのシリーズ記事でご紹介していたのは、この「Micro-ATXサイズのマザーボード+ミニタワーのPCケース」での自作PCでした。

そして、さらに小さなマザーボードとして、Mini-ITXサイズというのがあります。17cm四方というと、単行本くらいの大きさですから、かなり小さなケースに収まります。うまく工夫して作ると、非常にコンパクトな地デジチューナーつきリビングPCやホームサーバーなどが作れます。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする

2010年06月14日

そらまめ式絵カード療育法 (16)

5.スケジュールを教える(続き)

(2)ステップ1:1枚スケジュールで、直後におこるイベントを教える


これまで説明してきたとおり、自閉症児のために絵カードによるスケジュール表を導入するのは、将来への見とおしを持つことに困難をもつ自閉症児をサポートして「生活を楽に=豊かに」することが目的です。
大人の期待するとおりにスケジュールをこなしてほしい、という目的もあるかもしれませんが、それはあくまでも二次的なものですし、「本質的な」ゴールではないと考えるべきでしょう。

とはいえ、「特定のアイテムがほしい」というニーズを持つ自閉症児に、そのアイテムを手に入れる手順を教えるのと比べると、こちらからスケジュールを教えて、子どもにその意味を理解させて将来の見とおしをもってもらうというのは、はるかに難易度が高いということを覚悟しなければならないでしょう。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする

2010年06月07日

そらまめ式絵カード療育法 (15)

こちらのシリーズ記事、久しぶりに再開します!

5.スケジュールを教える

(1)スケジュールの意味


さて、絵カードの重要な活用法として、「子どもの要求を周囲(他人)に伝える」という使い方をまず実践したわけですが、その次に重要だと思われるのは、絵カードを使って「活動のスケジュールを子どもに教える」ということなのではないでしょうか。

重要だ、と考える基準は、シンプルに「子どもにとってのニーズの高さ」というところに視点をすえています。
自閉症児はコミュニケーションに障害をもっているとされますが、特に絵カードの必要性が非常に高くなるような、ことばのない(ことばの発達のおくれの大きい)自閉症児の場合、単純に「ことばが出ない」と考えるのではなく「コミュニケーションという概念そのものを持っていない」と考えるところから始めるべきでしょう。

つまり、ことばが出ない自閉症児を「コミュニケーションしたいけどことばが使えないから言葉がでない、覚えられないから使えない」という状態だと考えるべきではないのです。
そうではなく、「コミュニケーションしたいというニーズそのものがまだ確立していない」、言い換えると「まだコミュニケーションを『発見』していない」状態だと考えたほうがいいと思われます。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする

2010年06月02日

石田淳氏とお会いしました。

今日は、縁あって石田淳氏とランチをご一緒しました。

石田淳氏といえば、日本ではほとんど唯一の「ABAコンサルタント」で、当ブログ殿堂入りの「おかあさん☆おとうさんのための行動科学」の著者でもあります。最近でいうと、「行動科学で人生を変える」もレビューさせていただいた方です。

実は、「おかあさん…」をレビューした後、石田氏からお礼のメールをいただいて、それがきっかけでお会いしたことがあり、直接お話ししたのは今日が2回目になります。
今回は、出たばかりの石田氏の新刊「続けたいことが続くツイッター100倍活用術」の共著者である宮本氏もいらっしゃって、3人でランチをご一緒させていただいた、というわけです。


続けたいことが続くツイッター100倍活用術
著:石田 淳、宮本 真行
サンマーク出版

ABAの話や自閉症療育の話、その他雑談など、それぞれ守備範囲の違う3人で活発に意見交換することができ、短いながらも充実した時間を過ごすことができました。

私は、ABAっていうのは狭い意味での「セラピー」としてというよりも、誰もが当たり前に知っている知識、「リテラシー」としてもっともっと普及していくべきだ、といつも考えていますので、石田氏のように「誰にでも理解できることばで、分かりやすく、あらゆるシーンに対してABAを活用していく方法を語れる方」の存在はとても大きいと考えています。

今日のお話では、今後しばらくは石田氏の新刊はマネジメント系のものが続くだろうとのことでしたが、また肩の凝らない卑近な?テーマのABA本も期待しています。


※石田氏のサイン入り新書をプレゼントします!

石田氏の新書「「行動科学で人生を変える」(本日いただいた石田氏のサイン入り)を、ご希望の方1名にプレゼントします。



ご希望の方は、メール(アドレスはブログの右側、プロフィールのところにあります)にてご連絡ください。(ご希望の方が複数の場合は、抽選になります。ご了承ください)

※ご応募は、日曜(6日)の午後8時までお受けします。
→締め切りました。当選された方、おめでとうございます!

posted by そらパパ at 20:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の話 | 更新情報をチェックする
子どもが自閉症かもしれない!どうしよう!という親御さんへのアドバイスはこちら
孫が自閉症らしい、どうしたら?という祖父母の方へのアドバイスはこちら

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自閉症関連のブックレビューも多数掲載しています。

花風社・浅見淳子社長との経緯についてはこちらでまとめています。